第八話 戦い
長くしたかったです。無理でした。
その日も雨が降っていた。
今日はお父さんが朝早くから出掛けている。冒険者の仕事らしい。
(昨日、シロが言ってたことと関係あるのかな?)
僕は、ずっと胸騒ぎがしていた。これから何かが起こる気がする。
(考え過ぎかな?今は雨だけど、少し外に出てみようかな)
家にずっといるのも体に悪いと思い、僕は外に出て村の様子を見ることにした。
「行ってきます、お母さん!」
「いってらっしゃい、雨に濡れ過ぎないようにね」
「分かった!」
お母さんと軽く言葉を交わして、家を出る。
(あれ?何か、雰囲気が暗いような)
外に出ると、いつもはおっちゃん達が客引きの為大声を出していたり、沢山の人が歩いて居たりするのだが、今はとても静かで人も数人のおばちゃんやお姉さんしか見当たらない。雨のせいかな?と思ったけれど、それにしては静か過ぎる。
僕は、ただ周りを見ながら歩いている。しかし、何処を歩いても店は殆ど閉まっていて、人通りも無いに等しい。あまりにも活気が無さすぎる。
僕は、開いていたお菓子屋のおばちゃんに理由を聞いてみることにした。
「おばちゃん!」
「エル君、久しぶりだねぇ。こんな雨の中ようこそ。今日は一人かい?」
「うん。ねぇ、おばちゃん。今日は何でこんなに人が居ないの?」
「それがねぇ、昨日に、森から魔物が何匹か出たらしいんだよ。全部倒されたから、今はもう大丈夫なんだけどねぇ。ただ、森の異常って話になって村の男連中が今日冒険者と一緒に調査しに行ったってわけさ」
「成る程」
魔物は馬鹿では無いから、獲物の住処に突撃するなどはしない為、森から出てくるなんて事はほぼない。
(だから、異常ってことなのかな?)
「エル君も、もしもの事があると行けないから早く帰るようにしなさいな」
「うん、分かった!」
「ほれ、お土産にこの砂糖菓子をあげよう」
「ありがとう、おばちゃん!また、来るね」
おばちゃんは手を振って僕を見送ってくれた。
僕は紙に包まれた砂糖菓子をポケットに仕舞い、帰路についた。
家の方に行くと、人と沢山出会うようになった。
その全員が必死に何かをしている。
僕は無意識に駆け足になっていた。嫌な予感がする。
家の前に人が集まっている。僕は人混みを掻き分けて進んだ。
「...お父さん?」
そこには全身を血で汚して倒れているお父さんがいた。
「ヤグンさん!夫はどうしてこんな事に!」
大声がした方を見ると、そこでは泣いているお母さんが若い男に掴み掛かっていた。
「すいませんっ、奥さん!ファルさんはっ、油断していた俺を守って!」
ヤグンと呼ばれた若い男は悔しそうな顔で、泣いている。
「お母さん、お父さんどうしちゃったの?」
体がざわついている。
「エルっ!お父さんはね、強い魔物と戦って怪我しちゃったのよ。でも、大丈夫。お父さんはっ、大丈夫、だから」
お母さんは涙ぐみながらも、僕を抱きしめてくれる。
「...っエ、ル」
「お父さん?」
「あなたっ!」
「...俺は、大丈夫だっ!だから、二人共逃げろっ!皆もだ!この村に沢山の魔族がっ、北の森から責めてきてる!」
その瞬間、集まっていた皆に緊張が走る!
魔族、それは人型で、どの個体もAランクからBランクの冒険者相当の力を持っている。そして、昔から人類と戦っている存在。
僕は標的を知る。
「でもっ!この村にはBランク冒険者が何人かいるだろ!Aランクだって!」
「数が多過ぎた!奴らは何十体も居たんだ!」
お父さんの代わりにヤグンさんが答える。
その言葉に数人の人は何処かへ逃げて行く。
しかしまだ沢山の人は残っている。
「それでも!あなたを置いては行けないわ!」
「俺は、まだ戦わないと、いけない!」
お父さんは血を流しながらも立ち上がる。
「あなたっ!駄目よ、無理しちゃ!」
「ファルさんっ!」
お父さんは森の方へ歩こうとする。
「ぐっ!」
しかしすぐに倒れてしまう。
そんな時、集まっていた一人の男が声を上げる。
「おい見たか、お前らぁ!この男は、こんなひでぇ傷を負っても立ち上がったぞ!対して俺らはどうした?魔族に怯えて、情け無く逃げ出して来ちまった。俺はこのまま逃げるなんてしねぇぜ。今度こそ、奴等に立ち向かってやる!」
その声によって、殆どの人が「俺も!」「私も、やるわ!」と声を上げる。
「ただなぁ、俺らは人間だ!どうしても怖えもんはある。此処で命を掛けられねぇやつは村の奴らの避難補助に全力を注げぇ!」
その言葉にさっき、声を上げなかった人も覚悟を決めた顔つきになる。
「よし、行くぞお前ら!」
「おぉ!」
「奥さんはファルさんを連れて行ってくれっ!俺らが魔族を抑える。ファルさん、今は納得しろよ!俺は死人を出したくねぇからなぁ!」
そう言って男、いや冒険者達は自分の役割を全うする為に走って行く。
「エル?待って、エル!何をするつもりっ⁈」
「待てっ...エルっ」
僕も冒険者達のように走り出していた。森へ、標的を殺す為に。
僕はお母さん達が見えなくなった所で跳ぶ。森の変な感じがする方へ。
直ぐに奴らを見つけた、僕は体勢を変えて直ぐ落ちるようにして、一匹潰しながら着地する。
戦場が静かになる中、僕は次の相手を見据えていた。
少し前に、こんな拙い作品ですがポイント評価をいただいていました。本当にありがとうございます。