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7月5日(日曜日)キャンペーンの結果

 出張から一週間が過ぎた。

 ついに七夕キャンペーンイベントが開催される。


 開催期間は土日の二日間。


 他府県のイベントを一度に管理し、なおかつブイチューバーのライブ映像と調整する必要があったため、作業は困難を極めた。


 そして七月五日の日曜日。

 時刻は夜の夜七時半だ。


 小さなトラブルはあったもののキャンペーンは無事に終了し、あとは報告書を仕上げるだけとなった。


 本社の営業部で作業をしていた時、協力してくれた別チームのリーダー・紺野さんが声を掛けきた。


「いよぉっ! お~つかれさん!」

「お疲れ様です。紺野さん達が手伝ってくれたおかげです」

「謙遜すんな。こんな大規模の仕事を引っ張ってきたのは笹宮だろ。すげえよ!」


 大笑いしながら俺の背中を叩いた後、紺野さんは全員に声を掛けた。


「よぉし! この後、全員で打ち上げしようぜ! 笹宮チーム全員のいいところを見せてもらおうじゃねえか!! しゃあぁぁぁッ!!」


 十数人いた社員達が、呼応するように歓声を上げた。

 普段は黙々と仕事をしているだけなのに、どうしてこういう時だけテンションが高くなるんだ。


「ちょ……ちょっと、紺野さん。困りますよ。俺が目立つの苦手なのは知ってますよね?」

「こんだけ大活躍しておいて、なに言ってんだ。ちょっとはオレ達も楽しませろよ! はっはーっ!」


 紺野さんの勢いの良さには勝てない。

 ここは腹をくくって、渾身の一発芸を披露してやろう。


 そういえば俺って、一発芸のネタを一つもストックしてない。

 ……やばいぞ。


 この後の打ち上げに悩む俺に、音水が声を掛けてくる。


「笹宮さん」


 六月末で教育期間を終了した音水は、現在は紺野さんのチームに所属している。


「私は終わりましたけど、なにか手伝いましょうか?」

「いや、大丈夫だ。後はクライアントから送られてくる集計結果を確認する程度さ」


 スマホのキャンペーンイベントを行った場合、最後に各店舗の新規・機種変更などの集計結果が送られてくる。


 もちろん土日だけの結果だけでキャンペーンイベントの成果を判断するのは早計だ。

 とはいえ、ここで結果を出しておけば次の仕事に繋がりやすくなるのは言うまでもない。


「あ! 来ましたよ!」


 パソコンにメール受信の通知が表示された。


 七夕キャンペーンは夏休み前という事もあり、大きな成果は出しにくい。

 通常の土日と比べて、二十パーセント増でもいいくらいだ。


 だが今回の内容は新しい試みを取り入れているため、かなりいい数字を叩き出せる自信がある。


「ん? ……なんだこれ?」


 メールを見た俺は首を傾げた。

 うまくいけば三十パーセントは行くかもしれないと予想していたのだが、結果は大きく違った。


 隣にいた音水は画面をのぞき込んで声を上げた。


「ええぇぇっ!! 先週の土日と比べて、百六十パーセント増!?」

「すごいな。新機種の発表でもないのに……」

「成功ってことですよね?」

「ああ! 大成功だ! これなら次の企画もうちに振ってもらえる!! やったな、音水!」

「何言ってるんですか! 笹宮さんがいてくれたからじゃないですか!!」


 これほど大きな成功を収めたということは、今後も大規模な企画を任せてもらえる可能性がある。

 これはうちのような弱小広告代理店には願ってもないことだった。


 そうだ! アイツにも伝えないと!!


「すまん! ちょっと、席を外す!」

「え!? 笹宮さん! どこに行くんですか!!」


 俺は会社の外に出て、スマホで電話をかける。

 発信先は……結衣花だった。


「お兄さん、どうしたの?」

「すまん。ちょっと報告をしたくてな」


 今回の仕事に関して、結衣花のアドバイスに感謝しているのは間違いない。

 だが彼女に電話をしたのは、自慢したいという気持ちがあった。


「キャンペーンの仕事、すげえいい結果が出たんだ」

「そっか、おめでと。頑張ってたもんね。えらいえらい」

「子供扱いかよ」

「赤ちゃん扱いだよ」

「ひっで」

「お兄さんの、おしゃぶり姿かぁ……。うっわ、壮絶」

「あのさ。勝手に想像して、勝手に否定するのやめてくれない?」


 いつもどおりで、本当に安心するよ。

 なんだかんだで、お前にはいつも支えてもらってばかりだ。


「まぁ、これも結衣花のおかげだ」

「今日はやけに持ち上げるね」

「俺はいつも感謝しているぜ」

「ふふっ。ありがと」


 電話を切って空を見上げると、ちょうど綺麗な満月が見えた。

 まるで、俺達の成功を讃えているように見える。


 ぎゅっ!


 追いかけてきた音水が、俺の腕に抱きついてきた。


「もうっ! 主役がいきなりいなくなったら、みんなが戸惑うじゃないですか!」

「悪い。すぐに戻るよ」

「打ち上げの時、笹宮さんの隣の席は私ですよ」

「わかってるよ」

いつも応援をして頂いて、本当にありがとうございます!

☆評価・ブクマ、とても元気を頂いています。


次回、『どっちが好き?』と聞かれた笹宮はどう答えるのか!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*'ワ'*)

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― 新着の感想 ―
[一言] 結衣花ちゃんに報告するのは当然として… 楓坂先輩にもしておこうぜ~、笹宮く~ん! 楓坂先輩と絡んでおけば…後々楽しそうだからw
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