第六話 フェリス
フェリス以外の村の住人全てを埋葬して数時間後。
俺は既に半壊した状態のフェリスの家で助けた礼に貰った水を喉に流し込んでいた。
「ああ、うっめええ~~。一仕事終えた後の水は最高だね~」
「はあ、私としてはアルステルからクレイクへ向かうのにその程度の食料と水しか用意してない事に驚きですね。カイさんは死にたいんですか?」
フェリスはテーブルに肘を付き顎に手を当て呆れ半分で言った。
俺は水を飲み濡れた口を袖で拭き、ニヤリと笑いフェリスに答える。
「ケケッ、随分と遠慮のねえ話し方になってきたじゃねえか。いいぜ、俺としてはそっちの方が断然好みだ」
「え、好みって、やっぱりカイさんは私の事を……」
「あ˝~、悪いがその流れはもう飽きた。さて、話を戻すが俺もこの程度の食料と水じゃ不安だったが、俺にも色々事情があってな。アルステルに長居するわけにはいかなかったんだよ」
ちなみにアルステルは元々俺が住んでた街で、クレイクは俺がこれから向かう街だ。この二つの街の距離はかなり遠い。あの程度の食料で持つわけねえわな~。
そう呑気に考え水を飲んでいると、俺がアルステルに長居するわけにはいかないという言葉を悪い方向に捉えたのか、フェリスは若干不安そうに聞いてきた。
「あ、あの~。もしかしてカイさん、アルステルで犯罪とかしちゃいました?」
「あ˝~、俺が犯罪だ? そんな事するわけねえだろ。むしろ、生まれてからこれまで家に閉じ込められてたから、外に出るのも久しぶりだぜ~」
「ホッ、安心しました……あ、別にカイさんがそんな犯罪なんてするって思ってたわけじゃありませんよ!? 一応聞いておこうかな~て思っただけで!」
「別に気にしてねえよ。それより、フェリスはこれからどうするつもりなんだ? 村はこの有様だがここで一人で住むのか?」
「そ……それは……」
俺の言葉にフェリスはやっと自分の置かれている状況に目を向け俯く。
このオンボロな村で若い女性が一人、盗賊やらに襲われるのがオチだろうな。
ゴクゴク、あ~水うめえわ~。
「……カイさん、私がこんなに困ってるのに随分と呑気ですね?」
「ケケッ、別に俺が困ってるわけじゃねえからな~」
「そんな冷たい事を言わないでくださいよ! そうだ、カイさんってこの先のクレイクに行くんですよね! 私も一緒に連れて行ってくださいよ~!」
「あ˝? 何で俺がお前を?」
「そんな冷たい事を言わないで連れてってくださいよ! 私、クレイクの街の事かなり詳しいし、きっと役に立ちますから~!!」
ほ~、それが本当ならありかもな。
俺はこれまで箱入り息子、外の世界の情報は皆無。
当然、クレイクの街の情報も知るはずもなし。
そこでフェリスを連れて行けばいい案内人になるか。
俺が密かにフェリスを連れて行く事をほぼ確定で決めていると、
更にフェリスは興味深い話を切り出した。
「そうだ! 私は迷宮に入った事も何度かあります! カイさんもきっと迷宮に潜るんですよね!? 私は戦う事は出来ないけど、いい荷物持ちになると思います!」
「――あ˝? 迷宮だと?」
俺が初めて聞く言葉に首を傾げるとフェリスはニヤリと笑う。
そして、その貧相な体を精一杯俺に押し付けて上目遣いで話し始めた。
「あれれ~~。もしかしてカイさんは迷宮の事も知らないんですか~? ていうか迷宮の事も知らないでクレイクに行くとか、正気ですか~~?」
「――おい、そのうぜえ喋り方を今すぐ止めろ。それと、その壁みてえな胸を押し付けてくんじゃねえよ。妙にゴツゴツして鬱陶しいんだよ」
「か、かかか壁!? 今まで村の人達からも子供っぽい体型だけとか言われてきましたけど、壁って言われたのは初めてですよ!? カイさんには良心ってもんがないんですか!?」
「あ˝~だり~。いいから早く迷宮の事を教えろよ。もし、迷宮の情報が有益な物ならお前を連れて行く事も考えるからよ」
俺の言葉を聞いたフェリスはさっと俺の側から離れ、先程と違い表情を真顔に変え言った。
「え、本当ですか? 言質とりましたからね? もう撤回しても遅いですよ?」
ケケッ、本当に面白れえ奴だ。
正直、性格だけならフェリスは俺の好みに近い。
一緒にいても飽きなさそうだからな~。
――でだ、あんたはさっきから黙ってどうしたよデシウス。
(……いや、何でもない)
「おいおい、俺とあんたは何年の付き合いだと思ってんだ。言いたい事があるってのは顔を見れば分かる。おら、遠慮せずに言ってみろよ」
(ふ、カイには敵わないな。では、一つだけ……)
俺は何時にもまして真剣なデシウスに喉をゴクリと鳴らす。
そして、デシウスの口から放たれた言葉は!?
(カイ、絶壁も中々に良いものだぞ?)
あ˝~、俺の先祖様が完全におかしくなっちまった……。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
そしてご報告とお願いです。
まず皆様の応援のお陰で日間ランキングに入る事が出来ました事についてお礼を申し上げます!
そして、これより上に行くためには更なる皆さまの応援が必要になります。
余りポイントポイントと言うのは意地汚く感じる部分もありますでしょうが、やはりポイントが上がると見てくれる人も多くなり作者のモチベも上がります!
まだ評価をしていない方は広告の下にある評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしてくれると嬉しいです!これは付け直しも容易なので気軽に押してくれると助かります!