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俺がとんでもないものと関わった話!!  作者: カイム OTA
序章
13/16

第拾壱話 突然美人なお姉さんに割り込まれたので戸惑ってみる

「俺は……消さないよ。自分を消せるわけない……」

「……」


 目の前の俺が黙る。その表情は苦痛に耐えているかのように(しぶ)かった。


「待って。」


 突然声が聞こえた。右を見ると、そこには未来さんが立っていた。

 ……忘れてた。ここには未来さんと先輩もいるんだっけ。


「待って……。小波(さざなみ)くん、一つ聞くけど、あなたは今、目の前にいる『もう一人の自分』を消滅させるかどうかを葛藤(かっとう)しているのよね?」

「まぁ……もう決まりましたけど」

「だから待ってってば。あなただけじゃ、これからの人生を正確に描けないだろうから、私に手助けさせてよ」

「でも……今さらなにを? 消さない方を選べば、こいつは生き残って、俺の人生がちょっと大変になるだけじゃないですか」

「それなんだけど、私からあなたの選択肢を説明させて。その方が真実を見通せると思う」

「……まぁ、わかりました」


 一度した決意を再度確認するのは無駄な気がするが、今はこの人を信用しないといけない。俺は渋々未来さんの提案を飲んだ。


「良かった。じゃあ説明するね。まず、消さない方だけど」


 そういうと未来さんは間をおいて、真剣な声音(こわね)で話し始めた。


「今はいいわ。決断をしないで、つらい選択から逃れられる。自分が我慢すればいい、という結論も出てる。でもね、おそらく、あと数年するうちに自我が崩壊するでしょうね」

「……えっ?」

「『もう一人のあなた』は、今もあなたからエネルギーを奪っている。その存在は、じわじわと生者であるあなたの精神を(むしば)み、そのうち自我が崩壊する。崩壊した後は、そうね、よくて廃人、悪ければ死まであり得るわ」

「そんな……」

「まぁ、そっちを選んだあとに、どうしても辛かったりしたら、私も相談に乗ってあげるよ。夜景(よかげ)ちゃんも、もしかしたら助けてくれるかもね。でもいずれにせよ将来は暗いよ」

「……」

「で、次に消す方だけど」


 うろたえる俺をよそに、未来さんは話し続ける。


「あなたもわかってるとは思うけど、消せばすべて終わるわ。怪奇現象も、精神汚染も、私たちとの関係も。その代償として自分を一つ失うことになるけど、精神に影響は多分ないと思うよ。こっちを選べば元の生活に戻れるし、将来は明るいね。まぁ、私のお勧めはこっちかな」

「……」


 俺は……このままこいつを消さないでいいのか?

 自我が崩壊すれば俺もこいつも死ぬ。俺は唇をかみしめ、必死に抵抗することしかできない。


「で、でも、こいつは生きてるんですよ!消すなんて……っ!」

「じゃないとあなたが消えるよ」

「っ……!」


 分かっていた。というかもう分かってしまっている。最善策はこいつを消すことだ。でも、俺は……。

 拳を握りしめ反論を考えていると、正面から、見かねたかのように割って入る存在があった。


「もういいよ。正当化がどうとか言ったけど、悪かった。責任は問わないからさ、何も考えず、消せよ。正直、自分が苦しむ姿なんて見ていられない」


 そんな言葉を吐いたもう一人の俺は、瞳に諦観の色を滲ませていた。

 俺はそんな姿を見て(いきどお)りを感じずにはいられなかった。だって……!


「お前……! 自分がどうなってもいいのかっ!?」

「それは、お前も同じだろう!」

「……っ!」

「……やっぱお前と俺は同じだな。互いが互いを優先させようとしている。でもな、それじゃ問題は解決しない」

「で、でも……。でも……!」


 視界がうっすらと歪む。俺は泣きかけていた。だめだ。考えがまとまらない。脳が結論付けた最善策を、どうにかして論破しようとしている。答えなんて…出せない。



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