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第十七話 寂しさ


 【青龍の息吹】とのいざこざが終了した俺達はそろそろ素材の鑑定が終わっているだろうと思い、ゴイルの元へ向かう。


「おうおう、丁度全部終わったところだぜ。それにしても、お前ら騒がしかったな~。特にカイ、あんたは凄腕だったんだな!!」


「いや、それ程でも―――あるな」


「ええ! そこは謙遜するところでは!?」


「フェリス、俺は謙遜ていう行為が嫌いだ。何でわざわざ自分を下に見て話さなきゃならねえんだ? 俺は自分に正直に生きていくぜ~」


 俺の言葉にゴイルはウンウンと何度も頷き。


「はは、俺もカイの意見に賛成だ。探索者は自分の実力に正直でいい。じゃねえともしもの時に情報が錯乱する。それに、謙遜ってのは一見立派な行為に見えるが、それも行きすぎれば嫌味に変わるからな」


「……あ˝~、俺もそれが言いたかった」


「それは絶対に嘘でしょ!! カイさんは絶対にそんな深くは考えていない! 全く、正直に生きるとか言って早々と嘘をつかないでくださいよ!!


「ケケ、勘違いしてんじゃねえよフェリス。俺は自分に正直に生きるとは言ったが、他人に嘘をつかねえとは言ってねえぞ~」


「――き、詭弁だ」


 呆れた様子で俺の見るフェリスに対し、ゴイルはがはは、お前らは面白いなと大きな声で笑った後、俺達に鑑定結果を伝える。


「気になってるだろう鑑定の結果だが、全部で金貨二枚と銀貨九枚だ」


 ほお~、金貨二枚と銀貨九枚か。

 ……で、これ多いのか少ないのかどっちだ?

 屋敷に閉じ込められてた俺には分からねえわ~。

 とのんびり考えていると隣のフェリスが俺に叫ぶ。

 

「カ、カイさん! なにボ~としてるんですか! 金貨二枚ですよ!?」


「あ˝~、それ多いのか?」


「当たり前です! 一般的に上級探索者の平均的な日給が銀貨五枚前後と言われています! その稼ぎを私達は余裕で超えてしまっているんですよ!?」


「へえ、良かったじゃねえか。いい宿に泊まれそうだな~」


「ええ、その通りです! 今日の稼ぎだけで相当な高級宿に数週間は宿泊できます! もう、カイさん最高ですよ! ぐへへ~~」


 予想外の稼ぎに喜びで顔を歪ませるフェリスを後目に、俺はゴイルに低階層でよくこんだけ稼げたもんだな~と話しかけた。


「まず素材の量が尋常じゃなかったのが一つ。そしてもう一つは魔核の状態が他の探索者の持ち込みに比べ、圧倒的に綺麗だったからだ」


「そうなのか?」


「ああ。普通、魔術を打ち込まれた魔物の魔核はかなり損傷するもんだが、お前らが倒した魔物の魔核は傷が付いてたとしても、驚くほどに綺麗だった」


 ゴイルの言葉に俺は魔力がなく普通の剣術で魔物を仕留めた事を話し、それを聞いたゴイルは成程と顎に手を当て。


「魔術を使わずに攻撃すれば必要以上に魔核は傷つかねえか。新しい発見だ。もっとも、現状、お前以外にこんな芸当は無理だろうけどな」


「ケケ、そんじゃ今のうちに金儲けしねえとな~」


「ああ、俺達も上質な魔核を納品して貰えるのは助かる」


 そう最後に言葉を交わし、俺達は金貨二枚と銀貨九枚と受け取り、探索者組合を後にした。


「そう言えばフェリス、無事に金が手に入ったのはいいけどよ~、泊まる宿に心辺りでもあるのか? 今から探すのは面倒だぜ~」


「ふふ、ご心配なく。ちゃんと目星は付けてあります!」


 腰の手を当て自信満々でそう言い張るフェリスに黙って付いていくと、到着したのは俺の実家に迫るのではないかと思える程の高級宿だった。


「おいフェリス、くっそ高級そうだが大丈夫か?」


「勿論、この宿は見た目、内装、食事、全てが高レベルですが意外とお値段は良心的なんです。まあ、一般の宿と比べると一線を画す値段ではありますが」


「――お前、いつそんなもん調べた?」


「以前にクエイクに来た時ですね。あの時から一度は宿泊してみたいと思い何度か下見してたんですよ。まさか、こんなに早く夢が叶うなんて!!」


「あ˝~、そりゃ良かったな~」


 そう適当に返事し俺とフェリスは宿アリステラへ入っていく。


「いらっしゃいませ。本日は二名様での宿泊でしょうか?」


「は、ははははい。二名様です!!」


「畏まりました。では、一人部屋を二つか、二人部屋を一つ、どちらがご希望でしょうか? お値段は二人部屋の方がお得になっております」


「ふ、ふふ二人部屋でお願いします!!」


「畏まりました。では二人部屋一泊、銀貨一枚になりますが、お二方は何泊をご希望でしょうか?」


「え、えと、カイさんどうします?」


「あ˝~、とりあえず五日くらいでいいんじゃねえか?」


「わ、分かりました!!」


 そう言いフェリスはお金を取り出そうとするが、緊張から手が滑り銀貨五枚が宙に舞ってしまう。俺はため息を付きながら、宙に舞う銀貨五枚を掴み取り。


「たく、緊張し過ぎだ。ほれ、五日分だ」


「……あ、はい、確かに受け取りました」


 受付の女性は俺の早業に少し驚いた様子だったものの、そこは流石のプロ、瞬時に表情を元に戻し、宿の説明、食事の時間など丁寧に説明してくれた。

 その後、俺達は部屋に案内され食事の時間まで適当に時間を潰し、数時間後には見るからに豪華な食堂で夕食をご馳走になっていた。


「カ、カイさん、物凄く美味しいですね!!」


「ケケ、確かにこれは美味いわ~」


 生憎、俺には何の素材が使われているとかは一切分からねえが、それでも丁寧に調理されている事くらいは分かる。流石は高級宿ってとこか。


(ふむ、こういう時は体がない事に不満を感じてしまうな)


「あ˝~、まあ我慢してくれや」


 体がなく俺達が美味そうに食事をしているところを見せられるデシウスは不憫と思うが、霊体で食事が出来るわけがねえからな~。

 その後、食事を大満足で終えた俺とフェリスは部屋に戻り、フェリスは部屋に入るなり大きなベッドに体を投げ、気持ちよさそうに横になる。


「はあ~、もう最高でしたねカイさん~」


「ああ、確かにお前の調べた情報に偽りなしだった。この宿は良い、五日と言わずクレイクにいる間はずっとこの宿でいいくらいだな~」


「あ、それいいです、そうしましょ~!!」


 俺とフェリスはそう簡単に宿の感想を言い合った後、フェリスは長旅の疲れと迷宮探索の疲れが同時に襲ってきたのか、す~と眠ってしまう。


「ケケ、おねむの時間か~。そんじゃ俺も――」


 俺も寝るか、そう思い寝ようとベッドに横になろうとしたところ、フェリスが寝息と共に、寂しげに何かを寝言で呟く。


「……お母さん、お父さん」


「――まだ、駄目か。まあ仕方ねえわな」


 実は、俺とフェリスがクレイクの来るまでの五日間、寝ている時は毎回のようにお父さん、お母さんとフェリスは寂しげに寝言を言う。

 迷宮に入る前に【青の騎士団】と揉めた時に分かっていた事だが、フェリスは完全には両親の事を吹っ切れてはいなく、心の中で求めているのだろう。

 

「それも当然か。あれから、まだ五日だ……」


 俺はそう呟きベッドから起き上がり、フェリスのベッドに近づき、前と同じ様に優しく頭やおでこを撫で続ける。するとフェリスの寝息が段々と穏やかなものになっていき、最後には俺の手を握り、小さく呟く。


「……カイさん」


「あ~あ、これじゃ俺ベッドで寝れねえじゃねえか~」


(ふ、お前なら座ったまま寝る事も容易い)


「ケケ、他人事だと思って。――まあ、別にいいか」


 俺の手を握り穏やかな表情で眠っているフェリスを見てそう思い、俺も座ったまま目を瞑り、色々あった一日が終わるのだった……。



今日は頭痛がやばい一日でした。

そして皆さまにご報告とお願いです!

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