第十一話 決闘
後半、視点が変わります。
俺とフェリス、それにアプリやアルエ、ゲイルや【青の騎士団】の面々は修練場へ移動し、俺とゲイルは修練場の中央へ、その他は端へと移動した。
「フフ、まずは逃げ出さずによく来たと褒めておこうか」
「ケケ、別に逃げる必要がねえからな~」
俺の言葉にゲイルは分かりやすく顔を顰め、ヌル如きが偉そうな口をと俺だけに聞こえる声で言葉を漏らす。敵意籠ってるねぇ~。
「――まあいい、大勢の見る前で無様に床に転がるがいいさ。さて、それでは勝利条件の確認だ。一つ目が相手を動けなくすること、もう一つは相手に参ったと口にさせること。いいかな?」
「あ˝~、それで構わねえよ」
「フフ、では早速だが決闘を初めてしまおうか―――と、その前にアルエ君、君に決闘の審判を頼んでもいいかな。君ならば中立だろう?」
ゲイルの言葉にアルエは少し悩みフェリスの隣を離れ、修練上中央の奥に歩いて来る。そして俺とゲイルに向かって言った。
「それではこれより【青の騎士団】団長、火炎槍のゲイル様と剣神カイ様の決闘を行います。お二人とも、準備は宜しいでしょうか?」
アルエの言葉にゲイルは勿論と頷き、俺はあれ、アルエに剣神って言ったっけな~と考え、そう言えば職業に剣神って書いたっけと思い出す。
「あの、カイ様、準備は宜しいでしょうか?」
「――あ˝~、俺も大丈夫だ」
そして俺が黙っていたのを怖気づいたと勘違いしたのか【青の騎士団】の面々は俺を指さし、クスクスと笑い始めた。
「クク、あいつビビってやがる」
「無理もねえ、何せ団長は上級探索者だ」
「てか、剣神って何だよ。んなもん聞いたことないぜ」
「俺もだ。大方ホラ吹いてんだろ、馬鹿な奴だぜ!」
これ等の言葉に俺はデシウスを冷たい目で見て
「……あんた、本当に知名度ねえな」
(いくら時代は違うとは言え、そんな筈は……)
俺の言葉に落ち込んだ様子のデシウスを後目に、アルエが決闘の開始を宣言をし、俺とゲイルの決闘がいよいよ始まった。
「さあ始めよう。【火炎槍】」
決闘開始の合図と共にゲイルは頭上で槍型の杖を回し始め、魔法陣を展開し杖の先端部分を炎の槍のような形状へ変化させる。
俺はその光景に素直に感心した。
口だけかと思ったら、親父以上の練度か。
ケケ、少しは面白くなりそうじゃねえか。
「行くぞ、塵と消えろ」
杖を槍のように構えゲイルは地面を蹴り走り出し、俺の体の中心に杖の先端を向け、そのまま突く。
「おいおい、組合での殺しはなしじゃねえのか?」
仮に命中していれば命を奪いかねない一撃を俺は横に動いて躱し、すれ違いざまにゲイルにそう耳打ちした。
「フフ、安心したまえ。決闘中のやり過ぎは大抵事故で済まされる」
「へえ~、物騒な話だな」
「ああ、本当に物騒――だよ!!」
不意打ち気味に放たれたゲイルの杖が再び俺の腹部を狙うが、俺はそれを躱しゲイルの顔面に向け蹴りを放つ。
「――グッ、危ない危ない」
ゲイルは突いたばかりの杖を瞬時に手元に戻し俺の蹴りを防いだ。
へえ~、本当にやるじゃねえか。
俺の蹴りを食らって杖が折れねえとは。
上手く衝撃を流してる証拠だ。
扱いの難しい長物をゲイルは完全に自分のものにしている。
「フフ、私の実力に驚いているのかな?」
「まあ、そんなところだ」
「ほお、素直じゃないか。しかし、そう言うなら腰の剣をそろそろ抜いたらどうなのかね? 君は一応剣士なのだろう?」
ゲイルの言葉に【青の騎士団】の面々は団長の言う通りだ、その腰に付いている剣は飾りか何かか~などと俺を煽って来る。
まあそこまで言われたら抜くか。
もう少し普通に戦いたかったんだがな~。
そう考えながら俺は腰の剣を―――抜いた。
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カイが静かに剣を抜くと周囲の空気が一変した。
今までカイの事を煽っていた【青の騎士団】の面々は余りのカイの変貌ぶりに両手で口を押え、余計な事を喋らないように必死で黙る。
そしてカイの正面に立つゲイルは、今までの態度が嘘のように自信満々だった顔は青ざめ、生まれたての小鹿の様に体を震わせカイを見る。
(何だ、この化け物は……)
ゲイルがこう思ってしまうのも無理もないと思える程に、剣を抜く前のカイと剣を抜いた後のカイは別人、もしくは別の生物と思える程に変貌していた。
(人は、剣を持っただけで変貌するものなのか?)
無論、普通の人間が剣を持ったところで変貌などしない。
ただし、カイだけは例外だ。
幼い頃からデシウスに指導を受けたカイにとって、戦いにおいて剣とはもはや体の一部、手や足の延長と言っても過言ではない。
剣を握る事により剣神カイは完成する。
(……駄目だ。私では勝てない)
仮にもゲイルは上級探索者、お互いの力量を正確に把握するだけの眼力は持ち合わせており、自分では天地が引っくり返ろうとカイには勝てない事を悟った。
下手をすれば、殺される。
その答えに行きついた時、ゲイルの答えは……。
「審判、この決闘は私の負けだ」
ゲイルは自分の命を取った。
後で【青の騎士団】の面々に色々と聞かれるだろうが別に構わん。
自分の命が大切だ、そうゲイルは決めたのだ。
「ゲ、ゲイル様の降参宣言により、この決闘の勝者は剣神カイ様です!!」
審判のアルエの宣言により決闘は終わり、辺りは急な終わりに沈黙した。
そして決闘の当事者であるカイはと言えば。
「……は? え? 俺、剣を抜いただけなんだが?」
どうしてゲイルが急に降参などしたのか知るはずもなく、カイはどうして自分が勝ったのか混乱したまま、静かに決闘は終わった。
まずカイの全力戦闘を期待してた方はごめんなさい!
剣神としてのカイの全力はしばらく後になります!
そして最後にご報告とお願いです。
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