第玖点伍話 俺の独白に俺は黙って聞き入ってみる
「どういうことだ…?」
そいつは一拍おいて、背もたれに体重を預けると、俺をちらりと見た。
「知りたいか?真実を。」
それはもう一人の俺がしてくれた気遣いだったのかもしれない。このまま被害者のままでいるか、それとも加害者になるかの境界線。だが俺は躊躇いなく答えた。
「あぁ。教えてくれ。」
そいつはふん、と鼻を鳴らすと不愉快そうに語り始めた。
「いいだろう。その目に絶望が宿ることを期待しているよ。」
「まず、俺はお前の半身だが、お前と決定的に違うところがある。それは何だと思う?
「性格?いや、そんな人格を構成するような要素じゃない。
「それは、存在のありかた、だ。
「お前はそこに実体を伴って存在している。他人と会話できれば、手をとって握手をすることもできる。
「だが俺にはそれが出来ない。何故か。それは俺が実体ではなく霊体だからだ。
「お前が陽なら俺は陰。お前の霊的側面。精神体。それが俺だ。
「それと怪奇現象に何の関係があるかって?ふん、俺にしては鈍いな。
「ポルターガイストも幻聴も幻覚もすべて、『霊的現象』の一言で括れる。
「霊的現象…つまり俺の分野だ。ここまで言えばさすがに理解できるか?
「でもつい去年までは何にも起こってなかったじゃないかだと?当たり前だ。
「正確には4月7日までは、だ。俺がこうして自我を得るなんてことが起こるはずはなかった。
「4月7日に何が起こったか、お前は覚えていないだろ?
「そう、カギはその出来事だ。
「教えてやるよ。あの日お前は日本刀を構えた天命先輩と、そこに対峙するもうひとりの人間を見た。
「そう慌てんな。もう一人の人間の方は今は大したことじゃない。
「大事なのは、そいつが天命先輩と同程度の戦闘力を有していたということだ。
「その現実離れした光景を前にすっかり固まったお前は、とっさの流れ弾に対応できなかった。
「そう、そいつに捌かれた天命先輩の刃が、運悪く突っ立ってるお前に深々と刺さったんだよ。
「額にサクッと、な。そして一度生命は終わった。お前は死んだんだよ。
「だが物語はそこで終わらなかった。天命先輩によるなんらかの蘇生法でお前は再び生き返ってしまった。
「表現を濁すなって?仕方ないだろ。俺だって一度死んだんだ。その蘇生法は天命先輩しか知らねぇよ。
「で、その蘇生法のせいでその瞬間に分離した。俺とお前が霊的にな。それからだよ。怪奇現象が始まったのは。
「霊的に分離するということは、俺がお前の精神的、霊的な力を一身に宿すということだ。そうなれば、当然ものすごいパワーを持った俺が爆誕することになる。
「なんせ生者の力を宿してるんだからな。生霊みたいなもんだ。それにお前はもともと霊力が強かったらしい。よって現実世界にまで干渉できるほどの力を得てしまった。
「その結果がポルターガイストや幻聴だ。そこにいるだけで現実へ霊的に干渉してしまう。それが俺であり、お前なんだよ。」




