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2.Ⅱ-3


 それはそれは立派な、白亜の城。

 正面玄関に立てば、見上げても視界に全体像の収まらない広大で壮麗な邸宅。

 城と言っても、宮殿と呼ぶには小さく、幾本もの尖塔があるわけでもなく、ただただ大きな真っ白の屋敷である。外装まで抜かりなく手入れされ、陽が落ちていなければ、眩いばかりに輝いていたに違いない。

 王の座す居城に較べれば驚くような規模の屋敷ではないが、田舎者にとっては目を溢さんばかりの城であった。

 シズルにあった屋敷も一般的な家屋とは比較にならない大きさであったが、地主であった男は貴族でもまして領主でもなく、ただの金持ち。どれだけ驕っていても所詮は井蛙せいあ、王都の貴族とは天地ほどの差があったのだ。アメリアを玩具にしていた奥様のお家は貴族だったけれど、それもこの屋敷を前にしては較べる水準にはない。

 これまた相当の金持ちが乗るものと相場の決まっている自動車に乗せられていたので、屋敷の全景を見ることはなかったが、門を潜ってから屋敷の正面玄関に辿り着くまでも距離があり、その広さを窺わせた。

 そんな何部屋備えているのか数えるのが莫迦らしくなる程の邸内の、これまた壮麗としながらも品良い調度品の設えられた一室で、アメリアは老爺にじっと目を見詰められていた。


「うむ。軽い脳震盪で済んだようですな。後遺症などは残りますまい。しかしまぁ、頭を打った少女に無体を強いるなど、とんだやんちゃ坊主がいたものですなぁ」

「そう言ってくれるな、マクロン翁。これでも分別はついていてな。何も子ども心の好奇心で虫を解体した訳ではないのだ」

「懐かしゅうございますな、殿下。御身は好奇心が服を着ていたようなもの。生来の貪欲なまでの知識欲で今やご立派にお成りと思うておりましたが、時に人目も憚らず服を脱いでしまうこともおありでしょうや」

「全く、肩肘を張ったところで、貴殿に言わしめれば我等も形無しだよ」


 苦笑して肩を竦めるのは、ディオン王子殿下。

 黒と白のみを使った上品ながらシンプルな紳士の装いだった彼は、屋敷に着くとすぐ、金糸がふんだんに刺繍された濃紺のジュストコール、細やかなレースのクラヴァット、臙脂のジレ、白のブリーチズにロングブーツという、見るからに貴族の装いに変化していた。

 部屋の中の上座にあるソファに脚を組んでゆったり腰掛け、肘掛で頬杖を付く様は、まるで絵画作品であるかのように画になっていた。或いは、彼のために全て設えられているのか。いかに豪華な装飾や意匠を拵えても、例え市民階級と同じ服装をしていたとしても、ディオンの高貴な佇まいを曇らせることは決して叶わないだろう。

 国が誇る『リヴィエール商会』の裏の顔、その名『ロジェ』。王都のダウンタウンの端の端、貧困街スラムとの境目に、彼らのアジトはあった。

 アメリアはそこから訳もわからぬままこの屋敷に連れられ、何故か王子殿下を前に、サヴァン・マクロンと名乗った豊かな口髭を蓄える医師に腕の切創を縫われた後、頭の包帯に話が及ぶと幾つかの診察を行われていた。

 頭の方は、小さな切創こそあるものの皮下血腫たんこぶにしかなっていないということで、包帯の必要はなしとのことだ。頭をぶつけた事に対する心配もないらしい。とはいえアメリア当人は怪我への心配など思考の端にも浮上しなかったのだから、安心も何も感じなかったのだが。


「殿下。ご指示の通り、運び込めるもんは地下に納品しましたよ」


 女中に連れられ、仕事を終えたセルクルが部屋へと入ってきた。

 彼を案内した女中が下がると、すぐに別の女中が茶器を手に入室してきて、人数分の紅茶を用意する。それを目で捉え、更にソファを見ることで、ディオンは視線でセルクルに座ることを許した。

「流石は仕事が早いな、ダヤン。……いや、偽名セルクルで呼んだ方がよかったかな?」

「非公式の場でさ、セルクルでお願いしますよ。お褒め戴くのは有難いんですがね、明日の式典を前にお忙しいでしょうに、こんな性急に動く必要はおありだったんです?」

「何、念の為だ。“備えは十全じゃ足らぬ”というところだな」

 セルクルの言葉を引用して微笑むと、その当人は困ったように肩を竦めた。そしてちらりとマクロンに視線を送る。今ここに居て、更に偽名の話を出すということは間違いなく殿下のお抱えで、話を聞かれる事に問題はないのだろうが、しかしその治療を受けさせている小娘をどう扱うつもりなのか、セルクルにはディオンの意図を察しかねた。

 当のアメリアはマクロンに促され、今まで味わったこともない良質な紅茶を飲んでいた。美味しいとは思うが、基準を持たないアメリアにその素晴らしさは理解できなかった。理解できない自分が飲むには勿体無い物だということは確かなのだけれど。

「この娘まで連れてきたのは何故なんです? そりゃ聞かれちゃまずい事を、殿下はこの娘にも惜しみなく聞かせとりましたけど」

 自分の話題を出されアメリアは二人を見るが、彼らの視線はアメリアには向かなかった。

 セルクルが訊きたいことはアメリアも当然知りたい。流石に商品だからといって、ここまで良い扱いをするのがおかしいのは理解している。攫われてからこちら、流されるままにここまで来てしまって、何一つ状況を把握できていないのだ。

 王都。ユキト達が目指していた所。まさか自分もそこへ辿り着けていたなんて、思いもしなかった。もしかしたら彼らは、この街のどこかにいるのだろうか。


 言外に迂闊さを責められたディオンはしかし取り合わず、ふと気付いたように視線を窓の外へ向けた。

「時に、貴公はここが誰の屋敷か知っているか」

「え? へぇ。フォンヴァンス侯のお屋敷と存じ上げとります」

「ロジェの顧客か?」

「揶揄わんでください、殿下。侯爵様は殿下の側近でいらっしゃるんですから、ご存知でしょ? あたしはご訪問させていただくのは初めてですけど、商会のもんが何度か御用聞きに上がっとります。ここの奥様は後ろ盾のないウチでもご贔屓くださるご立派な方でしたから」

「側近に裏でもあるかと思ったのだが、つまらぬな」

「もしや殿下は人を試すのがお好きですな?」

 否定も肯定もせず、ディオンは艶然と微笑む。最早肯定しているそれに、セルクルはぞわりと背中の生毛が逆立つのを感じた。

 ディオンは優雅な仕草で紅茶を一口啜ると、再びセルクルを試すように見詰める。

 傍目から見ているアメリアでも感じるが、彼は人の眼を本当に真っ直ぐ見詰める。射抜くような鋭さではなく、総てを見透かすような、人の総てを覆ってしまうような視線。この黄金には何一つ隠しておけないと錯覚させる。

「では、今我が国にはアルカディアからの公式訪問があることは知っているかな」

 セルクルはぎょっと眼を見開いて、すぐさまアメリアを見た。

「じゃあまさか、この娘は……」

「流石の情報通も、聞き及ぶには難しかったとみえる。そうだ、我が国で行方が分からなくなったとあっては、国際問題になりかねん。そうでなくとも付け入る隙を与えることになる」

「そ、そりゃあ、知らなかったとはいえとんだことを……」

 元手のかからない、謂わば誘拐ビジネス。まさかそれが国際問題になろうとは思ってもみなかったようで、セルクルは居心地悪そうに頭を掻く。

 ディオンは、フ、と微笑んだ。

「その点、どうだ。私の懐刀はよく働いただろう? 金勘定は一級品、人心掌握にも事欠かない。今回の事には些か手を焼いたようだが、巧く誤魔化して立ち回っていたな」

「……はい?」

「ああ。芝居に関しては、天下一品とも付け足しておこう」

 最初は訳が分からないと言った顔をしていたセルクルだったが、やはり勘がいいのか、バチンッ、と大きな音を立てて、無骨な手で己の顔を覆って呻いた。

「嘘でしょ!? あの鳶色の髪………!!」


「何です、殿下。もうよろしいので? てっきり、今しばらく隠しておくものかと存じておりましたが」


 部屋に入ってきた貴族の男にアメリアは眼を瞠り、セルクルは据わった眼で視線を送った。

 男は卒のない仕草で僅かに腰を曲げ胸に手を置き、軽いお辞儀をした。


「フォンヴァンス侯、アルブレヒト・ボーヴォワールと申します。()()()()()()()()()()()、セルクル殿」


 そこに居たのは紛れもなくバローで、けれど着飾った姿も、表情を生まない静かな顔付きも、洗練された立ち姿も、滲み出る気品も、全くバローではなかった。軽薄に聴こえていた声の出し方も、今や重厚さを感じるほどで、根本から違う。

 年齢さえ違って見える。軽装の時は若く見えていたが、髪の結び方だろうか整え方だろうか、とにかく一回りくらい風格が上がっているように感じた。これもディオンの言う芝居の中に含まれるのだろうか。

 今や分かり易い特徴であった眼鏡もしていない。

「おや、坊ちゃん。しばらく見ない間に男前が上がっておりますな」

「やはり男というのは、それくらい負っていた方が様になるか」

「揶揄うのはおやめください、マクロン先生、殿下」

 二人に顎の湿布について揶揄されたバロー――――正しくはアルブレヒトは、静かに翡翠の眼を伏せて、二人の詮索を鬱陶しそうに一蹴した。

「揶揄うのはおやめくださいはコッチの台詞ですよコノヤロー……侯爵様が自らスパイの真似事ってどういうことっすか! 半年も、国政とか、領地運営とか、色々……何してんすか!」

「国の根幹をひっくり返すための支度だ。一番に信頼できる者の瞳で見定めてもらわねばな。潜り込ませる手間を掛けた甲斐があったよ。お陰で、よいビジネスパートナーを見繕うことができた」

 頭を抱えたセルクルの非難に答えたのは、アルブレヒトを遣わした主人であるディオンだった。

「ありえねぇ……勘弁してくださいよ……。マジで何もかも筒抜けなんすね…」

「いや、本当にな、とても、とてもよい拾い物ができた。人道に悖る行いだとしてもな、貴公の商才に感謝しているよ、セルクル」

 恍惚と微笑むディオン。柔らかな笑顔なのに、背筋に寒気を感じさせる底知れない威圧感がある。

 そちらには構わず、アルブレヒトはアメリアの横まで移動してきて、感情の窺えない瞳で見下ろしてきた。

「手荒く扱ったことをお詫び致します。それから、これもお返ししておきましょう」

 彼が差し出したのは、言うことを聞かせるために取り上げていた銃だった。ご丁寧にも没収されていた弾まで込められている。

 アメリアはそれを受け取るが、視線はアルブレヒトの翡翠の眼から逸らせなかった。じっ、と見詰めていると、彼の表情の浮かばない冷徹な顔が、いつぞやのように一瞬苦虫でも噛み潰したかの如く歪められた。けれど見下すような色も、侮るような不躾な視線も感じられない。罪悪感でもない。一体そこにあるのが何なのか、アメリアには汲み取ることが出来なかった。

 彼が自分を真に気遣っていたということは理解した。確かに幾度も忠告されたし、言葉こそ酷いこともあったが手酷い扱いはされなかった。振り飛ばされたのはノーカウントと扱うべきだと思う。いや、例え先に手を出したのがアメリアだとはいえ、元より悪いのは誘拐した方なのだけれど、スパイをしていたということはあからさまな態度を取るわけにもいかなかったに違いない。

 心底悪い人間ではなかったということ。それは、分かったが。


「………きもちわるい」


 アメリアが真っ直ぐに見詰めたまま、ぽそりと呟いた一言に、アルブレヒトは眼を見開き、ディオンがク、と堪えるように一つ笑いを零した。

「……心外ですね」

 冷たい光の宿る瞳をスッと細めるアルブレヒト。

 そんなことを言われても、アメリアとて内心では自分の発言に驚いていた。他人を気持ち悪いと思ったのはこれが初めてだ。それも、与えられる親切を。

「君には散々手を焼かされたことはあれど、それを貶される覚えはないのですが」

 それだ。その話し方だ。それからこの無表情も。

「……今まで通りがいいです」

「あれは芝居です。こちらが私の素です」

「うそ」

「たった二日で君に何が分かるんです」

 確かにほんの短い時間しか彼を知らないが、直感するのだ。

 柔らかな雰囲気のディオンは、あの凍て付く夜のような冷厳たる顔が本性だ。

 そしてアルブレヒトは、こんな淡々として感情を見せない冷静沈着な人ではなく、例え思慮深くとも気分屋で自由で人を小馬鹿にしたような、けれど憎み切れない“バロー”が本性であると。素のままの彼は“バロー”であるのだと、何故か確信をもって思わせた。

 理由にはならないが今の彼は、首の後ろが、ゾワッ、とする。本能的にこれは違うと感じるのだ。

 最初に知ったのが“バロー”の方だからと言われてしまえばそれまでだが、アメリアは絶対にその所為ではないと否定出来る。芝居と言うなら今が芝居だ。

 そして何より、


「バローの方が、好きです」


 正直に言えば、今度こそ彼は顔を歪めた。額を手で覆って、かぶりを振り嘆息を吐く。

「お嬢さん……いいですか。バロー(わたし)は君を誘拐した男の仲間であって、今の私と比較したからといって、間違っても人間性を好きと言われる代物ではありません。確かに商品(もの)に接するよりは優しかったかもしれませんが、ほんの匙加減です。その理由も君のためを思ったのでもなく、国の不利益を防ぐため。その危機感のなさと大莫迦なところは救いようがなさすぎる。先生、自己防衛本能というのはどうすれば蔑ろにできるのでしょう」

「さて……蔑ろにすることこそが彼女の自己防衛かもしれませぬな」

 マクロンの考察に再びアルブレヒトは溜息を吐いた。対してディオンは愉しそうに笑う。

「フ、はは。卿がそのような顔をさせられるとは。手を焼かされただけのことはある。『鉄仮面の冷血侯爵』の名が廃るぞ」

「あ……侯爵様…。ご無礼をお赦しください」

「やめなさい。君にそういう態度を取られると、本当に奴隷のようで不快です」

 目の前の男が貴族、しかも侯爵であることを思い出させられたアメリアはペコリと頭を下げる。田舎娘でも侯爵がとても偉い立場の人であることは知っているし、貴い方に対してどういう言葉遣いや態度が必要かはこれまでの転々とした生活で自然と学ばされていた。

 だが不可解にも、敬われるべきアルブレヒトの方がその態度を咎めたのだ。

「そんなに気に入ったのなら、“バロー”で結構。口が減らなかろうが、跳ねっ返りのじゃじゃ馬でいれば宜しい。但し少しは自重を覚えて欲しいものですけれどね」

「でも、貴族様に楯突いたら、打ち首って聞きました。まだ死ねません」

「…どの口が“まだ死ねない”と世迷言を言っているのか大変不可解ですが、それはいいとして、私のことは貴族と思わなくて結構です」

 何を言わんとしているのか、全く分からない。首を傾げると、横に座るマクロンが口髭を指先で弄りながらにこにこと説明してくれた。

「お嬢さん。坊ちゃん――――ああ、失礼、フォンヴァンス侯は、気安く話して欲しいんだそうだ。つまり身分の壁を超えてお友達になりたいということですな」

「先生。耄碌してしまわれたか。国の誇る頭脳が一つ失われたとは、誠に遺憾です」

「お友達……?」

「まともに受け取らないでもらいたい」

 一連のやり取りをしていると、グフッ、と妙な息遣いが聞こえたのでそちらを見れば、セルクルが顔を俯けて屈強な肩を小刻みに震わせていた。顔を上げずとも視線が集まったのを感じたのか、彼は掌を前に向けて、自分の非を赦してもらうことを乞うた。

「し、失礼……っ、っ小娘に翻弄される、冷血侯爵、とは、クッ、……クク……いや、おかしな娘と思ってはいたが…っ、そりゃあ一人、逃す訳だっ……クハッ」

 相手が侯爵でなければ大爆笑しているといった様子。バローとして暫く付き合いがあったのも影響しているだろう。アメリアには何が面白いかは一切分からないが。

 アルブレヒトの眼がスッと冷ややかに細められる。平民のセルクルは恐らく顔を伏せていて救われた。視線がかち合っていたなら、そこに怒りを感じないとはいえ、縮み上がっていたに違いない。

「貴方の手柄のお陰でこのような憂き目に遭っているのですが、胸を打ったようで救われた気持ちになります」

「い、いや、ご苦労おかけしちまって、っ、申し訳なく……っ、ククク……」

「まあ、そう言うなアルブレヒト。卿が小娘に振り回されるなど、愉快な――――ああ、貴重な経験ではないか。人生何があるか分からぬものだな。今後に活かせ」

「御身に振り回されているだけで身に余ります。配下の背信にはゆめゆめご用心ください、殿下」

「おや、困ったな。卿がいなければ公私ともに私は生きてゆけぬとも、アルブレヒト」

「お戯れを。御身は今の身分を失くされようと生き延びる驚異の図太さです。ええ、ご心配には及びませんよ」

「長生きできぬ運命さだめにあるというのに、卿は冷たいな」

「こらこら、諸君。お嬢さんを置いてきぼりにしておる。不毛な言い合いを愉しむのは坊ちゃんらの悪癖ですぞ」

 ただただ彼らのやり取りを見ているしかなかった平民の娘を不憫に思ったのか、マクロンが二人を窘めた。

 状況に流されることに慣れすぎて、アメリアは別に見ているだけでも文句一つなかったのだが、結局話の本筋が何だったのかは忘れてしまった。何故このような言い合いになったのだったか。

 その答えを、ディオンが寄越す。


「レディー、私のことも、ディオンと呼んで構わぬ」


 ひたり、と視線が重なった。

 彼の黄金と真っ直ぐ向き合ったのは、思えば初めてだ。何て綺麗な瞳なのだろう。

 一度、牢屋で向き合いはしたがあの時は一瞬だったし、怪我を負ったばかりのアメリアは視界がぐらぐらとしていて、これほどしっかり瞳を見ることはなかった。

 つまり彼がアメリアの瞳を見たのが初めてということ。

 だからずっと、貴い身分の彼にとってアメリアは取るに足らない、眼を向けるまでもない卑小な存在なのだと当然のように受け取っていたのだが、一体これはどういうことだろう。

「殿下…? 何を仰っているのですか。御身は一貴族とは違うのですよ」

 流石に不敬であると、アルブレヒトは自分を棚に上げて錯乱したのではと思わせる発言を諌めようとするが、ディオンに撤回する心算は一切なかった。

 ディオンはにこりと高貴に微笑んで、アメリアを手で示す。


「事は肝要だ。何せ彼女は、我々を導く聖なる乙女なのだから」



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