第十三話 迷宮へ
「え~と、名前がカイで年齢が二十一、職業が剣神で魔力はなしと。よし、これでカイさんも探索者の仲間入りです」
「あ˝~、ご苦労さん」
そうしてアルエから探索者カードを受け取り項目を見てみると、先程言った年齢や名前、それと下級探索者という文字があった。
これについてはアルエは苦笑いして答えた。
「正直、既に実力だけで言うならカイさんは上級以上だと思うのですが、組合の決まりですので了承して頂けると幸いです」
「ケケ、別に文句はねえさ」
正直、肩書なんぞに興味はねえ。
迷宮に入れさえすればそれでいい。
「助かります。では最後に迷宮に入る前の注意事についての話です。基礎的な事はフェリスちゃんが説明したと思うので、カイさんに関係しそうな事柄だけ」
「頼むわ」
「まず前提としてカイさんは魔力なしで間違いないですよね?」
「ああ、完全にゼロだ」
「分かりました。では迷宮に入るに当たり魔力なしのデメリットについての話です。まず一つ目ですか、ボス部屋についての話になります」
ボス部屋、次の階層に進むための部屋か。
「まず、ボス部屋は扉を開くのに魔力を使います。それ故に、魔力なしであるカイさんは一人では絶対にボス部屋に入る事が出来ません」
「あ˝~、そいつは難儀だな」
「しかし、この点はフェリスちゃんが一緒に迷宮に潜る事で解決すると思います。彼女も少量ながら魔力を持っていますので」
アルエの説明を聞きフェリスも役に立つもんだと思いフェリスを見ると、ドヤ顔でピ~スをしていたのでイラついて頭を小突く。
「ギャッ!? 何をするんですいきなり!?」
「何かイライラしてよ~。まあ細けえことは気にするな」
「え、何この人、謝る気ゼロ何ですが、あと気にするなとかカイさんが言います? それ、確実に私の台詞ですよね?」
ケケ、やっぱフェリスは揶揄うと面白れえ~。
一応、後で小突いた事については謝ったけどな。
アルエも楽しそうにこの様子を見て、その後、再び真剣な表情に戻り、魔力がない二つ目のデメリットについての説明に移る。
「それでは魔力なしの方の二つ目のデメリットですが、迷宮内で転移結晶を使えない事になります。こちらは先程と違い、命を左右します」
「ほお~、説明してもらっていいか?」
「勿論です。まず迷宮は各階層の入り口とボス部屋の奥に転移門が設置されています。この転移門を使うと組合広場に戻ってくる事ができます。そして転移結晶は使用すると転移門と同じ効果を発揮し、同様に組合広場に戻る事が出来ます。この転移結晶は多少高価な物になりますが、使えばどこからでも転移可能という事で、殆どの探索者はこれを持ち合わせています」
「成程、そんな便利な物を俺は使えないってわけね~」
「その通りです。探索者に魔力なしが殆どいないのは、このことが理由と言っても過言ではありません。もし転移結晶を持っていればボスとの戦いで命の危機に陥った場合でも戻ってこれます。しかし、カイさんの場合は……」
「ボスを倒すか、俺が死ぬか、その二択ってわけだな」
「基本的にボス部屋からの脱出はボスを倒す事だけなので、そうなります。さて、これを聞いてもカイさんは迷宮に入りたいと思いますか?」
アルエの言葉を聞きフェリスは自分の事ではないにも関わらず、本当に心配そうな表情を俺に向けカイさん、大丈夫ですかと聞く。
俺はニヤリと笑いフェリスの頭を優しく撫でながら、心配すんな、俺は死なねえさとだけ告げた。
「ああ、俺は迷宮に入るぜ。大丈夫だ、これでも腕には多少の自信がある」
それに、迷宮に入らねえと宿代稼げねえからな~。
そう言葉を漏らすと真剣な表情だったアルエもふふと小さく笑い、なんかカイさんなら大丈夫な気がしてきました~と笑顔で言った。
(ああ、カイなら問題ないだろう。もしもの時は、私も力になろう)
ケケ、アレをやると体が痛くて敵わねえんだがな~。
まあ本当にもしもの時って話だ。
とは言え、一応フェリスには転移結晶を持たせておくか……。
フェリスまで俺に付き合う事はねえからな~。
「よし、それじゃ早速迷宮に行くとするか」
「わー、行きましょ~行きましょ~。―――あ、その前に、前に使ってたのと同じ大きさのリュックを借りていいですか?」
「いいわよ。はいこれ」
フェリスはアルエから身の丈の二倍程の大きさを誇るリュックを受け取り、そのまま背負う。これ、重くないのかねぇ~。
俺の疑問にフェリスは大丈夫ですと答え。
「私の使う魔術は物体の軽量化をすることができるんです」
「あ˝~、そりゃ荷物持ちに最適だわな~」
「はい、だからカイさんも遠慮なく魔物を倒しまくってくださいね!」
そして高級宿へレッツゴーです~。
そう言うフェリスに俺は苦笑いしながら答えた。
「ケケ、ご要望通り片っ端から殺していくとするか~」
「おお、その意気です! では、今度こそ行きましょう!」
そうして俺とフェリスは迷宮、一階層へ足を踏み入れた。
「へえ、ここが迷宮か。意外と窮屈だな」
見た感じ道も余り広くなく天井も近い。
適当に魔法など使ったら味方などに当たりそうだ。
まあ、俺魔法使えねえから関係ねえけど~。
「一階層はこんな感じですが、階層を重ねるごとに周りの風景や形は変わっていきますよ~。噂によると火山地帯や氷山地帯のような場所もあるみたいです」
「ほう、それは楽しみ―――と、敵だな」
「……え、敵ってどこに?」
「あ˝~、大体百歩ほど進んだ場所だな。数は、三つ。大きさは人間よりやや小さいか。まあ足音で分かるのはこれくらいかね~」
「――いやいや、足音でそれだけ分かるって異常でしょー!?」
「は? これくらい普通じゃね? なあデシウス?」
(カイの言う通り、この程度はできんと魔物との戦いに付いてこれん)
「デシウスも普通って言ってるぜ?」
俺の言葉にフェリスは疲れた表情で何か呟く。
「……有りえないです、探知用の魔術よりも精度のいい聴力だなんて」
「何をボソボソ言ってるか知らねえが、ご到着だぜ~」
俺とフェリスが無駄話をしている間に三体の魔物は目の前の角を曲がり、俺達の目の前に姿を現した。
魔物の姿は体の色が緑で耳が尖り腹が少しでている。
え~と、何だっけこいつ。
(ゴブリンか、最下級の雑魚魔物だな)
「あ˝~、そうそうゴブリンだゴブリン。はぁ、迷宮は入って最初の魔物がこいつらか。少し萎えるな。やる気でねえわ~」
「カイさん! そんな事を言ってないで戦う準備を!!」
「あ˝? もう終わってるけど?」
「―――はっ? 何を言って……」
フェリスが言葉を最後まで言い切る前に、前方にいたゴブリンの体が腹から上下に分かれ、悲鳴すら上げる事無く簡単に絶命した。
フェリスは顎が外れるか心配になるほど間抜けに大口を開け。
「……カ、カカカイさん、今、何を?」
「ん? 剣圧で斬っただけだが?」
「……いやいや、剣圧で魔物を斬れるわけないじゃないですか!? と言うより剣をいつ抜いたんですか全く見えませんでしたよ!?」
「ケケ、実際に斬れるんだから仕方ねえし、俺の剣が見えないのはお前の目が悪りいせいだ。それより、さっさとゴブリンの素材を回収しようぜ~」
もっとも、ゴブリンに売れる素材があるかは知らねえがな。
そう笑いながら進む俺をフェリスは暫し呆然と眺めているのだった。
迷宮突入~!
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