1月23日(土曜日)茨城県へ出発!
土曜日になり、茨城県へドライブ旅行に行く日がやってきた。
初めて会った時はいがみ合っていた俺達が二人で旅行に行くなんて不思議な話だ。
「楓坂、荷物持つぞ」
「はい、ありがとうございます」
車に荷物を入れ、俺達はさっそく茨城県に向けて出発する。
俺達が住んでいるのは東京の西側の郊外。茨城県まではそれなりに遠かった。
「私達、二人で旅行に行くのって初めてですよね」
「そういえばそうだな」
「……なんだか私達って恋人みたい」
「……見ようによってはそうだな」
「えーっと……テレビ、つけます?」
「あ、はい……。よろしくお願いします……」
そういえば楓坂と二人っきりで車に乗ることってあんまりないんだよな。
頻繁に会っているのは間違いないが、互いに干渉しないから他のカップルに比べるとコミュニケーションが少ない。
俺が他人に深く関わらないようにする性格だから、楓坂が合わせているだけなのかもしれないが。
なにか気の利いたことを言った方がいいのかな。
「あー、楓坂」
「なんですか?」
「えっと……。いい天気だな」
「無理しないでください。笹宮さんの口ベタは理解していますので」
ちょっと言い方が冷たいように感じた。
今度、女性を喜ばせるフレーズを調べておこう。
しばらく走った後、俺達は守谷サービスエリアに到着した。
サービスエリアの中でも比較的大型の施設で、中にはいろいろな店が入っている。
コンビニがあるので使いやすいのがありがたい。
車を駐車場に停めて、俺達は外に出た。
「私、ここに来たことないんですよね」
「茨城県民だろ?」
「だって、私が茨城県に住んでいたのは小学生の頃ですよ。それに普段の生活で高速道路なんて使いませんし」
「ああ、なるほど」
今日は土曜日だから人が多い。
といっても、まだ十時前だから序の口だ。
昼頃はきっと人でいっぱいになるだろう。
「笹宮さんはこのサービスエリアをよく使うんですか?」
「たまにな。って言っても茨城県の方の仕事は他の人が担当しているから、仕事であんまり来ないんだ。群馬の方が多いかな」
群馬もいいドライブコースがあるんだよな。榛名湖とか個人的には大好きだ。
だが今回の旅行もかなり楽しみにしている。
茨城県もいいドライブコースがあった。
俺はとはサービスエリアの施設に入ってみる。
緩やかなカーブを描いた壁など、全体的にオシャレな空間が広がっている。
いろんなサービスエリアを見てきたが、ここは特に建物へのこだわりが見える。
「思っていた以上に大きいですね」
「ここの施設は比較的新しい方だからな」
……と、ここで楓坂はあることに気づいた。
「笹宮さん、笹宮さん」
「ん?」
「カフェがありますよ。寄って行きませんか?」
「いや……、俺らこれから旅行じゃん……」
カフェ好きの楓坂の気持ちはわかるが、まだ出発して間もないからな。
向こうに到着したらそこにもカフェがあるだろうし、ここは我慢してもらおう。
「午前中のサービスエリアって蛇の生殺しですよね……」
「今は耐えるしかない。我慢した分だけ後が楽しくなるのさ」
「オジサンらしい名言ですね」
「二十代後半はまだオジサンじゃないからな」
こうして俺達はコンビニでドリンクを購入し、車に戻ろうとした。
だが、ここで楓坂が再び声を掛けてくる。
「笹宮さん」
「今度はなんだ?」
「タンドリーチキン入りのチーズカレーパンが売ってますよ」
ちょうどパン屋の前にいた楓坂は、お目当てのパンを指さして言った。
彼女のあの目は今すぐに食べたい時のものだ。
「あのなぁ。さっき我慢しようって話をしたばかりじゃないか」
「美味しそうなのに?」
「そうだ。我慢こそ美徳だろ」
そう……。我慢とは人生を豊かにするスパイスなのだ。
欲を否定するのではない。コントロールすることが大切なのだ。
俺ってなかなかいい事を言うよな。
そして楓坂は言う。
「じゃあ、笹宮さんはどうしてトレイを持って、カレーパンをトングで持ってるんですか?」
「いや……。まぁ、一個ぐらいいかなと思って……」
「私達、基本的に欲に弱いですよね」
その後、サービスエリアのフードコートでパンを食べた。
まだ満腹度は十パーセントくらいなのでセーフという事にしよう。
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
☆評価・ブクマ、とても励みになっています。
次回、誰もが予想できなかった衝撃の遭遇!?
笹宮は一体、誰と会ってしまうのか!!
投稿は朝7時15分。
よろしくお願いします。(*’ワ’*)




