7 一輪の花 後編
しばし間、広い謁見の間には沈黙と一人の男の涙があった。
しばらくして、ようやく男は平静を取り戻したようだが、大泣きした影響か鼻を啜る音や吃逆が完全には消えていない。
フィリアも相変わらず宙に浮いた状態で男の傍にいて、今ではあやす様に男の頭に手を置いていた。
広間の者達もまた、無言でその光景を只々、見つめ続けていた。
そして男はさっきとは打って変わった様に力を蓄えた瞳を持って顔を上げた。
目の前のフィリアを見て唇を噛み締めるさまは何かを決心した男の表情だった。
男は視線をアークへと向けた。
泣き腫らし赤くなった目と頬はアークにも確認できた。
「レオンハート卿!いえ。閣下!どうか死罪を見直していただけないでしょうか!!」
その言葉に場がどよめき熱を持ちだす。当然罵声や叱咤も飛び交い始めたがアークだけは無言のまま男とにらみ合い腕を組んで立っていた。
目の色を変え表情に覚悟を持った男。
先程までの諦めたような覚悟とは雲泥の差。
故に言葉を待った。
男の命乞いは低俗な命惜しさなどではないと感じたからだった。
「そして・・・できればフィリア様の御側に。・・・いえ、せめてフィリア様の為にこの命、役立てて頂きたいのです。」
男への罵詈雑言は止まない。男の傍に控えていた騎士たちも男を諌めようと肩を掴むが男の目はアークから離れることはなかった。
「我が忠誠をフィリア様に捧げさて頂きたいのです!!我が生涯唯一の主として我が身と剣!そしてこの命!!フィリア様への忠誠と共に捧げさせて頂きたい!!お願いいたします!!!」
そう叫んで男はアークへ頭を下げた。
フィリアは驚きから動きを止めていたが、未だ未発達の身体と表情はよくわかっていない風にしか見えない。
止まぬ罵詈雑言。アークが軽く手を上げるとそれは止んだ。しかし殺意にも似た怒気はあいも変らず男のもとへと向いていた。
「主。いや雇い主は」
「名はわかりませんが、この国の貴族。それも子爵以上の地位の者だと思われます。西領の者またはその出身。文書のみでしたが言葉選びにそれが見て取れました」
アークの問に言い淀む事なく男は答えた。
「目的は」
「レオンハート家の新たにお生まれになった御息女・・フィリア様の暗殺でございます。おそらくは先頃お生まれになった王子殿下との婚姻に絡んでの事かと」
「貴様の名は」
「・・・『宵月』でございます・・」
「貴様の名は」
「・・・」
「『通り名』やギルドでの名ではない。本名だ」
「・・それは・・・」
「貴族か」
「・・・いえ・・元、でございます」
視線を外し言葉を濁した男にアークは目を伏せ嘆息を零した。
「任務に失敗し怠り、主さえ裏切り売る。その上相手方に命乞いと寝返り。情報も内情も漏らして。更には名乗る事さえもしない。そんな者をどう信用しろと?どうして、何故にそんな者をフィリアの元に置けると?フィリアのための命ならば貴様を処刑し見せしめとして他への牽制の一手にしたほうがよっぽどためとなろうものだとは思わんか?」
「・・・」
アークの言葉に男は返す言葉がなかった。
しかしアークの言葉は意図した意味が込められていた。
「・・・私は・・死にたくないのです・・」
その呟くような言葉に広間に集まった者たちは今にも暴動が起きそうなほどに身を乗り出し、青筋が切れんばかりに浮かび上がっていた。
「・・私は、生きてフィリア様のためとなりたいのです。・・・死んでしまってはダメなのです・・フィリア様のために命を懸けることは怖くありません。ですが・・死んだ後、フィリア様に何かあってはダメなのです。・・・私はフィリア様のため死んでも生きて忠誠を尽くしたい!!フィリア様のために死ねるなら本望。ですがそれは私個人の自己満足でありフィリア様の最善ではありません。・・私は例え泥を啜っても、血肉を食らっても。生きてフィリア様に忠を尽くしたいのです!」
その言葉に憤りを深めるものが多い中、少なからずその言葉を考えるように息を呑む者達がいた。その中のひとりにはアークもいた。
命をかけ、戦場に散らす事を誉れと思う者は少なくない。
騎士であれば尚の事、主君のために命を賭すのは自身の誇りですらある。
それを否定するわけではない。
しかしそれを許されない者達も確かにいた。
その事をアークは当然よく知っていた。
何千何万の兵の中で戦う者たち。その中で気づくものは少ない。
数多の兵を背にして戦うものには自身の死は名誉に感じられる。
だが、主君を背にして戦うものにとって、自身の死はそのまま主君の危機へと直結する。
男は『暗殺者』として捕らえられ、この場所にいた。
という事は戦場において彼のいるべき場所は前線ではない。
諜報や暗殺のために敵陣近く、もしくは敵陣の中。
その場合は最終手段で『死』があり、それが最悪の際の最善。
もう一つは主の傍に居てこその『護衛』である。
そしてその場合云うもがな『死』は御法度だ。
更には男が口にした『忠誠』は国や領といったものではなく、フィリア『個人』に向けたものだった。
国や領といったものであればいくらでも次があるだろう。またそれが一族であっても代えがある。しかし個人への忠誠は違う。
「で、あれば貴様は『一輪の花』を賜る覚悟があると」
「はい。喜んで」
間髪入れない程の即答。
そこにはそれこそが望みだと言わんばかりの嬉々としたものが感じられた。
しかし、その言葉にその場にいる人間は音が響くほどにあからさまに息を飲んだ。
罵倒は止み、男とアークに注がれる視線には恐れが入り混じるようになった。
その中、フィリアはキョトンとしていた。
二人の会話も周りの反応もまるでわからなかった。もちろんそんなことは珍しくない。フィリアはまだ完全に言葉をマスターできたわけではないのでそんなことはよくあることだ。
だがこの状況でこの反応。確実に無関係ではないし、知らないで済む話ではなさそうである。
「それはフィリア『個人』への忠誠で間違いないのだな?」
「はい!生涯の主と定め、『環』を賜いたく思います」
その言葉にアークはゆっくりと男へと近づいてゆく。
騎士たちは緊張感を高め男の動きを更に注視した。
アークは男のそばにまで来るとフィリアに優しく微笑み頭を撫でた。
「条件がある。忠誠はフィリア個人に捧ぐとしてもその身はレオンハート大公家の預かりとし大公家のものとして仕える事。しばらくの間はフィリアに近づくことも許さないからその間に家人としての教育及び訓練に準じる事。それと『一輪の花』に付随する制約を結びその制約内容はこちらが決める。もちろんその中にはフィリアの安全などもあるし何より幼いが故に洗脳や扇動の可能性を考慮しての事。故にその内容は後ほど追契約として行なってもらう」
そういってアークは男の耳へと口を寄せた。
「そして、後ほど自白の『補足』をしなさい」
小声でのその言葉に大きく頷き男は条件を飲んだ。
男は先ほどの自供に嘘こそ言わなかったものの全てを話してはいなかった。仮にも雇い主。その内容を全て口にはしなかった。しかし生涯の主に危機があるならば話は違う。
「し、しかし閣下」
「その男が今後は無害とは思えません」
「フィリア様はまだしも閣下たち大公家の皆々様。ひいては領、国にとって弓引く存在に」
「そんな者を閣下の御側に。懐にわざわざ置くのは同意しかねます」
広間の者達は次々と異を唱えるがアークはそれを片手を軽く上げるだけで制した。
「皆の言葉はわかる。今後のことについては追契約の際に再度検討し不利益にするつもりだ。それよりもこの男は我が娘フィリアに『環』を望んだ、それを何よりも誇りに思うのだ。個人への忠誠は主君にとっての誉れだ。皆も知っていると思うが国や領といったものに捧げる忠誠とは異なりその忠誠は他よりも重いとされる。時には一人のために国に剣を向ける忠誠だ。そんな主君としてはどんな勲章よりも誇りとなるものをフィリアが受けるのだ。それも『一輪の花』までしてだ。こんな場ではあったが強制でもなければ妥協でもない。望まれてフィリアは忠誠を受ける。これほど喜ばしいことはない」
アークの言葉に帰ってくる言葉はないが表情には不満が浮かんでいた。
「この中にそれができるもの。それを受けられる程のものがいるか?もちろん貴君らの国や領への忠誠は疑っていないし素直に頼もしく嬉しいとさえ思っている。あぁ我ら一族への忠誠もだ。しかし『一輪の花』まで行い個人に忠誠を誓えるものがいるか?またはそこまでして誓いたいものがいるか?」
その言葉にはもはや不満すら消沈してしまった。
「案ずるな。これは生涯をかけても一度出会えれば奇跡と呼ばれる事だ。全てを捧げられる主君に出会えることも、全てを許せる臣下に出会えることも。ダメであれば死ぬだけだ死罪とさして変わらん。いや、寧ろ、より悲惨な最期となるだろう。だがだからこそ嬉しいのだ。この機会を無駄にしたくはないのだ・・見よこの二人を」
その言葉に視線はフィリアと男へと向く。
自身を襲ったはずの罪人に対して警戒心はなく寧ろ守るように庇い立つように傍にいるフィリア。そんなフィリアにすがるのではなくそのフォリアのためにとアークに強い視線を向ける男。
それは信頼にも似たものだが何か別の絆を感じさせる。
そんなふたりを見て広間の人々は自身の思いや言葉を下げるしかなかった。
そしてアークはそれを感じて小さく微笑むと軽く頷いた。
「それでは『一輪の花』を行いたい・・が、フィーはまだ幼い。契約魔術など、どうするか・・」
そこでようやくフィリアは理解した。
―――『一輪の花』って契約魔法のことだったんだ!・・でも・・えぇ・・それってよくある破ったら『死』とかの・・怖っ
「術式行使の仲介人。それは私が行おう。・・しかしそこからが問題だな。フィーの魔力で縛るため貴様に魔力を満たさなければならない。そしてこれが一番の問題だが・・フィリア自身が名を授けなければならない・・・・」
「・・それなのですが先程全身治癒をしていただいたおりよりフィリア様の魔力を纏っております」
「・・・・」
アークを含め幾人かが頭を抱えるように嘆息をこぼした。
「・・先程よりあまりの規格外に驚くことばかりだな・・・今後の対応にもう頭が痛い」
その言葉は広間中からの同意を得た。
ただひとりフィリアだけは問題児扱いに憤ったようにしていたが擁護はできない。
「ではとりあえず始めよう」
そう言うとアークは呪文を唱え始めた。
するとフィリアと男を中心に大きな魔法陣が生まれ赤紫の光がそこから沸き立つようにあふれた。
フィリアはそれに魅入って「綺麗だなぁ」などと呑気に思っていた。
その時アークが苦い顔を見せた。
「・・魔力が足りぬ。治癒魔術の際の魔力もほぼ抜けている・・」
「なっ?!・・もう魔力残滓が!?」
「あれ程の魔力が・・全身に纏うほどだったというのに」
広間がざわめきだした。
それにフィリアは気づき何やら問題が生まれたのはわかった。
男を見ると悲しそうな表情で自身の両手を見ていた。
―――・・可愛そうな表情だなぁ・・
フィリアは軽く溜息を吐くと男に向け手を挙げた。
―――魔法じゃなくて魔力だけでいいんだよね・・・えいっ
「っ?!ま、魔力!?」
フィリアの手より放たれた魔力は膨大な量を持って男を一瞬で飲み込み魔力で満たした。
その事象にアークは上ずった声を出し驚いた。
しかし男はそれに一瞬目を見開いたが直ぐさま安堵したように表情を緩ませた。
「と、とにかくこれなら大丈夫だ。このまま続ける」
驚くアークはそのまま魔術の発動を強めた。すると魔法陣の光は更に光を強め溢れる光はフィリアと男の前にそれぞれ集まり形を成してゆく。
―――・・文字?
二人の目の前にはいくつもの形が規則正しく整列して並んでいた。
しかしフィリアにはどうすればいいのかわからない。
すると男はその文字列に手をかざし、そしてフィリアに対し片膝をたてて頭を垂れる状態となった
「フィリア・レオンハート様を―――」
「ティアだ」
アークが呟いた。
「フィリア・ティア・レオンハート様を生涯唯一の主と定め私の全てを捧げ尽くすと誓います」
と宣誓した。
その瞬間文字は吸い込まれるようにかざされていた手から男の中へと消えていく。
―――なるほど、あぁするのか
確認したフィリアが文字に手を触れようとしたその時。
ポタッ
―――・・・え?
音の先には赤い雫が落ちていた。そしてそれは次から次へと落ちてくる。
フィリアはゆっくりとその源泉へと視線を動かした。
そこには男が片膝を付いた状態でいるだけだが、その光景は異常だった。
閉じられた瞼の端からは涙のように赤い筋が溢れ、耳や口元からも紅い筋が溢れている。
それだけではなく爪の間や数箇所の皮膚を裂いて溢れている。見る見る服の色が染まっていることから目に見える箇所だけではないのが嫌でもわかってしまう。
瞬く間に男の足元に赤黒い血の水たまりが出来ていた。
―――ひっ!?
そんな悲鳴をこぼすフィリアだが目は釘付けだ。
男の足元に溜まった紅い水たまりは次第に幾つかの道筋を見つけたように流れ出す。
その光景は自然ではなく明らかに意図があり、その流れは次第に形が定まってきた。
それはアークの作り上げた魔法陣に補足するかのように新たな魔法陣を作り上げていく。
「さぁフィーもだ」
そう言ってアークは固まっていたフィリアの手を掴むと文字列へと誘導した。
―――いやだっ!!いやっ!!!血じゃん!!!大量出血じゃん!!!大怪我じゃん!!!いやっ!!嫌だーーーっっ!!!!!
しかし赤子の非力は抗うには余りに無力だった。
抵抗?むなしく文字列に触れたフィリア。
その瞬間文字列は男の時と同じようにフィリアの中に流れていく。
―――え!?なんで!?文言も何もいってないよ!?嫌だっ!!いーーーやーーーだーーー!!!!
フィリアは絶叫を鳴き声に変えて強く訴えた。生まれてこの方で一番大声で泣いた。
予想される激痛に心の底から絶望し瞼をこれでもかというほどに強く閉じ大声で泣いた。
だが、予想されたものは来なかった。
その事を不思議に覚え、片目ずつ恐る恐る薄めがちに目を開けていった。
そこには傷一つない自身の手があった。
そしていつの間にやら浮遊ではなくアークの腕の中にいる事にも気づいた。
フィリアが更に視線を落とすと床に広がっていた血は赤さを失くし虹色に輝いていた。
その原因も簡単だった。
男の時とは違いフィリアは体中から魔力が溢れていた。その魔力は血の魔法陣へと行き赤い血に触れた先から虹色へと変えていた。
「やはりフィーの魔力量は規格外の多さらしいな。ただでさえ疲労の大きな魔術なのに虹色の契約などしても大声で泣く元気がある」
―――・・え?そういうもん?
「さぁ最後だ・・・フィー。この者に・・名をつけなさい。生涯傍に仕えてくれるフィリアだけの忠臣だ」
アークにとっては魔力量などは想定外であっても問題ではなかった。
それよりも、未だ赤子の愛娘がはたして『名づけ』などということができるのかこそが問題だった。
それができなくば目の前の男は死ぬのみ、それももがき苦しむような悲惨な最期で。
男もそれはわかっていように。それでも望んだ。
―――はぁ・・色々疲れたし早く済ませて終わりにしよう・・・。でも生涯仕えてくれるのか・・なんか大事になったな・・重い・・けど、半端な覚悟じゃないだろうし。・・・がんばって応えよう。・・で、名前かぁ。・・・・・・・仕える・・・・・執事的な?・・・・
「えあう・・」
「「「「はい?」」」」
―――・・しまった
まだ形にできぬ手の形で男を指さし言い放ったのにフィリアは完全に失念していた。
自身の言語能力の稚拙さを。
アークを呼んだ際は言わば奇跡のようなものだったのに忘れていた。
―――一生を左右するような名前で!!こんな・・こんな・・・申し訳無さ過ぎるっ!!
フィリアの自責の念は身を一瞬で焼いた。あまりの申し訳無さに男はもちろん抱き抱えてくれているアークの顔さえ見れない。
しかしそんな想いも虚しく契約は完了されてしまったようで、魔法陣は一瞬眩くと虹色の血流は男のもとへと戻るように流れる。
まるで逆再生でもしているかのように男の中へと戻っていく。
そしてその場には魔法陣のみが残され、ゆっくりと浮かび上がり二人の間に光の球となって鎮座した。
「我が生涯の主君フィリア・ティア・レオンハート様に賜った名。今生身に刻み全身全霊をもって尽くし。これより『セバス』と名乗らせていただきます」
―――・・・え?
その言葉とともに光の球が弾け二つに分かれると1つはフィリアの右手親指に指輪のようになり、光を失うとタトゥーのように肌と一体となった。
もう1つも男の左手小指に同じように刻まれた。
それこそが主従の証なのだろう。
その意象は色も相まって向日葵のよう。
「向日葵。これがフィーの『花紋』か」
アークはフィリアの親指をまじまじと見つめ呟いた。
その呟きにフィリアも自身の指を見つめたが、思い出したようにアークを見て。男を見つめた。
アークもひとしきりフィリアの指を観察すると男へと目線を向けた。
「・・セバスだったか?フィリアが与えた名は」
―――そうっ!!なんで!?なんでわかったの!?
「はっ!!」
フィリア自身も我ながら絶対に伝わらないと思っていた。実際、最大の理解者認定をした母リリアですら首をかしげていた。他の者に至っては間抜けな声を漏らし、中には不憫に思ったのか顔を引き吊らす様なものもいた程だった。
「・・なんというか。・・その・・・よくわかったな」
「はい?」
「あ~、いや・・『セバス』という名をだな・・フィリアが名づけたと・・。我々はてっきり・・なんというか・・不憫な名づけをさせてしまったと思ってしまたんだが」
その場の人間はフィリアも含め大きく頷き同感だとした。
しかしセバスはキョトンとして逡巡するとおずおずと口を開いた。
「・・・よくわかりませんが。あの瞬間私には確かに『セバス』と聞こえましたし。『一輪の花』の成功からも間違いではないと思いますので。・・・おそらくは契約によって多少の意思の疎通が取れたのではないでしょうか?」
そのセバスの説明に皆が「なるほど」と唸る中、目を光らす者もいた。
その代表たる親子がセバスに詰め寄った。
当然のことながら、フィリアとアークだ。
アークはフィリアを押し出すようにセバスに近づけ、フィリアもそれに乗じるようにセバスに期待の瞳を向け身を乗り出した。
「あぅぁ~うぇあ~~う~~」
「さぁなんと言っている!!」
―――さぁなんと言っている!!
期待の瞳はこの二人が親子であることを否応なく証明していた。
ちなみに、同じような目をした者もそわそわと高座よりこちらに視線を向けている。
セバスは二人の気迫とそんな期待の視線に苦笑をこぼした。
「・・・申し訳ありません」
どうやらそんな都合のいい能力ではなかったらしい。




