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第四話 オークと少女

 


 生まれ育った街を出発して数日後。

 俺とデシウスは草原をひたすら進んでいた。


「あ˝~、そろそろ村かなんかねえもんかね。食料も底を尽きそうだが、何より水がねえ。喉がカラカラで干からびちまうぜ」


(ふむ、まあいざとなれば動物や魔物の血を飲んで喉を潤せばいい)


「うげ、魔物の血って飲んでも大丈夫なんか?」


(ああ、私も生前は何度か口にした。死ぬ程不味かったが死ぬよりはましだからな。それより、待望の村が見えて来たようだぞ?)


「お、まじで~?」


 デシウスの言葉に反応した俺は確かに遥か遠くの前方に小さな村を発見した。

 しかし、あの村なんか様子がおかしくねえか?

 煙とか上がってるし、悲鳴とかここまで聞こえてくるんだが~。


(確かにお前の言う通り何かが起きているな。おそらく、賊か魔物に襲われていると言ったところか。さて、カイ。あの村に向かうかそのまま放置するか、どちらの選択を取る?)


 俺はデシウスの言葉に少し驚き言った。


「へえ、ご立派なあんたの事だ。困っている者は見過ごせない、絶対に助けろとでもいうと思ったんだが、意外だね~?」


(ふっ、そんな綺麗事を言う気はない。全ての人間を守る、そんな事はこの世の誰にも出来はしない。私も、生前は何百何千もの人間を見殺しにした……)


「……あんたも苦労してんだな」


 ――と、無駄話はこれくらいにして。

 とりあえず、あの村に向かうとするか。

 実際、あの村が襲われてる状況ってのは悪くねえ。 

 あの村の窮地を救えば俺に感謝してくれるはずだ。

 そうすれば水や食料も分かてくれる可能性がある。

 ケケっ、そうと決まれば行くかね。


「【縮地十連】」


 足に力を入れ連続で縮地を発動させる事で、村まで数キロ離れていたはずの距離があっという間にゼロとなる。


(素晴らしい技量だ。生前の私と同等、それ以上かもしれん)


「ケケッ、褒め言葉どーも。さて、どんなもんかね~」


 そうして村の入り口で中の様子を見てみると、どうやら暴れているのは盗賊ではなく魔物のようだ。

 確かあの魔物は……。


(オーク、中級クラスの魔物か。カイの敵ではないな)


「だろうな、明らかに俺より弱ええ。それにしても……」


 俺の目の前で行われているのはオークによる村人への蹂躙。 

 男は持っている槍で串刺しにされていたり、頭に槍を突き刺しそれを振り回して遊んでいるように見える。女性は服を剥かれ欲望の対象にされ、その後殺されている。


「あ˝~、気分が悪りいな」

 

 そう呟く俺の視線の端で、新たにオークの犠牲になりそうな村人の少女がいる。

 オークは鼻息を荒く少女を下種な目で見る。

 少女は顔中から涙や鼻水を垂らしながら必死に叫ぶ。


「誰か、誰か助けて!!」


 少女の叫び声にオークは更に興奮する。

 弱った者をいたぶる快感は魔物にも存在する。

 そして、オークの手が少女に伸びようとした時。


「そこまでだ。死んどけゴミが」


 オークの分厚い首を魔断剣で真っ二つに切り裂く。

 余りの剣速に首を斬られたオークは少しの間、自分が死んだと認識できずに瞬きを何度かして目障りだったので、オークの頭を足で踏みぬいた。


「あ、ああ……あなたは?」


「俺はカイ。通りすがりの剣神だ」


 俺がそう言うと少女は剣神?と首を傾げる。

 どうやら剣神のという名に聞き覚えはないらしい。


(何と……。昔は剣神の名を知らぬ者などいなかったのだがな)


「ケケッ、まあ時代が違うわな~。さて、そんじゃとっととオーク共を殲滅するとするか。おい、あんたはここから動くんじゃねえぞ?」


「は、はい。分かりました……」


 少女はこんな状況ながら冷静に俺の言葉を聞き入れた。

 その様子に俺は満足して、残った大量のオークを殺しにかかる。


「さて、お掃除の時間だァ。【点々斬首】(てんてんざんしゅ)


 俺は縮地を連続で使いオークの首を次々と落としていく。

 全てのオークの首を落とすのに、三十秒も掛からなかった。

 これを見た少女は信じられないものを見たといった感じで呆然と呟く。


「す、凄い。こんな魔法は初めて……」


「あ˝~、悪いがこれは魔法じゃねえぞ」


「――ヒッ!」


 少女はいきなり目の前に現れた俺に驚き悲鳴を上げる。

 おいおい、助けたのに怯えられるのか。 

 あ˝~、まあ血だらけだし仕方ねえか。

 しかし、返り血を浴びるとは俺も精進が足りねえな。

 もし同じ技をデシウスが使えば返り血など一滴も浴びねえだろうな。


「そんな、魔法を使ってないなんて……」


「嘘じゃねえぞ? なんせ俺は魔力を持ってねえからな~」


「――え、魔力を持ってない?」


 俺が魔力を持ってないと話すと少女の目は一瞬だけ下の者を見る目に変わる。

 しかし、少女はすぐに自分が助けられた事を思い出し、必死に頭を下げた。

 俺は少女の謝罪に手を振り言った。


「別に気にしてねえよ。それが普通の反応だ。いや、今までと比べれば百倍はましだな。それより、俺は名乗ったんだ。あんたの名前も聞いていいか?」


「は、はい。私の名前はフェリスです」


「そーか、良い名前じゃねえか。んでフェリス、お前に残念な知らせだ」


 俺はフェリスに村の人々はお前を除いて全て死んでしまっていた事を話す。

 

「私以外……お父さんやお母さん、おばさん達も……」


 フェリスは震える体で何とか立ち上がり廃墟のようになってしまった村の中を歩く。そして、自分の両親を発見したのだろうか、両の目から大粒の涙を流し大声で泣き続けた。


(遺体が綺麗に残ってただけましかもしれんな)


「まあ、大半の遺体はただの肉塊になっちまってるからな」


 しかし、このまま放置して行くには何か気分が悪りいな。

 そう考え俺はオークに殺された村の住人達を地面に埋めていく。

 墓も何もねえただ埋めるだけだが、放置しておくよりはましだろう。

 そして、残りの遺体がフェリスの父と母だけになり。


「カイさん、父と母もお願いします」


「あ˝~、もう別れは済んだみてえだな?」


「……はい、もう大丈夫です」


 表情を見る限りフェリスはただ強がっているだけ。

 だが、いきなり両親を含め村の住人全てが死んだこの状況で、強がれるだけでも大したもんだ。


(ああ、この少女は心が強い)


 デシウスの言葉に俺もそうだなと頷く。

 そして、俺とフェリスは無言のまま最後の二人を埋葬した。


「よし、これで終わりだ」


「――はい。改めてカイさん、オーク達から助けて貰ったばかりか村の住人の埋葬まで手伝ってもらい、本当にありがとうございました!!」


「ケケ、礼は受け取っておくが俺もタダで助けたわけじゃねえ。こんな状況で悪いが、俺の頼みを一つだけ聞いてもらうぜ~?」


「え、頼みですか?――はっ、まさか私の体を!?」


 何を勘違いしたかフェリスは腕で自分の体を隠す、

 へえ、両親を埋葬して吹っ切れたか?

 随分と元気になりやがったじゃねえか。

 最も、微妙に勘違いしてやがるがな~。


「クク、悪いな。俺はガキの体には興味がねえんだ」


「――ガ、ガキって!? 私はこれでも今年で十五歳ですよ!」


「あ˝~、十分ガキじゃねえか。あと五年は経ってから出直してきな~」


 俺とフェリスのそうした下らないやり取りにデシウスが口を挟む。


(カイ、私はフェリスのような少女も悪くないと思うぞ?」


「―――あ˝? デシウス、あんたロリコンだったのか?」


(ロリコン、という言葉の意味は分かりかねるが。生前から女性は背も小さく胸も控えめな方が好みではあったな)


 おいおい、何で俺は先祖様の性癖を聞かされてんだ……。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

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