1章-1
第三部開幕です。
三ヶ月に渡る妃教育が終わり、いよいよカテリアーナのお披露目をするため、妖精の国の各国へ訪問する時がやってきた。
出立の朝、宰相ジェイドを始めとするエルファーレン王宮に仕える重臣たちに見送られ、フィンラスとカテリアーナは旅立った。
「ドラゴンで行くわけではないのね」
「あれは最速だからな。三日ほどで妖精の国を訪問をし終えてしまう」
これから主要な国を三ヶ月かけて馬車で旅をする。フィンラスの妃になるカテリアーナを紹介するためだ。
エルファーレン王国は妖精の国側の要だ。その国の王妃ともなれば、いろいろと品定めされることも多い。しかし、フィンラスはカテリアーナであれば大丈夫だと思っている。
三ヶ月の妃教育の成果は、王妃としての素質は申し分なしとパールから報告を受けている。
カテリアーナは意外と肝が据わっていることは、彼女を幼い頃から見守ってきたフィンラスは知っている。だからこそ、ラストリア王国からカテリアーナを妃に迎えろと要求されて素直に受け入れた。
「ドラゴンに乗りたかったか?」
「乗りたかったわ。せっかく練習したのに」
フィンラスと遠乗りに行った次の日から、騎竜術をフィンラス直々に学んでやっと一人で乗れるようになったのだ。
最初から上手く乗れたわけではない。フィンラスのドラゴンは主人の番であるカテリアーナを受け入れ、振り落とすことはしなかった。だが、他のドラゴンは違う。容赦なくカテリアーナを振り落としにかかった。
そこでフィンラスはカテリアーナにドラゴンを贈ることにした。
カテリアーナに贈られたドラゴンは雌だ。雌のドラゴンは雄に比べて気性が優しい。カテリアーナは彼女にディアナという名をつけた。
毎日、竜舎に訪れてはディアナの世話をした。竜舎の世話係が恐縮したほどだ。
そうして信頼関係を結んだおかげか、ディアナはカテリアーナに気を許し、主人を乗せる時は落とさないように気を遣ってくれた。
「ディアナに三ヶ月も会えないのね。寂しいわ。ディアナも寂しがっていないかしら?」
「竜舎のものが大切に世話してくれる。それに俺のヘリオスもいる」
ヘリオスというのはフィンラスのドラゴンのことだ。
ふいに馬車と並走するカルスの馬が近づいてくるので、フィンラスは窓を開けた。
「何だ? カル」
「陛下。本日はエルファーレン王国とカリュオン王国の国境に宿をとっております。途中何度か休憩をとりますが、慣れない旅ですので具合が悪くなったらいつでも申しつけてください。カテリアーナ様」
「ありがとう、カル」
今回の旅にはカルスとエルファーレンの近衛騎士、それとカテリアーナの世話をするためにエルシーが付き従っている。エルシーは剣士としての顔も持っているため、護衛兼侍女というわけだ。
カリュオン王国はエルファーレン王国の隣国で友好国だ。カリュオンの王は女王でパールの姉でもある。
「カリュオンの女王はパールの姉君なのよね? どんな方なのかしら?」
「一言でいえば、パールに輪をかけた感じだな」
フィンラスの言葉で何となくカリュオンの女王がどのような人物なのか想像がついたカテリアーナだった。
ここまでお読みいただきありがとうございました(*^▽^*)




