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ユーシャハシナナイ  作者: 日暮蛍
少女のお話。
2/23

冒険者は再び出会う。

「・・・・・。」

「ナナ?」

「・・・・・。」

「ナナったら!」

「へ!?な、何?どうしたの?」

「どうしたの?さっきからボーっとして。何かあった?」

「ううん、ちょっと考え事してただけ。何でもないよ。」


考えていたのはもちろん昨日のことだ。


昨日私は見たことのないアリの化け物に襲われ、食べられるかと思った。だけど突然アリの化け物は燃えてしまった。

それを見て呆然とする私に声をかけてくれた赤髪の人の姿を見た途端私は気が抜けたのか、または痛みで気絶してしまった。

そして目が覚めた時にはもう赤髪の人はいなくなっていた。それだけじゃない。アリの化け物に襲われた時の傷も綺麗になくなっていたのだ。


昨日のアリの化け物の事は夢とは思えない。

あの異質なアリの化け物に襲われた事も強烈な痛みも死の恐怖は今でも鮮明に覚えている。

そして、あの綺麗な赤髪の事も。

顔をよく見る前に気絶してしまい、目が覚めた時にはいなくなってしまった。


あの赤髪の人は、いったい誰だったんだろ。お礼を言いそびれてしまった。


「それでね、今度のお祭りではカルツォーネ騎士団団長のセイロリー様が挨拶をしてくれるかもしれないの!早くお祭り始まらないかなー。」

「お祭りはまだまだ先だよロロナ。いくらなんでも気が早すぎるよ。」


友達のロロナと話をしている今でもあの綺麗な赤髪の人の事を考えてしまう。

どうしても忘れられない。あの人はどこにいるんだろう。



『ギィィィ』



ギルドの扉を開く音が聞こえた。ここの扉は建て付けが悪いのか大きな音がなるので誰かが出入りをすればすぐに気がつく。

入ってきた人を見た私は反射的に声をあげた。


「あっ!」


赤い髪だ。

真っ赤で綺麗な、あの時見た赤髪と同じだ。

顔立ちは幼く背も低いことからまだ子供のようだ。服装はその小さな体系には少し大きめである。

私を助けてくれた人も、あんな感じだった気がする。顔をあまり見れなかったのでそこには自信はないが、あの髪はハッキリと覚えている。


「あれ、あの子って確か...」

「あの人だ。」

「えっ?ナナ、どこに行くの?」


今あの人は受付の方で担当の人と話をしている。受付の人と話が終わったら声をかけよう。何を話せばいいのだろうか。あの時助けてくれたお礼を言わなきゃいけないけどその前に挨拶をしよう。


「あ、あの!」

「ん?」


受付の人との話が終わったのを見計らって赤髪の少年に話しかける。

近くで見ると整った顔立ちをしていてとても綺麗だと思った。何故だかこの人の周りだけ空気が違う感じがする。


「何?」

「えーと、あの!こんにちは!」

「...こんにちは。」


あぁ、どうしよう。

挨拶はなんとかできたがそのあとはどうしよう。

あの時助けてくれたのがこの人とは限らないかもしれないから挨拶の次にお礼を言うのは変ではないかな?でもこんなに綺麗な赤髪の人が何人もいるのかな?

そうだ自己紹介。まずは自己紹介からだ。

私はまだこの人の名前を知らない。恩人かもしれない人の名前を知るのはきっと自然なことだ。


「わ、私の名前はナナっていいます。よろしくお願いします。」

「どうも。」

「そのー。あなたのお名前はなんていうの、ですか?」


あぁ、今変なことを口走っていないだろうか。初めて暴牛と戦った時以上に緊張している。

人と話をしてこんなに緊張するなんて、初めてだ。


「...名前は、」

「これはこれは。今注目を浴びている見習い冒険者君ではないか。」

「えっ?」


彼の言葉を遮り、突然私達の間に入ってきたのは立派な鎧を着た男性。

この人は一体誰なんだろう。


「誰?」

「...私の名前はオルトドール。この冒険者ギルドに所属する金の冒険者さ。」


オルトドール。

私も聞いたことのある有名な数少ない金の称号を得た冒険者。その中でも実力と実績がずば抜けて高いと言われている、らしい。

名前とその活躍は話で聞いたことはあるがこうして姿を見るのは初めてだ。


「ふーん。」


オルトドールの背中越しで見えづらいけど、私でも知っているくらいの有名人の名前を聞いてもピンときてないのか赤髪の少年の表情はさっきから変わず無表情だ。見ようによってはオルトドールになんの興味がないように見える。


「僕に何の用?」

「用というほどではない。挨拶に来ただけさ。君の素晴らしい活躍は私も聞いているからね。だから気をつけることだ。冒険者は危険な仕事だからね。」


そう言うとオルトドールは入口の方へと歩いていく。


「忠告はしたよ。」


その言葉を最後に彼はギルドを後にした。

彼、オルトドールの言葉が引っかかる。まるで調子に乗るなと言っているように感じた。


「アシバ。」

「...へ?」

「僕の名前はアシバ。」


アシバ。

それがこの人の名前。

嬉しい。この人の事を1つ知ることができた。


絶対に忘れない!




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