第十四話 クレイクの迷宮 一階層~三階層
ゴブリン三体を倒し素材を回収しようと近づく俺達。
「フェリス、売れそうな素材はあるか?」
「いえ、残念ですがゴブリンは素材は殆ど価値がないですね~。耳がほんの少し価値があるという話ですが、魔核だけ回収で問題ないと思います~」
「――ん、魔核? そりゃ何だ?」
「えと、魔核と言うのは全ての魔物に存在する核、私達で言う心臓のような物です。ゴブリンの魔核は数は溢れてますが、今回の物は傷も付いていないので売れると思います」
「へぇ~。てか、その話が本当ならお前の村でオークを倒した時、魔核だけ取っておけば一文無しにならずに済んだんじゃねえか?」
俺の指摘にフェリスは体をビクリと揺らし冷や汗をかく。
「ま、ままままあ、忘れていた物は仕方ないじゃないですか~」
そう話すフェリスに俺もこれ以上は追及はしない。
無知だった俺も悪いからなこの件は。それに、あの事件の後で冷静な判断をフェリスにしろというのは酷だろうと思ったからだ。
その後、フェリスがゴブリン三体の体から魔核を抜き取り、リュックの中へ入れた。
「ほお、随分と解体に慣れているもんだな」
「ふふ、以前、荷物持ちとして迷宮探索へ参加した時、何度も魔物の解体はやりましたからね。五階層までの魔物の解体はもうお手の物って感じです!!」
「ケケ、意外と頼りになるじゃねえか~」
「おお、カイさんが私を褒めるなんて珍しい事もありますねー!」
俺の褒められ余程嬉しいのか、フェリスはその小さな体でピョンピョンとその場ではねて喜びを表す。これに対しデシウスはしみじみと呟く。
(……愛らしいな)
「……お前、本当に大丈夫か?」
日に日におかしくなっていくデシウスを見ていると、アレを使う事に危機感を感じてしまう。出来るだけ使わないようにしねえとな~。
もし使えばフェリスに変な真似するかもしれねえ。
流石にフェリスが嫌がる真似をデシウスがするとは思わんがな。
ただ、俺の体で変な事をしてもらっても困るので念のためだ。
「ん~、どうしましたかカイさん、考え込んで~?」
気付いたらフェリスが下から俺の顔を覗きこんでいた。
あ˝~、顔だけはいいなこいつ。
体は完全に子供仕様だが。
「――いや、何でもねえ。先に進もうぜ」
「あ、了解です~」
そうして俺達は魔物を倒しながら一階層を奥へと進んでいき、数十分もするとボス部屋と思われる部屋の前へと到着した。
「カイさん、この先がボス部屋です」
「ほお~、一階層とは言え楽なもんだ」
「あの、一応言っておきますが、普通はこんなに早く進めませんからね?」
「そうなのか?」
「当たり前です! 確かにこの一階層は他の階層と比べ狭く道も単純に設計されていますが、それでも普通はこの何倍もの時間を掛けて進むものです! カイさんの魔物を倒す速さと周りの状況を索敵する能力が異常なんですよー!!」
「ケケ、散々苦労して血反吐を吐きまくって手に入れた力だからな~。さてと、そろそろボス部屋に入るとしようぜ~」
俺の言葉を聞きフェリスが扉の中央にある結晶に手を当てる。
すると扉がゆっくりと開きボス部屋へ入れるように。
まずは俺が入るか、そう思い中へ入ると部屋の中心に先程まで何度も倒したゴブリンと、ゴブリンの中心に一匹だけ体が大きな魔物が。
何だあの魔物は、俺はそう考えているとフェリスが叫んだ。
「あれは、ゴブリンナイト! カイさん注意してください、奴は通常のゴブリンより力も速さも数段上の中級クラスの魔物―――」
「【斬空滅破】」
「――えっ?」
先程から適当に放っている剣圧とは違い、空を斬るように思いを込め両腕で剣を振るう。結果、ゴブリンナイトの体は頭から真っ二つに引き裂かれる。
「あ˝~、中級クラスの魔物がこんなもんか~。まあ、考えてみればオークと同程度の魔物が強いわけがねえか」
そうボヤキながら俺は周囲のゴブリンを適当に剣圧で処理し、ボ~としているフェリスに早く解体して次の階層行こうぜ~と告げた。
「……あ、あれ、真面目に解説しようとした私の立場は?」
フェリスはそう呟き暫し呆然としながらも、魔核とゴブリンナイトの素材の回収だけは済ませ、俺達はそのまま二階層へ向かった。
そして二階層も探索も順調に進み、一階層とほぼ変わらぬ速さでボス部屋へ到着し、ボス部屋へ入り魔物との戦闘に突入した。
現れた魔物は空を飛ぶ五体の魔物。
その中の一匹は体も大きく獰猛な顔を俺達に向ける。
「あの魔物はプテラキング! 奴は空中から超音波を使い私達の平衡感覚を麻痺させ、その隙に大きなくちばしで敵を仕留める厄介な魔――」
「【斬空滅破】――終わったぞ?」
「……あ、はい。素材の回収、しますね」
何かもう、私は付いてくだけでよさそうですね~……。
そう呟き何故か虚ろな表情でプテラキング他の素材を回収するフェリスを後目に、俺は三階層は何か面白れえことが起きねえかなと考えていた。
その後、プテラキングの素材を回収した俺達は三階層へ。
そして、ある事件が起きた。
「あ˝~、退屈だわ~」
「カイさん、油断は駄目です!!」
(フェリスの言う通りだ。カイ、実戦経験の少ないお前は分からないだろうが、戦いに絶対はない。特に今のお前は自分だけでなくフェリスの命も背負っている。それを忘れるな)
あ˝~、確かに俺は緩んでたかもな。
失敗失敗、気を引き締め直すとするか。
「悪りいなフェリス、もう大丈夫だ」
俺の言葉にフェリスは安心したように微笑み、目の前のボス部屋の扉を開けた。しかし、いざボス部屋へ入ると俺達は違和感を感じた。
「あ˝~、ボスはどこだ?」
俺の言葉にフェリスはハっと目を見開き、大声で叫んだ。
「しまった!! カイさん、モンスターハウスです!!」
「――は? モンスターハウス?」
ボス部屋じゃねえのか?
そう俺がフェリスに聞く前に、勝手に背後の扉が閉まり、俺達の周りに大量の魔物の群れが出現した。
迷宮を進んでいきます!
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