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8月1日(土曜日)家具売り場で音水とばったり

 土曜日、俺はショッピングモールの家具売り場に来ていた。

 目的は、明日までにリラックスできる部屋作りをするためだ。


「しかし……、インテリアなんて言われても何を買えばいいのかわからん……」


 結衣花からおすすめインテリアの画像を見せてもらったが、どれも手が込んでいて敷居の高いものばかりだった。


 女子はこういうことを自然にこなしているから気にならないのだろうが、俺は基本的に無駄を省くタイプ。

 いざインテリアを良くしようと言われても、いまひとつピンとこないのだ。


「あれ? 笹宮さん……ですか?」


 家具を見て考え込んでいた時、俺に声を掛けてきたのは私服姿の音水だった。


 映画に行った時とは違い、今日はブラウスにスカートという日常感のあるコーデだ。


 これはこれで、なかなかいい。


 女は可愛いく仕上げた方が男は喜ぶと思っているのだろうが、案外こういったナチュラルなスタイルの方が好きな者は多いのだ。


 何を隠そう、俺がそうだからな。


「よぉ、音水。偶然だな。おまえも家具を買いに来たのか?」

「いえ。せっかくの休日なので、ぶらっと立ち寄っただけなんです」


 家具を見ていた俺に、音水が訊ねてくる。


「笹宮さんは家具を買いに来たんですか?」

「ああ。どうにも俺の部屋は殺風景らしいからな。イメチェンしようと思ってるんだ」

「殺風景? ふふふ。笹宮さんらしいですね」

「ちなみにこんな感じなんだが……」


 俺は自分の部屋を撮影した画像を音水に見せた。


 結衣花は『独房』と表現していたが、無駄のない部屋はまさに男らしさの現れだと思う。

 もしかすると女子高生にこのセンスは伝わりにくいのかもしれない。


 その点音水はすでに社会経験を積み、大人の魅力というものがわかっているだろう。


 音水は画像を見て言った。


「……わー。予想以上でした。独房かと思いましたよ」

「ひどいじゃないか」


 彼女は死んだ魚のような目をしていた。

 虚無……。まさにその表現がふさわしい表情だ。


 どうやら俺の部屋は誰がどう見ても『独房』という評価になるらしい。


 おかしいな……。


「まぁ、そういうわけでな。手軽に見栄えを良くするものが欲しいんだ」

「それなら、私も一緒に選びますよ」

「いいのか?」

「はい、暇ですし」


 オシャレな音水のアドバイスなら、きっと役に立つだろう。

 安心感がまったく違うぜ。


「助かる。じゃあ、頼むよ」


 すると彼女は……、


「よし! 今日こそ決めますよ!」

「家具を選ぶ時って、そんなに気合を入れるもんなのか?」


 なぜかガッツポーズをする音水を見て、ちょっと不安になった。


 さっそく音水は俺の手を引いて、オススメ家具を指差す。


「手軽に見栄えを良くするなら、まずはベッドですね。一緒に寝転がってみましょう」

「なんでやねん」


 手軽にと言ったのに、まったく手軽ではなかった。

 しかもツインって……。


 唐突な提案に驚いて、関西弁でツッコミをいれてしまったじゃないか。


「さては、わざとだろ」

「バレました?」

「まったく。年上をからかうな」

「誘ったつもりだったんですけど」

「なんのことだ?」

「いえ、お気になさらず。では次に行きましょう」


 今度は本棚やラックが置かれている売り場にやってきた。


 音水は選んだのは『ディスプレイラック』。

 本棚のようだが背の板がなく、収納棚と飾り棚、両方の特性を持っているアイテムだ。


「簡単にイメチェンするなら、ディスプレイラックがオススメです。本棚としても使えますしね」

「なるほど」


 オシャレ感が強いので敬遠していたが、たしかに使い勝手が良さそうだ。

 物が少ない俺の部屋にも似合うかもしれない。


「あとはかわいい小物を飾るだけで完璧です」

「俺は男だぞ。かわいい必要はないだろ」

「こういうのってギャップが必要なんですよ。男性だからこそかわいいは大切なんです」


 視線をそらした音水は「他の女除けにもなりますしね」と小声で付け加えた。


 女除けするもなにも、俺はまだ彼女がいないんだぞ。


 まさか、一生俺に彼女無し生活を送らせようとしているのか。

 あなどれん後輩だ。


「音水のおかげでいい買い物ができた。助かったよ」

「んっふふ~♪ どういたしまして」

「なにかお礼をしないとな」

「本当ですか?」


 すると音水は恥じらうしぐさをしながら、おずおずと訊ねてくる。


「じゃあ……、あの……。以前約束していた私の手作りシチューを食べて欲しいので、笹宮さんのお家にお邪魔してもいいですか?」


 そういえば、手作りシチューを食べる約束をしていたっけ。

 自宅で音水の手料理か……。

 ふむ。悪くない。


「それはありがたいが、俺の方が得してないか?」

「いえ! そのあと、私もごちっちゃうかもしれないので!! もちろん、ごちられてもオッケーです!! ありがとうございます!!」


 なぜか音水は興奮気味だ。

 ごちっちゃうって、シチューを食べるってことだよな?

 他に意味なんて考えられないし、そうだろう。


 さて、どんなシチューを作ってくれるのか楽しみだ。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。


次回、音水が自宅へ!

ラブコメしちゃっていいですか?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*'ワ'*)

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― 新着の感想 ―
[一言] お〜、ゴチられOKか! 勝負をかけてくるか? でも、肝心なとこでへたるからなぁ、音水ちゃん…
[一言] 音水さん、変化球なアピールは出来るのに、直球な告白は出来ないのか… 笹宮は鈍感だから、ストレートに曲解出来ないように告白しないと、想いは絶対に伝わらない。 この事は他のヒロイン候補にも言え…
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