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第50話 またここかよ!


 勇者パーティーはエア・バーニングさんを除き、隣国の商人チェーンさんを護衛と言う名の観光案内の遊びに出かけた。

 

 「では、私は王国名物を食べに行くので失礼します」


 「ああ、楽しんでくれロックス」


 「……あんまり迷惑かけないでくださいよ」


 「私が人に迷惑をかけたことあるか?」


 「ありますよ。いっぱい。とにかく私は行きますから」

 

 「そんじゃあ、観光は任せたよ」


 「ええ、お土産を待っていてください」


 チェーンさんは去っていくロックスさんに手を振って送り終えると、こちらを見てニヤニヤしだした。

 それにしても、ロックスさん、速かったな。王城を出てすぐに失礼したな。


 「んじゃま、俺も別にチェーンと遊ぶのなんざ趣味じゃねえし、ここらで一抜け――――」


 「お前はダメに決まってるだろ。シャロちゃん」


 「んでだよ、こんだけ人数居たら一人くらい抜けても良いだろうが」


 「もう一人抜けたじゃないか」


 「ああ? ロックスめ、めんどくせえの押し付けやがって」


 シャーロットさんはロックスさんへの恨み言を呟きながらも諦めたのか、両手を後ろに回してやさぐれながらも付いて来てくれるようだ。


 「それでどこに行きたいんですか?」


 「うん? ここにはあるんだろ? 珍店が」


 「珍店?」


 嫌な予感がしてきたぞ。まさか、行かないだろうな。


 ――――


 そのまさかだった。ここは朝方、アニスと来たゲテモノ屋だ。二度と来る気は無かったのにまた来てしまった。


 「いら……しゃいませ……ここの……常連に……なりたい……んですか?」


 「いや、全然」


 即答してやった。相変わらずの女店主の暗さと謎生物のはく製や檻で埋め尽くされた店内。

 俺たちは人数も人数なので席を分かれて食事をすることにした。俺とアニス、チェーンさん、エルちゃんはカウンターに並び。アモンさんとシャーロットさんは店内に二つしか無い四人席に座った。


 「店主、アナコンダの皮焼きとオーガの肉汁を頼む」


 なんだそれは、アナコンダの皮焼きならまだ分かるが、オーガの肉汁ってなんだ。やつらはいつから食用になったのだ。だが、メニューには確かにあった。


 「わかり……ました……他は?」


 「僕は今朝食べているからな……では、大ハチの蜜パンにしよう」


 え、それは美味そうだぞ。ほんとだ。メニューに一つだけ、安置のように書かれているじゃないか。蜜パンが。俺もそれにしよう。


 「あ、俺も蜜パンで」


 「すいま……せん……蜜が……もうそこの……お客様で……切らし……ました……」


 「すまない、アービス。だが、僕の分をやるから君は他のを頼むが良い」


 「そうだぞ、犬君、私の奢りなんだ!別のを頼みたまえ!アニスちゃんももっと頼んで良いんだよ~!」


 「僕は少食だ」


 「可愛いな! この勇者可愛いな! でもうちのエルも可愛い!」


 「……」


 突然抱きつかれているエルちゃんはぼーとしているのか反応が無い。そういえば二つ頼んでいたが一つのはエルちゃんのだろうか。エルちゃんは反応が薄くて見ていて不安だ。


 「エルちゃん、具合悪いんじゃ?」


 「いーや? いつもこんなだよ、戦闘の時以外はね」

 

 雇用主の彼女が言うなら大丈夫かもしれない。一応、チェーンさんはエルちゃんの事可愛がってるみたいだし。無理な労働を強いているわけじゃなさそうだ。

 

 「おい、アービス?他の娘の心配などしてどういうつもりだ」


 誰か俺の心配もしてくれ。


 「あの……注文……」


 ――――


 「きえええええええ!!!!」


 そう叫びながら魔法具のフライパンや鍋の前に立って謎の煙を出させているのは店主だった。店主のこの光景は二度目だが、やはり黒魔術の現場にしか見えない。


 「すごいな! 王国! 半端ない!」


 店主半端ないって! てか? 半端なさ過ぎて吐血してないか心配になるレベルなんだが。


 「いけえ! 店主!!」


 もはや何の会なんだこれは。シャーロットさんがついに奇声を出す店主を応援し始めたし、アモンさんはずっと店に飾ってある動物のはく製とかに夢中だし。アニスは最初に出てきた蜜パンを食べて満足しちゃってるし。あ、蜜パンはあーんで食べさせてもらったが美味かった。パンの窪みに埋まっている蜜の中にハチの死体が丸ごと混入していた以外は完ぺきだった。


 「きいいえいえいえいえいえいえい!!! できあたあああ!!」


 出来たらしい。鍋の前に居たと言う事は汁物。オーガの肉汁か。ここの店主は切り替えが早く、料理が終わると元の店主に戻る。


 「どうぞ……オーガの……肉汁です」


 「いっ!?」


 俺は情けない声を上げてしまう。丸い皿に出されたのは確かに汁だが、オーガの牙や目玉が浮いていたのだ。マジで黒魔術で作り上げたものを出してるとしか思えないぞ。


 「え……おー! すごい!」


 一瞬、チェーンさん引いたよね? こんなに禍々しい料理とは思わなかったんだろ! ゲテモノ料理舐めんな!


 「ほら、エル、あーん」


 毒見だ。完全にエルちゃんが毒見をさせられようとしている。ある意味、パワハラではないのだろうか。だが、エルちゃんは虚ろな目でチェーンさんを見ると言われるがまま口を開けた。


 「よーし、良い子、良い子」


 かわいそうだけどここで俺が貰いますと言えば、アニスが怒る。

 そんなに僕以外のあーんが欲しいのか? とか言い出すに決まってる。だが、助けてあげたい。


 「あ、これ美味しいですね」


 俺は近くに用意されていたスプーンで素早くチェーンさんの机にある皿からすくって食べた。味はやはり良かった。だが……。


 「え? 犬君、私の勝手に食べてどういうつもりだい?」


 「いえ、見てたら空腹になってしまって……すいません」


 「美味しかったかい?」


 「はい」


 「そうか、なら良いさ」


 チェーンさんは毒見をされた事で安心したのだろう。特に責める事無く、エルちゃんに毒見をやめさせ、自身で食べだした。

 

 「そんなに空腹ならもっと頼め、アービス、下手したら間接キスになっていたかもしれないんだ、僕となら良いけど他は嫌だろ? 気を付けなね? ダメだよ? 欲しかったら僕に言ってね?」


 「お、おう、ありがとうアニス」


 俺は口に入ったオーガの髪を口元を隠しながら取るとマジで吐き気を堪えるのに必死だった。

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