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第二話 二振りの剣

 

「あ˝~、あの日から地獄の毎日が始まったんだな」


 当時、俺は剣神になれるというデシウスの提案に乗った事を毎日後悔していた。

 これは別に俺が甘いわけじゃねえと思う。

 誰だって、あの地獄の訓練を受ければ同じことを考える。

 そう思える程に体が慣れるまでは苦痛が伴う日々だった。


(はは、懐かしいな。確かにあの頃のカイは毎日弱音を吐いていた)


「ケケ、吐いてたのは弱音だけじゃねえ、血反吐もだがな」


(あ、あれは私も少しやり過ぎだったと反省しだろう?)


「少し、じゃねえと思うがな~」


(く、だがカイは見事に私の訓練に耐えてみせたじゃないか。そして、今では本当に立派になった。感動で涙が溢れてくるよ)


「いや、あんた一応霊体なんだから涙なんてでねえだろ。てか、俺に技を全て教え終わった時点で満足した感じで消えるとこだったじゃねえか。何でまたこの世界にいるんだよ」


(うむ、それは私にも分からんが、まあ細かい事は良いではないか。これから家を出るんだ、一人より二人の方が楽しかろう?)


「はん、まあ退屈はしねえで済みそうだな。――と、さっさと出て行かねえとまた親父にネチネチ言われちまう。そろそろ行くとするか」


 俺は少量の食料と水を袋に詰め込み部屋を出た。

 そして屋敷を出ようとしたとき、デシウスが待ったとかける。


(カイ、屋敷を出る前に裏の倉庫にいけ)


「あ˝? あそこは使い道のねえガラクタしか置いてねえぞ?」


(いいから行くんだ。私からの贈り物があるはずだ)


 へえ、剣神さんから送り物か

 興味はあるな、行ってみるか。

 そう考え裏のオンボロ倉庫へ向かう。

 そしてもう数か月は開けられた痕跡もない扉を強引に開け、埃っぽくゴミが散乱している倉庫の中へと入る。ケケ、汚ねえな~。


「おい、こんな場所に何があるってんだ?」


(――――これだ、カイ、こっちに来い!)


 何かを見つけたのか必死に叫ぶデシウス。

 俺は心の中でこんなゴミだらけの場所に置いてある贈り物とか、絶対碌なもんじゃねえんだろうなと思いながら、デシウスの示した場所へ向かう。


(やはり残っていたか、懐かしいな!)


「おいおい、一人で勝手に興奮してんじゃねえよ。―――で、その箱の中身があんたの言ってた俺への贈り物ってやつなのか?」


 デシウスの目の前にある無駄に大きな古びた箱。

 確か、以前親父に自慢されたな。

 昔の先祖が使ってた武器だったか? 

 

(そうだ。この箱の中の二振りの剣は生前、私が愛用していた物だ)


「ふ~ん。でもよ、これ開かないぜ?」


 確か親父の話だとこれまで様々な手段で箱を開けようとしたが、全てが無駄に終わったと聞いた事がある。しかし、俺の言葉を聞いてもデシウスは自信満々で。


(大丈夫。お前なら開けれる。カイ、そこの鍵穴にお前の血を垂らしてみろ)


 鍵穴……ああ、これか。

 しかし、血を垂らせとか怪しい儀式みてえだな~。

 まあいい、とりあえず言う通りにしてみるか。

 俺は親指の皮を歯で千切り、鍵穴に血を垂らす。

 すると古びた箱は勝手に開いていく。

 そして、中から二振りの剣が現れた。


(おお、懐かしき我が剣よ!)


「これがあんたの使ってた剣か」


(ああ、その通りだ! 魔断剣ネビウスと聖光剣ユミル。もう二度とこの目で見る事など叶わないと思っていたが、カイ、お前のお陰で再び目にする事が出来た!)


「そりゃ良かったな。で、俺から見ればごく普通の剣にしか見えないんだが、あんたが愛用してたって事はそうじゃねえんだろ?」


(勿論だ。まず魔断剣ネビウスはその名の通り魔を切る。つまり、魔術などの類はネビウスに触れた瞬間、跡形もなく消滅する)


 ほ~、その話が本当ならかなり強力だ。

 魔術至高主義のこの国において最高のカウンターになる。


(次に聖光剣ユミルは思いを込めて相手を切る事で、相手が負っている怪我や病を癒す事が出来る。勿論、思いを込めなければ普通の剣としても使える代物だ)


 へえ、こりゃまた便利な剣だ。

 つまり、回復薬要らずって事だろ? 

 いいじゃねえか、怪我や病の心配が要らなくなったのはでけえ。

 俺は一文無しだからな。

 もし怪我や病になったら終わりだったからな。

 ケケ、気に入ったぜこの二振りの剣。


 俺は箱から二振りの剣を取り出しそのまま腰に装着した。

 そんな俺の姿を見てデシウスは満足気に頷き。


(流石は剣神の名を継いだだけはある。よく似合ってるぞカイ)


「ケケ、そりゃど~も」


 さて、あんま長居すると親父や使用人達に怪しまれるな。

 とっとと屋敷を出るとするか。

 今度こそ俺とデシウスは屋敷を後にした。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

少しでも小説が面白い、続きが読んでみたいと思って頂けたなら、ブックマークを付けて貰えたり下の【☆☆☆☆☆】で評価ポイントを付けて貰えると凄く嬉しいです!



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