表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】通勤電車で会う女子高生に、なぜかなつかれて困っている  作者: 甘粕冬夏
第六章 お隣さん以上恋人未満のバレンタイン
213/330

1月23日(土曜日)あんこう料理

 茨城県にドライブ旅行に来ていた俺達は、ひたちなか市の旅館に泊まっていた。

 そして温泉に入った俺は部屋で楓坂の帰りを待っている。

 座椅子に座ってぼんやりとテレビを見ながら、俺はこれからのことを考えていた。


「はぁ……。結衣花はああいうけどなぁ……」


 そろそろ決めないと楓坂がどこかに行ってしまうかもしれないと結衣花は言う。

 楓坂は大学二年生だが、行動力はメチャクチャある。

 今は俺の仕事を手伝ってくれているが、他にやりたいことができたらすぐに行動に移るだろう。


 でも、楓坂のいない生活か……。

 もう五ヶ月もギリギリ恋人未満の関係なんだもんな。

 あいつがいなくなるとか、正直想像できない。


 ここで楓坂が帰ってきた。


「お待たせしました」


 一瞬、湯上りの楓坂の浴衣姿を見て、言葉を失った。

 湯上りの彼女を見るのはこれが初めてではないが、温泉旅館というシチュエーションは初めてだったこともあり、今まで以上に魅力的に見える。


 そんな俺を見て、楓坂は怪訝な顔をした。


「なんですか?」

「い……、いや。別に……」

「……? 変な人。宇宙人にアブダクションされたような顔をしてますよ」

「どんな顔だよ」


 アブダクションっていうのは宇宙人に誘拐されて、体になにかを埋め込まれるというものらしい。

 残念ながら俺は宇宙人に会ったことはない。


 だが興味はある。

 一度でいいからグレイタイプとかいう、あのかわいいのに会ってみたいものだ。


「前に少し話ましたけど、私、都市伝説系の動画も上げているんです。その時に少し調べたことがあるんですよ」

「へぇ……。都市伝説ねぇ」

「全部科学的に分解して、視聴者の夢をことごとく潰しましたけどね」

「都市伝説の楽しみ方が間違ってないか?」


 冗談かもと思ったが、楓坂ならやりかねない。

 たしか楓坂の二つ名は先見の破壊者だもんな。

 オカルト研究部とかとバトルを繰り広げてそうだ……。


「それより、飯にしようぜ」

「そうですね」


 俺達の前には豪華な料理が並んでいる。

 その中心にあるのはアンコウ鍋だ。

 茨城県の海側ではこのアンコウが名物らしい。

 鍋以外にも、竜田揚げや汁物がある。


「俺、そう言えばあんこう鍋って初めてかも……」

「そうなの? うふふ。美味しいですよ」


 店によって味はさまざまと思うが、この旅館では味噌ベースのアンコウ鍋だった。

 アンコウの旨みがだし汁に染みこみ、食べ進めるたびに美味さが増幅していく。

 竜田揚げもさっぱりとしていて、衣はサックサク。

 これ、絶対に食いすぎるパターンだろ。


「一月の鍋って、芯からあったまるよな」

「そうですね。それにあんこうはコラーゲンが豊富ですし」


 コラーゲンねぇ。たしか肌にいいんだよな。

 楓坂ってまだ二十歳ということもあって肌が綺麗だ。

 胸も大きいし、これはコラーゲン効果なのか?

 それとも茨城県ってことは納豆をよく食べるっていうから大豆効果か?


 そんなことを考えている俺の視線に気づいたのか、楓坂は女神スマイルでサクッという。 


「笹宮さん。今、エッチなこと考えたでしょ?」

「は!? か……か……考えてねぇよ」


 くっ!? 突然の不意打ちでキョドってしまったぜ!


 だが、なぜか俺よりも楓坂の方が顔を真っ赤にしてソワソワし始めた。 


「……冗談だったんですけど、ま……まさか動揺するとは思いませんでした」

「いやいや……。本当に違うんだって……」


 食事を終えた俺達は一度部屋を出て、旅館の中に併設されている喫茶店で時間を潰した。

 再び部屋に戻ってくると、布団が並んで敷かれている。


 俺と楓坂の布団の間はほとんど距離がない。


 まだ恋人未満の俺達にとっては、結構困惑する状況だ。

 立ち尽くしていた俺に、同じく戸惑い気味の楓坂が訊ねてくる。


「……で、どうします?」

「いや、普通に寝るしかないだろ」

「そうですね。そうですよね……。……。そうなんですよね」


 少し早いが俺達は寝ることにした。

 電気を消して、俺達は布団の中に入る。


「そう言えば私達って、一緒の部屋で寝るのは初めてですよね」

「……そうだな」

「あんまり緊張しませんね」

「……だな」


 不思議なことに、布団に入って話をするとそんなに緊張することはなかった。

 よくよく考えれば、今まで同じ部屋で過ごすことがあったんだ。

 ぶっちゃけ、楓坂の寝顔は何度も見ている。


「女将さん、絶対に俺らのことカップルだと思ってるだろうな」

「この状況ですからね。なにもないって考えるほうが不自然ですよ」

「だよなぁ……」


 しばらく沈黙があり、楓坂がつぶやいた。


「笹宮さん……」

「なんだ?」

「キスする?」

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


やっば……。この先、どうしよう……。


投稿は朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ( ゜д゜)ハッ! キスして、気絶して、朝までぐっすり眠りたいと言うことかっ?! 気絶したあとの行動は・・・笹宮さんに丸投げ?(^o^)
[一言] うーん、笹宮さん、なんか全部女性側からの行動に任せているなあ。 そろそろ、自分からも行動しないとだめそうだけれど。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ