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不思議な感覚

 結衣花と一緒にデパ地下を見ていた時、四季岡(しきおか)紫亜(しあ)という小学生と出会う。


 しかし、俺はその名前に聞き覚えがあった。


 四季岡? 最近その名前をどこかで聞いたことがあるような……。

 そうか、アレだ。

 バレンタインイベントの時、旺飼さんから渡されたSDカードに入っていたレポート。

 その制作者の名前が四季岡という名前だったはずだ。


 もしかして紫亜は、あのレポートを書いた人の子供か?

 いや、偶然という可能性は捨てきれない。


 そんな事を考えていると、紫亜はクイクイとズボンを引っ張る。


「ねぇねぇ、おにいちゃん」

「ん?」

「欲情してるの?」


 突然ぶっとんだことをいう小学生に、俺の顔はひきつった。


「おのれはどこでそんな言葉を覚えてくるんだ」

「あ、図星? 小学生に興味深々とかツワモノだね。でも許すよ。私って包容力があるほうだから」

「こ……のやっろぉ……」


 おもいっきり的外れなのに上から目線ってどうなわけよ。

 しかもなぜかドヤ顔だし。


 すると結衣花が優しく話し掛ける。


「紫亜ちゃん、そういうことは言っちゃダメだよ」

「あうっ!」


 よし。いいぞ、結衣花。

 こういう生意気な子にはちゃんと注意してあげないとな。


「このお兄さんはメンタル弱いから、エロい本心を言い当てちゃうとうろたえちゃうの。だから気づいていないフリをしてあげようね」

「そっか。生暖かい目で見てあげるんだね」

「うん、そうだね。よくできました」


 よくできたってどこだよ! できてねぇよ!

 お前ら二人そろって終始俺のことをおちょくりやがって!!

 まさか事前に仕込んでるんじゃないのか!!


 はしゃぐ紫亜は俺の脚に掴まり、結衣花は微笑みながら俺達の様子を見ている。

 そんな二人を前に、俺は困った顔をした。


 それにしても紫亜に初めて会った時も思ったけど、この二人ってどこか似てるんだよな。

 もし結衣花に子供が出来たら、紫亜みたいなんだろうか。


 そう思った時、一瞬こういう体験をしたような不思議な感覚がよぎった。


 とても優しいイメージ。どこかなつかしい感覚。

 まるで家族で一緒にお出かけをしたような……。


 いやいや、俺は今まで子供を作ったことはない。

 こんなシチュエーションは初めてのはずだ。

 なのにどうして……。


 自分が抱いた気持ちに戸惑っていると、『ピロリン♪』と音がする。

 それは紫亜の方からした。


「あ、たぶんお父さんだ」


 紫亜は小さなポシェットからスマホを取り出した。

 スマホのカバーには結衣花が描いたイラストがプリントされている。

 そういえば紫亜はこのスマホカバーを買いにバレンタインイベントに来ていたんだもんな。


 メッセージを送り返した紫亜は俺達に言う。


「お父さんが入口の方で待ってるそうだから、私行くね。ばいば~い」


 ブンブンと手を振って帰っていく紫亜。

 元気いっぱいって感じだ。


 トコトコと入口の方へ歩いていく紫亜を結衣花は眺めていた。


「可愛い子だったね」

「めっちゃ生意気だったけどな」


 結衣花とどことなく似ているように感じたけど、やっぱり俺の思い過ごしだろう。

 天真爛漫なところはどちらかとういうと音水に似ているかもしれない。


 しかし、さっきの感覚は何だろう。

 もしかしたら父親になるとこういう気持ちになるのだろうか。


「……どうしたの?」


 ぼーっとしている俺に結衣花が訊ねてきた。


「え、なにが?」

「私のこと、じっと見ていたから」

「そ、そうか?」


 そんなつもりはなかったのだが、無意識に結衣花を見つめていたようだ。


 結衣花はフラットテンションではあるが、いつも家庭的な雰囲気を身にまとっている。

 もしかするとその影響でさっきのような感覚を覚えたのかもしれない。


 もし子供ができて家族でお出かけしたら、きっとさっきのような幸せな気分になれるんだろうな。


 すると結衣花はまったく違う方向性の言葉を言い放つ。


「あ、っそか。私に欲情してるんだね。うんうん。お兄さんも年頃だもんね。でも許してあげる。私って包容力があるほうだから」

「紫亜の言ったセリフ、そのまんま使ってんじゃねーよ」

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回、結衣花とおこたでゴロゴロ。


投稿は朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[一言] 何か、そういうレポート書くのってそこそこ年が行ってそうな気がして。孫じゃないのか、と思ってしまった。子供だとしたら、若い研究者とかなのかなあ。まあ、パパがそうなんだろうなあ。 まあ、さすが…
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