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1月9日(土曜日)水族館のナイトショー

 今日から三連休だ。

 イベントの仕事が明日明後日と入っているので、俺にとっては今日が一番ゆっくりできる日になる。


 先日の約束で、今日は楓坂に付き合うことになっていた。


「こっちですよ、笹宮さん」

「おう……」


 俺達がやってきたのは水族館。

 ゲートを通って入館すると、さまざまな魚達が俺達を出迎えてくれた。


 水族館と言えばデカい水槽で魚が泳いでいるだけというイメージがあったが、光や構造を工夫した見せ方が巧みに使われていて、来場者を楽しませる仕掛けがいくつもされている。


 めったに水族館に来ない俺にとってはいい刺激になった。


「水族館なんてガキのころ以来だ」

「前からずっと来てみたかったんです。でもなかなか機会がなくて」


 楓坂が水族館に興味を持つとは思わなかった。

 普段はインドア派で、外出してもカフェで少し時間を潰す程度だからな。

 まだ俺の知らない一面があるということか。


「おっ、カピバラまでいるぜ。かわいいな」

「ホントですね。寝てるのか起きてるのかわからないところが笹宮さんみたい」

「さりげなくディスるの、やめてくんない?」


 その後俺達は水族館を探索した。

 サメやクラゲ、ラッコにカワウソなど、普段見ることのない動物たちに自然と俺達のテンションは高くなる。


 あっという間に夕方になり、俺達は一度水族館を出て近くにあるレストランに向かった。


 落ち着いた雰囲気と煌びやかな演出がなされた大人の雰囲気は、まるでオシャレなバーにいるようだ。


「水族館って想像以上にいろんな催しがあるんだな」

「メインは夜ですので、それまでゆっくりしましょう」


 それから俺達は雑談をして時間を潰した。

 自然と話は先日あった紺野さん達の話になる。


 楓坂は呆れ気味に訊ねてきた。


「つまり紺野さんと香穂理さんの仲を取り持とうとして、なぜか笹宮さんが『あーん』をすることになったと?」

「ああ」

「意味不明なんですけど」

「……だよな」


 そうなんだよな。デートを見守るはずがなぜか同席……。もうメチャクチャだ。

 でも紺野さんも香穂理さんも、全然嫌そうな顔をしていなかった。むしろ楽しんでいたようにも見えたほどだ。


 楓坂はドリンクの入ったグラスをテーブルに置く。


「私も見てましたけど、香穂理さんって本当に紺野さんのことが好きなのかしら?」

「本人がそう言ってんだからそうだろ」

「だって食事中、結衣花さんのことばかり見てましたよ」


 それは俺も気になっていた。

 香穂理さんはどちらかというと結衣花のことを気にしている時の方が多かったのだ。


「そういえば結衣花と香穂理さんって、お互いによそよそしいよな」

「ほとんど会っていないそうですものね。仕方ないんじゃないかしら。結衣花さんもチラチラと香穂理さんのことを伺っていましたよ」


 海外留学してたんだもんな。

 他人から見ればうらやましく見えるが、家族としてはさびしいに決まっている。


 結衣花が一緒に行きたいと言い出したのも、本当は香穂理さんに会いたかったからなのかもしれない。


 食事を終えた俺達は席を立ち、レジへ向かう。


「会計は俺がやっておくよ」

「では、表で待っていますね」


 正直、食事をおごるのはいいが会計の時に女性が傍にいると気まずいんだよな。

 こうして外で待っててくれると助かる。


 会計を済ませて外へ出ると、変な男の声が聞こえてきた。


「ねぇねぇ、お姉さん。暇なんでしょ? 俺らと遊ぼうぜぇい」

「悪いけど暇じゃないの。他を当たってください」


 見ると楓坂に二人の男がナンパを仕掛けていた。

 楓坂は美人だし胸も大きい。男共からすれば恰好のターゲットなのだろう。


 だが、俺としては気分がよくない。


 楓坂の隣に足早に移動した俺は、彼女の肩を抱き寄せた。


「悪いが俺の連れなんだ。変なちょっかいは止めてくれ」

「え……。あれ? そうなんっすか? ……はは。お幸せに~」


 男達は自分達がマヌケな役回りになってしまったことに気づき、そそくさと退散する。

 喧嘩にならないか心配したが、素直で助かったぜ。


 すると隣で楓坂が身体を縮こませて、顔を赤くしている。


「あの……、ありがとうございます」

「楓坂は目立つからな。気にすんな」


 それから俺達は再び水族館へと戻った。

 この水族館では日が落ちてから、イルカのナイトショーが開催される。


 プロジェクションマッピングとイルカショーの融合は見事だった。


「すげぇな……。正直、水族館をバカにしてたぜ」

「笹宮さん、こういうの好きでしょ?」

「まぁな。イベントの仕事をしているから余計にな」


 ……と、ここで俺はあることに気づいた。


「……もしかして、俺のために水族館へ誘ったのか?」

「私も見たかったので、利害が一致しただけのことです」

「そうか……。ありがとう」

「いえいえ、どう致しまして」

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回、イベント現場にやってきた彼女は!?


投稿は朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[良い点] うん、普通にいいデートですな(*^^*) 気遣いのできる楓坂ちゃん、ホントいい子♡
[一言] お姉さんは、妹の様子を見ても、なお音水さんの応援できるのかな。 水族館。鳥羽は日本で唯一、ジュゴンのセレナちゃんがいます…
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