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11月15日(日曜日)企画対決

 日曜日。

 いつもなら静かな朝なのだが、この日は違った。


「笹宮さん! 笹宮さん! いらっしゃいますか!?」


 インターホンの向こうから大声で俺を呼ぶのは、メガネ美女の楓坂だ。


 現在彼女は俺と一緒のチームで仕事をしている。

 といっても、まだ大学生なのでバイトという扱いだ。


 ドアを開くと、楓坂は飛び込むように部屋へ入ってきた。


「商業施設のホームページ、見ましたか!?」

「ああ、人気投票の話だろ」


 俺は自分のスマホを操作して、問題のことが書かれているページを開いた。


 ~~~~~~~

 新商業施設プロジェクト

 『バレンタインオーダーイベント』


 バレンタインデーに女子高生クリエーターがデザインした新商品を発売予定。


 併せてイベントを企画中です。


 そこでお客様にどんなイベントがいいのかを決めて頂く『バレンタインオーダーイベント』を開催します。


 各イベント会社が企画を発表し、その内容を動画投稿サイトで公開。

 そしてユーザー様達によって人気投票を行い、一番人気を得た企画をバレンタインデーのイベントに採用します。


 イベント企画対決は三回戦行い、上位チームが次の対決へ進むことができます。


 一回戦、十一月二十八日。

 二回戦、十二月五日。

 三回戦、十二月十九日。


 最終結果発表は十二月二十五日。

 同じく動画投稿サイトにて行います。


 投票する時に要望を書けば、もしかすると実現するかも!?

 多くのご参加をお待ちしております。

 ~~~~~~~


 バレンタインはちょうどこの商業施設周辺で行われているイルミネーションが終了する時だ。


 おそらくそれに合わせた計画なのだろう。


 なかなか日程について連絡をくれなかったのは、ギリギリまで調整をしていたというところか。


 落ち着きを取り戻した楓坂は、ソファに座って大きくため息をした。


「驚きました。……つまり、イベントを提案する私達そのものがコンテンツとして扱われるわけですか」

「この商業施設は動画投稿サイトに自分のチャンネルも開設しているからな。……やられたぜ」


 だが、まだ納得できていない楓坂は人差し指でアゴに触れて、視線を上に向けている。


「それにしても突然ですね……。商業施設の担当者もイベントプランナーなのかしら」

「いや、この攻めたやり方はたぶんウチの社長だ」


 おそらく俺と紺野さんがコンペで対決することになると見越して、事前に商業施設の担当者と話を進めていたのだろう。


 しかもコンペ自体をお祭りにしてしまえば、俺と紺野さんが対決してどっちが勝ったとしても後腐れがない。


 そういえば、俺がプロジェクトに参加したいと言った時、妙に自信満々だったっけ。


 あの人、勝負事が好きだからな。

 今頃、白いひげをなでながらニヤニヤと笑っているに違いない。


「ですが、これはピンチですね」

「なんでだ?」

「だって、一回戦が二十八日の土曜日。つまり、あと二週間で企画を考えないといけません。しかも今回はただプレゼンをするのではなく、動画投稿サイトのユーザーにウケるように作る必要もあります」


 楓坂の心配は的確だった。

 プレゼンをするという点は変わらないが、それが動画投稿サイトで評価を受けることとなると、アプローチの方法が大きく変わる。


 しかし、俺には余裕があった。


「大丈夫だ。企画内容はもう決まっている」

「え? どういうことですか」


 俺はノートパソコンを持ってきて、楓坂に見せる。

 その内容を見て、楓坂は驚きで目を開いた。


「インスタ映えをテーマにした……新商品対決? 動画投稿サイトで人気投票をするって……これって!?」

「ああ、向こうがやったことをそのまま利用させてもらう。こっちも人気投票を企画にするんだ」


 新商業施設はグルメを中心とした店が数多く入っている。


 そこに目を付けた俺は、各店舗にインスタ映えする新スイーツやフードを作ってもらい、動画投稿サイトを通じてグルメバトルをするという企画を考えた。


 さらにそのレシピや作る手順の動画をユーチューブなどで公開して、ファンを取り込もうという作戦だ。


 これならザニー社からの要望である、WEBコンテンツとセールスプロモーションの融合というテーマも満たしている。


 企画を用意していた俺を、楓坂は伺うように覗き込んできた。


「あなたって頑固なのに、こういう時はちゃっかりしているのね。パクリだと思われますよ?」

「人気投票の部分だけだろ。インスパイアってやつだ」

「適当な英語を使っちゃって……。あなたのそういうところ、クセになっちゃう」

「楓坂好みの男になれて嬉しいよ」


 ちなみにインスタ映えをテーマにする部分は、ソフトクリーム店で結衣花と一緒に撮影をしたからこそ思いついたアイデアだ。


 今までの俺なら絶対に考えなかった企画内容だろう。


 だが俺だって楓坂の前でカッコつけたい。

 俺一人で考えたことにしておこう。

 ふっふっふ……。


 すると楓坂はおもむろに訊ねてきた。


「それで……、インスタ映えなんて誰に教えてもらったんですか?」

「え……。お……俺だってそのくらいは……」

「結衣花さんですよね」

「……はい」


 速攻でバレてしまった。

いつも読んで頂き、ありがとうございます。

☆評価・ブクマ、とても励みになっています。


次回、楓坂と企画の打ち合わせ。……だけどなぜかラブコメ展開になってしまう!?


投稿は、朝・夜の7時15分ごろ。

よろしくお願いします。(*’ワ’*)

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― 新着の感想 ―
[一言] カッコつけようとしても全部見破られる笹宮さん…不憫w きつそうなコンペだけど、頑張らにゃ! 仕事はきっちりするから大丈夫か^^
[一言] 一発決定じゃなく、段階踏むんだ。これだけ段階踏むとなると、コンペ参加者もずいぶん多いのかな。 一月みっちり楓坂さんと仕事しないとなりませんね。 バレンタインは、フィナーレなのかな。
感想一覧
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