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12月26日(土曜日)一日遅れのプレゼント

 クリスマス翌日の土曜日。

 結衣花と楓坂を自宅に招いて、一日遅れのクリスマスパーティーを開いた。


 もともと明日するつもりだったが、全員の都合が合ったので予定を変更しての開催になる。


しかし、俺の本音は別のところにあった。

 昨日結衣花と話をした時、彼女が会わない方がいいと考えていることを知ったからだ。


 そのあとすぐにわかり合えたので事なきを得たが、少しでも早く彼女との繋がりを確かめたいという気持ちがあった。


 ご馳走が並んだテーブルを囲み、俺は二人に言う。


「じゃあ、準備もできたし始めるか」

「うん」

「では、いきますよー!」


 俺達はシャンパンの入ったグラスを掲げた。


「「「メリークリスマス!」」」


 俺達はそれぞれ料理を楽しみながら雑談をして楽しんだ。

 楓坂が中心になって話をし、結衣花がそれを聞いて、俺が二人の様子を眺めているといういつもの光景だ。


 楓坂は俺の隣に座って、シャンパンを一口飲む。


「うふふ。一日遅れのクリスマスパーティーって、なんだかいいですね。二回クリスマスを味わっている気分」

「今日は土曜日だからゆっくりできるしな」


 食事も進み、そろそろケーキの時間だ。

 実はケーキを買い忘れていたので、午前中に近くのケーキ屋さんまで走ったんだよな。


 女性二人がいるのにクリスマスケーキを買い忘れましたなんて言ったらフルボッコだ。

 危なかったぜ。


 結衣花と楓坂が楽しそうにケーキを食べるのを見ながら、俺も一口食べてみる。


 イチゴの酸味とくちどけのいいクリームが、口の中で溶けあってひとつの味になる。

 じゅわっと溶けるようなスポンジ生地の食感もいい。


「クリスマスのケーキってなんかうまいよな」


 すると結衣花がかわいらしくケーキを頬張りつつ、俺の顔を見た。


「前から思っていたけど、お兄さんって甘いものが好きだよね」

「そうか?」

「うん。ソフトクリームも美味しそうに食べてたし……」


 自分が甘党と思ったことはないが、そういえばスイーツを食べる機会が多い。

 以前はそんなことはなかったが、やはり女性といる時が増えたからだろう。


 ……っていうか、スイーツを食べる時って結衣花が近くにいる時が多くないか?


 これって俺が甘党なのではなく、結衣花につられて食べているだけでは?


「ねぇ、お兄さん。今度は和菓子なんてどう?」

「お……、おう……」


 あれ? なんかうまく乗せられて、スイーツをおごらされる流れになってないか?


 まさか、今の会話がすべて計算……ってことはないよな?

 そんなことありえないよな、結衣花さん。


 俺が戸惑い気味に見つめていると、結衣花はわざとらしく笑う。


 わからん……。

 今の不自然なスマイルはどういう意味なのだ……。


 だが一つだけ言えるのは、この流れに俺が逆らう術はないという事だ。


 まぁ、和菓子は俺も嫌いじゃないし、よしとするか。

 別に結衣花のペースに呑まれたわけじゃないんだぜ。


 すると楓坂が大きめの紙袋から二つの小包を出した。


「二人にクリスマスプレゼントを用意しておきました。受け取ってくれますか?」


 その言葉をきっかけに俺達はプレゼント交換を始めた。

 楓坂には先に香水を渡していたが、それは二人だけの時に渡したものということで、改めてこの日のためにプレゼントを用意してある。


 まぁ、香水に比べるとかなり安いのだが、そこはわかってくれるだろう。


「さて、食事も終わったしどうする?」

「私、新型のゲーム機を買ったんですよ。すぐに持ってきますね」


 楓坂はそういうと自分の部屋に戻っていった。


 新型のゲーム機か。

 そういえば楓坂ってゲーム実況系のブイチューバーなんだよな。

 今にして思えば、旺飼さんがゲーム開発をしているザニー社で働いている影響もあったのかもしれない。


 俺と結衣花はこたつに移動して、テレビを見ながら楓坂が戻ってくるのを待つことにした。


 すると、そわそわしながら結衣花が小さな小包を取り出す。


「お兄さん。これ……」

「ん? さっきクリスマスのプレゼント交換はしただろ」

「そうじゃなくて……、お兄さんの誕生日プレゼント……」


 ……。……。……。


 あっ!! 忘れてた!

 俺、クリスマスが誕生日だったんだ!!


「覚えていてくれたのか?」

「うん……。でも昨日は私、もう会わないつもりだったから……用意してなくて……。ごめんね」

「いや、全然嬉しいよ。うん、マジで……」


 そういえば誕生日のことを結衣花にだけ話していたんだ。

 まさかこうしてプレゼントをくれるとは思ってもみなかった。

 というより、誕生日プレゼントなんて何年ぶりだろうか。


「開けていいか?」

「いいよ。驚天動地の如く驚かないでね」

「大地を動かすほどとかスケール感がハンパねぇ」


 結衣花がくれたのは神々すら討伐する聖剣……というわけではなく、上品なボールペンだった。


 質感もよく、かなり値の張るものに違いない。


「おぉ、いいじゃないか。色もいい。気に入ったよ、ありがとう」

「よかった。大人の人へのプレゼントって何がいいかわからなかったから安心したよ」


 すると結衣花は甘い声でささやく。


「お兄さん」

「ん、なんだ?」

「なんでもない。呼んでみただけ」


 そして再び、彼女はささやく。


「お兄さん」

「なんだ?」

「呼んだだけ。ふふふ」


 昨日、結衣花は俺に気持ちを打ち明けてくれた。

 あれから少しだけ……。本当にわずかな変化だが、彼女は変わった。


 今までよりも表情が豊かになり、声が弾んでいるように感じる。


 女子高生との恋愛なんてありえない。

 だが、それでも俺は心地よさを感じていた。


「不思議だね。少しだけ気持ちを伝えただけなのに……全然いつもと違う」

「まぁな。……もう、会わないとか言うなよ。俺はこう見えて寂しがり屋なんだからな」

「うん、知ってる。これからもよろしくね。お兄さん」

「ああ、こちらこそだ」

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回から新章突入!お正月編です!

今度は、ほのぼのまったりストーリーになります。


投稿は、朝7時15分。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[一言] あちゃ。頭が固まっていました。ミスリードかあ。 そっちからの告白でしたか。うーん。 他の二人は、もう済ませた段階だかなあ。遅ればせ、ということかなあ。多少、態度が変わっているし。 次は、音…
[良い点] むっ… 結衣花ちゃんの醸し出す空気が甘い香りを含んでるぞ… これは…想像していたより素晴らしい香りだ
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