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第51話 兄妹というものは難しいものらしい


 それから料理は山ほど来た。アニスは蜜パンだけだが、俺は懸命にメニューを見て安全パイを探し当てた。それはカラスの丸焼きだ。俺はそれを頼み、硬い肉を頑張って噛み砕いた。


 「アリゲーターはやっぱり食うのも美味いし、戦うにも最適で最高だぜ!」


 シャーロットさんは子どもの様にはしゃぎながらアリゲーターの丸焼きを食べていた。原型がほぼ残っているアリゲーターを食べるシャーロットさんは野生児そのものだった。


 「いや~! やっぱり幼虫さんはぷちぷちしてて美味しいです~!」


 アモンさんは虫が好きなのか、色々な虫の幼虫を食べていた。なるほど。ここにはゲテモノ料理が苦手な人が案外少ないんだな。チェーンさんはさっきのオーガの肉汁で懲りたらしく最初のテンションとは大違いだ。


 「……」


 エルちゃんは小さい口をもごもごとしながらムカデ焼きを食べていた。だが、どう思っているのか、その表情からはうかがえない。


 「さっきからうちのエルばっかり見てなんだい? 気に入ったのかい?」


 「いや、違いますよ、なんか不思議でつい」


 「まぁ、彼女はあれが普通だから気にしなくていいよ」


 「そうなんですか……」


 なんかああいう少女がワイワイしていないと言うのは違和感があるが、前世の世界とのギャップのせいだろうか。それなら俺は気にしない方が良いのかもしれない。


 「アービス! 僕の方を見ろ!」


 「はい!?」


 「よしそのままだ」


 俺はアニスを見て固まる。それを見てアニスは満足そうな顔をした。俺はもういいのかと思い、背けようとしたらリードを引かれ、戻されてしまった。


 「あのですね……アニスさん? そんなにリードを引っ張られるのは痛いと言――――」


 「ん? なんだい? 僕を見れて幸せだろ? それともあっちのお人形さんが良いかい?」


 「おいおい、うちのエルをお人形さんなんて……それくらい可愛いだろ?」


 「いや、君は黙っていてくれ」


 文句を言いたかったんじゃないのか!? お人形さんが褒め言葉だと思ったのか。アニスからして言えばお人形さんのようなつまらない女という意味だろう。俺もそう思っているからではなく、これまでのパターンから言えば俺を責める時に呼ぶ他人の事を何かに例える時はその人を貶める時だ。


 「さっさと行こう、商人、もう充分食っただろ、というかそろそろ自身の借りた屋敷に帰るのはどうだ?」


 「そう、邪険にしないでくれよ、私も君たちと遊ぶのを楽しみにしていたんだからな!」


 「そうか、護衛にはそこの年中暇人のシャロちゃんを付けてやる、ゆっくり休めよ」


 「人の話聞いてる??」


 「誰が暇人だ! 俺は暇じゃねえ!!」


 「暇だろ、槍を振るうしか能のないくせに、今日は槍も持っていないとは役立たずめ」


 「んだと! こっちはプライベートで急に呼ばれてんだ! こっちの時間を割いてんだぞ!」


 「こっちもだ! アービスと出かけていたのに!」


 「おめえはあのガキを犬にして遊んでただけじゃねえか!!」


 「君たち、雇用主はこっちなんだが!?」


 「あ~! あ~! あの! 虫は! カブトムシ!?」


 もう収集が付かなくなってきたぞ、最後の方、もう関係ないし。俺は適当に自腹で店主に払うとあのゆっくりとした口調で繰り出されるまたのご来店をを聞かずにそそくさと退店した。さすがにこのまま帰るのはまずいので店の外で待っている事にした。


 「あー、平和な学生時代が懐かしい」


 アニスは居たが、ナチと三人仲良く過ごせていた気がする。俺は昔の思い出に想いを()せて目を瞑る。


 「――――ちゃん」


 「――――ロエ!」


 ん? 聞き覚えのある声が聞こえる。俺は声の主を探して、歩き回っていると、トボトボと肩を落としたエア・バーニングさんを見つけた。


 「エア・バーニングさん?」


 「あ、ああ、アービスくん」


 元気がない彼を見るのは、あの料理勝負を決めたベンチ以来だ。どうかしたのだろうか。


 「どうかしましたか?」


 「い、いや、依頼が久々になくてね、妹と出かけていたんだが怒らせてしまったようで……」


 なるほど、あの妹さんか。やはりこの兄妹は上手くいってないのだろうか。


 「アービスくんは? 依頼はどうしたの?」


 「ただの観光案内に変わって、またシャーロットさんとアニスが喧嘩してしまって……」


 「彼女たちは元気が良いな」


 笑って言うエア・バーニングさん。そういえば少し離れすぎたか。どうしようかとゲテモノ料理屋がある方を無意識に向いてしまうがエア・バーニングさんは肩を軽く叩いてきた。

 

 「私の問題は私が解決するからアービスくんは自分の依頼に集中したまえ、私は大丈夫!」


 「わ、わかりました」


 「うん! では、私は妹に謝ってくるよ」


 エア・バーニングさんは調子を戻したように片手を軽く上げ、俺に背を向け飛んで行ってしまった。俺はアニスたちを怒らせないようにさっさとゲテモノ料理屋に戻っていった。


 「何をしていたんだ! アービス! 女と会っていたとか言うなよ!!」


 案の定怒られてしまった。エア・バーニングさんの事はなんとなく黙っておこうと思った。妹さんの事を言いふらすとまずいし、妹の方には恨みがあるが仕返しをするほど俺は腐っていなかった。

 


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