二つの果ての国
番外編です。
SIDE:ラストリア王国
エルファーレン王国からラストリア国王宛に親書が届いた。
ラストリア国王ハーディスは親書を読み終えると、宰相を執務室に呼びつける。
「陛下、お呼びでございますか?」
「うむ。明日の会議にこれを組み込め」
宰相のカヴェーノは国王からエルファーレン王国からの親書を受け取ると、内容を目で追う。
「これは!?」
翌日、会議の最後にある議題が出される。
「それでは、最後の議題となります。昨日、エルファーレン王国から我が国に親書が届きました」
「なんと!? 妖精族の果ての国からか」
会議に出席している各大臣がざわざわとし始める。宰相はコホンと咳ばらいをすると息を吸う。
「お静かに! 内容は割愛しますが、親書によるとカテリアーナ姫が成人したあかつきには、エルファーレン王国に招待したいとのことです」
「『取り替え姫』をか?」
「ちょうどよいではないか。『妖精の取り替え子』などそのまま押し付けてしまえばよい」
再びざわつく大臣たちを制したのは国王であった。
「私はエルファーレン王国の招待を受けると同時に抗議をしようと思う!」
抗議の内容はこうだ。
三百年前、両国間の国王で取り決めた制約の中に『妖精は取り替え子をしない』というものがあった。しかし、妖精族は制約を破ってカテリアーナを取り替えた。
淡々と語る国王の言葉に一人だけ眉を顰めた者がいた。
ラストリア王国騎士団長のストリングスである。
SIDE:エルファーレン王国
「妖精族は制約を破った責任としてカテリアーナ王女をエルファーレン王国の王妃として迎え、本物のラストリア王国第二王女を探せ。か」
ラストリア国王からの返事を読み終わったエルファーレン王国国王フィンラスは、笑う。
「笑い事ではありませんぞ、陛下! とんだ言いがかりではないですか!」
「父上、興奮して耳が出てますよ」
エルファーレン王国宰相ジェイド・フェアフィールドは慌てて縞々の猫耳を手で隠す。
そして、フィンラスの隣でくくくと笑っている息子をぎろりと睨む。
「王宮では宰相と呼べ、カルス。このバカ息子め」
「今度は尻尾が出てますよ、宰相閣下。それで、どうするんだ? フィル」
カルスはジェイドの息子でフィンラスの幼馴染である。今はフィンラスの執務室で三人だけなので、愛称呼びだ。国王の補佐を務める彼は公の場ではしっかり国王に対する礼をとっている。
「ラストリアの要求どおりでいいだろう。カテリアーナ姫を我が妃に迎え、本物の第二王女を探そう」
「こちらも抗議をするべきです、陛下! 人間の娘を妃になど。毛並のいいケットシーの貴族令嬢から妃を迎えるべきです」
「カテリアーナ姫は『妖精の取り替え子』らしいですから問題ないと思いますよ。宰相閣下」
フィンラスの決定に不服を申し立てるジェイドをカルスが宥める。というか口調は完全にからかっているようだ。
「決定事項だ、ジェイド。至急、重臣たちを集めてくれ」
飛び出た耳と尻尾を逆立てたジェイドを宥めるようにフィンラスはジェイドの肩に手を乗せる。
「陛下の決定で仕方ありませんな」
ぐぬぬと唸りながら、ジェイドは執務室を退室していった。
ジェイドを見送った後、フィンラスは満足そうに頷く。
「カテリアーナ姫は俺自ら迎えにいこう」
「面白そうだから、おれも連れていけ、フィル」
こうして、ラストリア王国とエルファーレン王国の両国間でカテリアーナの輿入れが決まった。
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