第十五話 モンスターハウス
俺達の目の前に突如として出現した魔物の群れ。
その数はおそらく数百を超える。
俺は魔物の群れを前にへぇ~、見た事ねえ魔物がいるな~と呑気に言葉を漏らすが、隣のフェリスは口元を震わせ俺に告げた。
「まさか、こんな低階層にモンスターハウスが出現するなんて……。申し訳ありませんカイさん、これは完全に私の不注意です……」
「ん、どういう事だァ?」
俺の疑問にフェリスは早口で答えた。
何でもモンスターハウスは迷宮の各地に存在するトラップのような存在らしく、ボス部屋に擬態して探索者を騙し魔物の餌にするが、実は良く見るとモンスターハウスとボス部屋の扉は分かりやすい違いがあり、高ランクの探索者は殆ど引っかかる事のないトラップだとか。
しかし、モンスターハウスが現れるのは殆どが十階層以降でフェリスもまさか三階層で出るとは思ってはいなく、油断してしまったとか。
「あ˝~、けどイレギュラーは仕方なくねえか?」
俺の言葉にフェリスは首を横に振り。
「――多分、私はカイさんがいる事で安心して気が緩んでいたんだと思います。だから、扉の確認も怠ってしまった……」
ふふ、カイさんに油断するなと偉そうに言っておいてこのざま、私はどうしようもない馬鹿だったみたいですね~……。
泣き笑いのような表情のまま俺に懺悔するフェリスに、俺は少し腹が立ったのでフェリスの頭を乱暴に撫でまわして言った。
「そんな顔すんじゃねえよ。俺もお前に言われるまで確かに油断してたし、無知だった俺も悪い。この件は俺達二人の責任だ。お前一人を責めはしねえ」
「け、けど私は何の役にも……」
「魔物の情報、迷宮の情報、魔物の解体と売れる部位、荷物持ち、ほれ、言い出したらキリがねえほどお前は役に立ってるぜ。要は適材適所ってやつだ~。俺は戦うだけで知識はゼロ、お前はそれのサポート。完璧じゃねえかよ~」
俺の言葉でやっと元気を取り戻したのか、フェリスはふふ、確かにカイさんは異常な程に強いのに知識はないですよね~と笑っている。
「ああ、そう言う事だ。それに、お前はモンスターハウスに入った事を後悔しているようだが、俺は欠片も後悔なんかしてねえぞ~?」
「……え、それはどういう」
「よ~く考えてみろ。俺達は魔物素材を集めに迷宮に入った。そして現状、俺達の目の前には大量の魔物だ。ケケ、モンスターハウス様様じゃねえか~!!」
(確かに手間が省ける。カイの言う事も一理あるな)
「け、けど、流石にこの数はカイさんでも……」
「ケケ、フェリス、お前は分かってねえ~。いいか、雑魚がいくら群れようと、雑魚は雑魚、俺には絶対に勝てないって話だ~」
そう話すと同時に俺は腰の剣に手を当て、魔物の群れへ技を放つ。
「【斬空連破】」
腰の剣を居合の要領で連続で抜き放ち、複数の剣圧を魔物の群れへ浴びせる。
当然、魔物は剣圧を避けるすべはなく、ほぼ一瞬の間に数百はいた魔物の数が一気に半分、いや四分の一程にまで減った。
「え、ええ~……」
先程まで絶体絶命だと思っていたフェリスは俺の技を目の当たりにして、目を丸くし若干引いたような目で俺を見る。
「カイさん、あなたどんだけ化け物なんですか……」
「ケケ、いつもの調子が戻って来たみたいだな。そんじゃ、俺は残った魔物の掃除をしてくるから、解体する準備しとけよ~」
そう軽く言い残し、俺は残った魔物を斬りに行く。
それから数分後、残った魔物も倒し終えた俺達は協力して魔物の解体を行っていた。
「はっはっ、こんなもんか」
「うわ、よく剣で魔物の解体とか出来ますね」
「あ˝~、まあ剣は俺の体の一部みてえなもんだからな~」
(うむ、それでこそ剣神に相応しい)
その後、俺達はしばらく無言で解体を続けた。
何せ数百を超える魔物だ、相応に時間も掛かる。
そして、全ての魔物の解体が終わる頃には、フェリスのリュックは一杯になっており、今日の探索は三階層で終わりだな~と話していた。
「ケケ、今度はボス部屋だろうな~??」
「もう、やっぱりカイさんは意地悪です~……」
ボス部屋を前に先程の事を笑い話のように話す俺とフェリスはそのまま三階層のボスを倒し、無事に探索者組合へと帰還した。
「フェリス、素材の買い取りはどこでやるんだ?」
「えと、こっちです~」
先に歩き出すフェリスの後に俺は付いていく。
そうして歩く間にも大きめのリュックに素材を満杯にして歩くフェリスは否が応にも目立ってしまい、遠くで見ているアルエも目を見開いていた。
「お、久しぶりだなフェリス。こっちへ来てたんだな」
「はい、お久しぶりですゴイルさん!!」
フェリスが声を掛けたのは服の上から見ても筋肉質と分かる壮年の男性だ。
ケケ、見た目だけなら探索者と変わりねえな~。
俺がそう考えているとフェリスとゴイルは少し話をして。
「おいおい、三階層にモンスターハウスが現れたってのか。正直、信じられねえがフェリスが嘘をつくとも思えねえ。しかし、よくモンスターハウスに遭遇して生き残れたな? 上級以上の探索者でも命を落とす可能性もあるのに」
「それはカイさんのお陰ですね~!!」
フェリスはそうしてオークの群れに襲われて命を助けられた事、俺が異常な強さな事をゴイルと呼ばれる男性へ話していく。
「成程、剣神ってのは聞いたことねえがそりゃ凄いな。俺の名前はゴイルだ。組合では素材の買い取り担当だ。これから宜しく頼む」
「俺の名前はカイ、こちらこそ宜しく頼む」
そうして挨拶を終えた俺達は倒した魔物の素材を鑑定してもらう。
しかし、余りの量の多さにゴイルは少し目を見開き。
「おいおい、こいつは凄いな。中々これだけの量の素材を目にする機会はねえぜ。しかし、これだけの量となると少し時間が掛かるな」
悪いが少しその辺で時間を潰して来て貰えるか?
俺とフェリスは分かったと返事をして、一旦その場から離れる。
さて、何をして時間を潰すか。
二人でそう考えていると、視界の端で私にも何があったか教えて~と分かりやすく視線を向けてくるアルエに気付き、俺とフェリスは苦笑いしながらアルエの元へ向かうのだった。
気管支にご飯が詰まり咳が止まらなくなりました。
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