第玖話 俺と邂逅したので俺は俺と俺の話をしてみる
「め、面談…?」
俺が狼狽えていると、未来さんは席を立ち、そいつに席に座るよう促した。
意外にもそいつは素直に席に着き、その暗く濁った眼で俺の目をまっすぐ射抜いてきた。
「まぁまずは話してみてよ。お互いのことをさ。」
そういわれても…。とりあえず、こういう時の定石、天気の話でもしてみようか。
「えっと…。今日はいい天気だね。」
「…」
「…君、名前は?」
「…」
「…」
え、コミュ障?そこまで俺に寄せてんの?と、ちょっと恥ずかしくなってきたところで、向こうがやっと口を開いた。
「俺は誰だ?」
その声は酷くクリアで、空気など介さないでストレートに俺の耳に届いているかのようだった。
「誰だ、って…知るかよ。」
「俺の名前は小波彗。誕生日は7月8日。歳は17。私立上倉高校に通い、特に取り柄はない。6人家族。」
「いや待て待て待て」
「俺は…誰だ?」
再び投げられたその問いに俺はこう答えるしかなかった。
「それは…俺でしょ。」
「そうだ。俺は俺。そしてお前だ。」
「…は?」
「俺はもう一人のお前。お前の半身だ。」
不思議と、それは違和感なく腑に落ちてしまった。だが、そうであっても確かめずにはいられない。それが俺の性分だ。
「意味が分からない。じゃあ聞くけど、俺の最近読んだ本は?」
「人間失格を冒頭だけ。」
「じ、じゃあ昨日の晩飯は?」
「白米。」
「…夜の日課は?」
「妹に構ってもらうこと。お望みなら詳細を言ってやる。」
「俺だーっ!!!!」
一ミリも、寸分たがわず俺だ。なんの疑いもない。
しかし、こいつが俺なら、なぜ今正面に座っている?
未来さんは俺の悩みを解決する手助けとやらをしてくれるはずだ。
これがその手助けだとすると、もしかして…
「もしかしてお前、俺の周りで起こってる怪奇現象に関係があるのか?」
「…」
そいつは一瞬目をそらすと、再び俺の目をまっすぐ見据えて答えた。
「そうだ。むしろ俺が起こしているといっても過言ではない。」




