第三話 白い女の子
いやぁ、なんかやばくなってる気がするなぁ!
あれから、一ヶ月が経った。
僕は食事を一人で食べたりするなど、家族に会うこと最低限にして、部屋に引き籠るようになった。
「...」
部屋でただ何も考えず、ぼーっとするだけ。
偶に外を眺める。最近は人を見ても特に何も思わなくなった。けれど、あの感情を思い出す。
そんな辛い目に遭うのに、どうしても外を見てしまう。心の何処かでは人が恋しいのか、それとも別の理由か。
今日もただ、外を眺める。
(あ、あの子だ)
よく家の前を通る白い髪の女の子。僕は何となくその子が見たかった。とても可愛いくて...これは一目惚れというやつかもしれない。
(あれ?おじさんも居る)
白い髪の女の子の隣には、僕に魔法を教えてくれた。近所のおじさんがいた。
二人は僕の家の前に来て、戸を叩く。
そして、少し経つと父が出て来て二人を迎え入れた。
(家に何の用だろう?)
僕は疑問に思いながらも少し興味が出て来て、会話を聞こうと部屋から出ようとした。
しかしその時、部屋の扉をノックされた。
「エル、少しいいか」
「...いいよ」
僕は少し戸惑いながらも了承の返事を出す。
そして扉が開かれるとそこにはお父さんと近所のおじさん、そしてあの子が居た。
「エル、紹介しよう、つっても一人は知ってるか、お前がよく一緒に遊んでるマルスさん」
「久しぶりだな、エル」
そう言われて、僕は会釈しておく。
「そして、もう一人はお前と同い年のいやぁなんつったらいいか「...冒険者Cランク...シロ」あっ、うんまぁシロちゃんだ」
僕は女の子、シロが言っていた事に驚いた。
まず冒険者は、冒険者ギルドという所に所属すれば誰でもなれる職業だ。仕事内容は色々、要は何でも屋みたいなものだ。
僕が驚いたのはそのランクだ。
冒険者にはランクがあり順に F,E,D,C,B,A,S,SS,SSSと上がっていく。
各ランクを上げるには試験が必要となり、その難易度もランクと同じ様に難しくなっている。
この中でも、F,E辺りは畑などの雑草回収や道の整備等の雑用が主な仕事で。
それ以降は魔物の討伐が主な仕事だ。
Cランクというのは冒険者の中でも割と強い方だとお父さんに聞いたことがある。
お父さんでもBランクで、正直Sランク以降はほぼいない為かなり高い方である。
しかも確か、Cランクへの試験では魔物を倒す項目があるというのも聞いた。
僕と同じ歳であんな怖い奴らを倒してるっていうのか?
「あー、エル?いや、その大丈夫か?」
「...何のこと?」
「冒険者とか聞くと、ほら、思い出しちゃうんじゃないかって」
「いや、それは大丈夫だよ」
「そうか、それなら良かった」
お父さんは安心したようだ。
「それでだなお前の魔法の適正について、シロちゃんに検査して貰おうと思ってな」
「シロ...さんに?」
「あぁ、彼女は実は無属性の魔法がかなり得意なんだ」
「無属性って確か、皆が持っているやつ?」
「そうだ。その中でも色々調べる『解析』って魔法があってな。それをやって貰おうと思って」
「何で、そんな」
「そりゃあなぁ、息子の夢を簡単に終わらせるのはあれだからな」
お父さんは少し恥ずかしそうにしている。正直に言って「もう魔法なんていい」って言いたいけれど
せっかく来て貰ったシロさんとおじさんを何もしないで帰って貰うのも気が引ける。
「それじゃあシロちゃん。宜しく頼む」
シロさんはコクリと頷き、僕の前まで来る。
「...手を、出して」
僕は右手を出す。そして、シロさんが僕の右手を両手で握る。
「『解析』」
シロさんの口から詠唱無しで魔法名が紡がれる。
その瞬間、僕の体に何かが流れ込んでくる。
僕は反射的にナニカでそれを押し返す。
「っつ⁈」
シロさんが驚いているが僕はそのままナニカで彼女を満たした。
すると、シロさんは落ち着いた。
「...終わった」
「シロちゃん、どうだった?」
「...何かはあった。けど、よくわからない」
「良かったじゃないか!エルには何かがあるってさ!」
お父さんは大喜びしてる。
僕は
「し、シロさんっ!い、いつから僕の、その手を握って!」
とてもドキドキしていた。
「?」
シロさんはとても不思議そうな顔をしている。
そしておじさんは、僕のことを険しい表情で見ていた。
あれ?エル君?君、どうしたの?