第68話 え?行ったことあるんですか?
第4章です。そういう店には行きますがそういうシーンはないです。
ケルベロス騒動から三日が経ったある日、クライシスさんが退院したと聞いて会いに向かう途中だ。ちなみにアニスに頼み込み、首輪は取ってもらえた。さすがにあの状態で会うのは気が引ける。後からアニスも来るらしいがまたこの前みたいに強制退場させられるのだけは勘弁だ。そう憂鬱になっていると中央街の王都の出入口に近い場所から声が聞こえた。
「なあ、クライシス、英雄辞めたなら行こうぜ」
「どこへだい?」
「そりゃ、お前、あそこだよ」
「ん?」
「わかんねえ奴だな!」
「君が何を言ってるのかが分からないのだ。すまない」
あれはクライシスさんとガリレスさんだ。結局ガリレスさんが金を貰った件は曖昧に終わってしまっている。どうやら、今はクライシスさんをどこかに連れていこうとしているようだ。クライシスさんに会う予定だったし、話しかけてみるか。
「何してるんですか?」
「お、アービスの旦那」
旦那ってあんた。居酒屋かなんかか。
「やあ、アービスくん。いや、ガリレスがどこかに連れていってくれると言うんだが、皆目検討付かなくて」
「え? どこなんですか?」
「お子様には早い場所」
「な!?」
ガリレスさんの軽く馬鹿にしたような態度に俺は少しイラッとしたが、お子様には早い場所と言えばやはりそういう場所か?
「ほら、クライシス行こうぜ」
「だからどこなのだ」
「こんな場所で堂々と言えるかよ」
た、確かに。こんな人通りが多い場所でそんな話はダメだ。
「ガリレスさん、もしかして……」
下半身を指してガリレスさんに確認を取ると、ガリレスさんの目が光った。あ、この人マジか。まだ昼間なんだけど。
「なんだよ、旦那の方が分かってんじゃねえか、クライシスも見習えよ」
「アービスくんも分かるのか……どこなんだい?アービスくん」
「え? あ、あのですね……」
俺はクライシスさんの純粋な瞳から逃れようと目を泳がせるが言わねばならないのだろうか。でもここでクライシスさんに教えずになあなあに連れていく方が悪いか。
俺は意を決してクライシスさんの耳元に口を寄せ、俺はヒソヒソと囁いた。だが、クライシスさんの反応は特にどうってことないような態度で「なるほど!」と手をを叩いた。そんなクイズ番組の答えが分かったような反応されるのも困るのだが。
「だが、あそこをなぜこの場で喋ってはいけないのだ?」
「は? お前、英雄辞めたからって何言ってもいいわけじゃねえぞ?」
「それくらいは分かっている。だがあそこを伏せる理由が分からない」
「行ったことあんのかよ?」
「あるぞ」
「え!?」
「え!? おい、アービスの旦那、なんて説明したんだ?」
まさかのクライシスさん、爆発発言により、ガリレスさんが俺に詰め寄ってきた。俺も驚いた。そういう場所に行くイメージがまったく湧かない。
「ただ、女の子といやらしいことをする場所ですと……」
「え? その説明でどこか別の場所をやつ居ないよな?」
「た、多分? でもクライシスさんかなりの天然入ってますし……」
「でもいやらしいまで言ってるんだぞ?」
「じゃあ、行ったことあるんじゃ……?」
「嘘だろ?? 俺も行ったこと無いのに……」
無いのかよ、高校生の同級生みたいなノリで誘ってるなと思ったらそういうことか。
「どうしたんだい? 行かないのかい?」
「行く気満々じゃねえか」
「クライシスさん、本気で行くんですか?」
「行こうと言ったのはガリレスだ。ガリレスに聞いてくれ」
「そうだけどよ……」
ガリレスさんはそれから少し唸ると、ある場所を向いて目を見開いた。
「よし、行こう」
「うむ、行こうじゃないか」
「じゃあ俺はここで――」
「何言ってんだよ、旦那もだよ」
「え!?」
「アービスくんも遠慮せず来るといい。金銭面なら私が出そう」
「いや、そういう問題じゃ……」
問題はアニスだ。バレたら皮を剥かれちまうぞ俺。
「えっと、俺……」
「あ、旦那、あの勇者に遠慮してるだろ」
「ぎ、ぎくう!」
「ぎくうてお前……安心しろよ、俺達マブダチじゃねえか」
「そういう問題なんですか? 後いつからマブダチに……」
「ん? 勇者様がどうして怒るんだい?」
確かに。付き合っている訳でもないのに怒られる理由はない。だが俺の危険アンテナがビンビンだ。
「ほら、行こうぜ、勇者パーティーの男同士だろ?」
「いや、ガリレスさんは違――」
「細かいこと言うなよ? な?」
細かいのだろうか。彼は一応、俺の中での要注意人物だ。
だが、行ってみたい気持ちが無いかと言われれば嘘になる。それにクライシスさんも行くようだし、ここは少し男気を見せるとしよう。
「……分かりました、行きますよ」
「お、いいねえ! 旦那!」
「よし、では行こうか」
こうして俺達三人はそういう場所に向かった。後でアニスに殺されそうだという気持ちを押し殺しながら歩いているととても生きた心地はしなかったが二人と喋っていると幾分かマシだったのでなんとかその場所に着いた。
【ヒールオアシス】
そう看板を建てられた店はこの王国で希少な風俗店らしい。どうやら昼もやっているようで行ったことのあるクライシスさんはとても楽しくさせてもらっていると言っていた。どれだけ来ているのだろうか……。
「ほら、入ろうぜ、クライシス、アービスの旦那」
俺はガリレスさんに急かされるように店の中に入っていった。




