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第92話 手がかかる同級生だな


 勇者とガキに相談したのが悪かった。だが、ガキの言う通り、自分で聞いた方が早いんだろうな……。

 かー! 聞くかー!


 というわけで俺は、黒い鎧を脱ぎさり、黒い革のジャケットと黒いズボンを着用し、篭手だけをはめた。よし、アモンの家に行くか。


 俺は自分の借り家の近くにあるアモンの家に向かった。


 「きゃ~!!」


 家に着くと俺の近くにアモンが転がされてきた。そこへ覆いかぶさるように一つ頭のケルベロスが甘えてんのか、襲ってんのか分からない速度でアモンを下敷きにした。


 「げはぁ!?」


 すごい声を上げるアモンだったがまるで動じていないように上半身を上げるとケルベロスの頭を撫でた。


 「ガアアア!」


 「チャミちゃん~! よちよち~!」


 アモンの口から泡が見えるんだが、大丈夫なのか? このアホは。


 「おい、アモン」


 「あ~! シャロちゃん~!」


 「お前、口から泡出てるけど大丈夫か?」


 「これは私とチャミちゃんのコミュニケーションの賜物だから誇らしいよ~!」


 「意味は分からんがお前が良いなら良いんだろうな」


 引き気味に見てしまう俺だが、アモンが良いなら良いんじゃないかなというのは本当だ。昔から自分のしたいことしかしない女だったしな。


 「他の二頭は?」


 「今、お昼寝してるの~!」


 「そっか、なあ、アモンあのさ――」


 「あ~! 私、お菓子作ったの!本当は勇者様とアービスくんにお礼に作ったんだけど、作りすぎちゃったから一緒に食べよう〜?」


 「え? あ、ああ、良いけど、なんであいつらにお礼なんだ?」


 「私の相談に乗って解決してもらったの〜!」


 「へえ」


 もしかして、あいつら俺のためになにかしてくれたのか? いや、分からない。もしかしたら関係ないことかもしれない。


 「ほらほら、おいで~! チャミちゃん! 今日は終わり~!」


 「ガァ!」


 チャミと呼ばれるケルベロスは納得したようにアモンの借り家の裏に消えていった。


 「元気そうでなによりだな、俺見てもビビんなくなったし」


 前まで俺の顔を見たら借りてきた猫のような態度で大人しくしてたはずなんだが。


 「私がね~! 怖がらなくていいよ~! て言ってあげたの~!」


 「そんなの伝わらるのかよ、あいつらに」


 「ケルベロスは頭がいいんだよ〜!!」


 「あ、そだっけか」


 「うん! ほらほら、食べて食べて~!」


 アモンの家のリビングの椅子に座るとテーブルの上に木で編んだバスケットを置いたアモン。中には丸いパン生地で作った玉にいちごのジャムが塗られていた。


 「美味そうだな」


 「レシピ通りだよ~!図書館にあったの~!」


 「へえ……」 


 俺は篭手を外すと一つ適当に取ると口に放り込んだ。だが、俺は甘さではなくしょっぱさを感じ、無理矢理飲み込んだ。


 「おい! これ、しょっぱすぎるぞ!」


 「え~!?そんなはずないよ〜!」


 「味見したか?」


 「味見したら数減っちゃうも~ん!」


 「多く作りすぎたんだろ!?」


 「あ、そうだった! 今するね~!」


 「おせぇけど、食ってみろよ」


 ゆっくりとそのお菓子を手に取り、口に含んだアモンは顔の表情が固まる。


 「しょっぱいです~!シャロちゃん~!」


 涙目で俺に絶望したような事を言ってくるアモンに俺はため息を吐いて立ち上がった。


 「ほら、そのレシピと料理場見せてみろ」


 「わあ〜!ありがとう〜!」


 涙をふいて喜ぶアモンを見てしょうがねえなという気持ちが湧いてくる。俺はアモンには甘い。学生時代に世話になったからかもしれない。


 「おい、調味料間違ってんぞ」


 「あ、ほんとだ~!」


 「これじゃなくてこれだろ」


 アモンの調理場に詳しい訳じゃないが、勇者のパーティーの借り家はほとんど勝手が似ている。俺は自分ならここに入れるなという棚を見つけ、案の定入っていた別の調味料を渡した。


 「わ~! これだったんですね~!」


 「ちゃんと見ろよ」


 「すいません~! 実践はまだまだで~!」


 「練習なら付き合うからよ」


 「シャロちゃん昔より女性的になりました~?」


 「俺が食いたいから覚えただけ」


 「あ、なるほど~! なら今度は一緒に一から作りましょう~!」


 「暇だったらな」


 こんなことを言ってしまうが誘われたら作っちまうんだろうなあ……。


 「シャロちゃんいつも暇でしょ~?」


 なんてお人好しな事を考えれば余計な事を言ってくるアモン。言い返せない。俺は武闘大会までやることがないのが事実だ。


 「俺は英気を養ってんだよ!」


 「図書館で一緒に働く~?」


 「あんな静かな場所に居たら退屈で死ぬ」


 この誘いも何度も受けたが、考えるだけ気疲れしそうだし、子どもに恐がられて図書館に来なくなるかもしれねえから断ってる。


 「一緒に働けたら楽しいのに~!」


 「本を語りたいだけじゃねえか」


 「バレました~?」


 「バレバレだっつーの」


 俺とアモンの会話は取り留めのないものばかりだが楽しいのも確かだった。


 ――――


 まだ邪魔者が居たとは。これは明日しかないな。やはり明日、あなたを手に入れる魔法を掛けることにするよ、アモンさん。

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