第48話 僕はアービス以外信頼していないが、君たちはそうだな、路傍の石程度には認めている
「そうですね、私は、たとえ国があなた方から受け取り私に還元しようとしても私は受け取りません、今回は彼らだけの方がチェーンさんには良さそうですね」
チェーンさんの発言を聞いて、少し眉を下げてそう言ったエア・バーニングさんは俺とアニスとアモンさんの方を見て頭を下げると、シャーロットさんにもすまなかったと謝った。
「いや、俺は別に良いけどよ」
「そうか、シャーロットさん、ありがとう」
エア・バーニングさんは笑ってシャーロットさんの肩を軽く叩いた。シャーロットさんは少しいたたまれない様子だ。まぁ、喧嘩してこうなったから、自身を責めているのかもしれない。
「チェーンさんも私の意地で降ろさせてもらい、申し訳ない」
「良いよ、君は正直で素直な人なのは分かったから高得点さ」
「そうですか」
エア・バーニングさんはチェーンさんにそう言われて微笑むと、応対室の扉の方を向いた。
「あなたと仕事をしたかったが、運が無かった」
扉の横の壁を背に持たれていた強面のロックスさんがエア・バーニングさんに話しかけた。エア・バーニングさんは彼に対しても爽やかな笑みを浮かべた。
「ロックス君、私は君が居れば私は不要だとも思って降りる考えもある、彼らは強いから心配はしていないがよろしく頼むよ」
俺はあえて、声を掛けなかった。彼には長年の民からの報奨金は要らないというプライドがあるのだ。それを邪魔してはいけない。そう思った。
「噂には聞いていたが爽やかで実直な男だ、ただ私の任務には合わないが」
「で? 結局任務とはなんだ? 商人?」
「商人じゃなくてチェーンが良いなぁ?」
「僕は今日昨日会ったやつを信用しない、お前がエア・バーニングを信用しないのと同じようにな、ちなみに私が信用しているのはアービスだけだし、これからもそうだ」
あーあ、またそうやって喧嘩を売って……でも、他のパーティーメンバーも名前呼びだよな? 現にエア・バーニングさんのことエア・バーニングって呼んでたし、お披露目会だとアモンさんもシャーロットさんはシャロちゃんと呼ばれていた。
「ふーん、ならアニスちゃんにとって勇者パーティーのみんなも多少は信頼出来るんだ?」
指摘したのは俺ではなくチェーンさん。面白がって指摘したな。顔がさっきよりもニヤけている。
「え~! 私、信頼されてたんですか~!」
「おいおい、俺は信頼されててもシャロちゃんなんて呼ばれたくねえぞ、まぁ、信頼されてたのは嬉しいけどよ……」
みんな意外な真実に照れ始めるが、アニスはだんだん眉間に皺が寄っていた。
「黙れ黙れ! 君らを呼ぶときにいちいち役職名で呼んでいたら面倒だからだ!」
アニスは顔を真っ赤にして反論していた。こんなアニスは珍しいな。いつも俺以外には興味なしの癖にだ。だが、アニスの反論を聞いてもアモンさんやシャーロットさんは照れるじゃねえかとかそっか~! 良かった~! などの声を上げた。するとアニスは突然、立ち上がる。
「不愉快だ! まったく! 帰るぞ! アービス!」
「あ、おい、まずいだろ!」
拗ね始めてしまった。まずい、エア・バーニングさんに続いて俺とアニスまで帰ったらさすがに王様も怒るだろ。一応、王命だし。
「待って、待って、悪かったよ、ごめんごめん、でも本気で私たち、困ってるんだよ」
アニスに謝罪を述べながら許して~! と抱き着こうとするチェーンさん。アニスはすかさず避け、ため息を吐くと座りなおした。
「言ってみろ、商人」
「いや~! それが困ったことにね! 実はこの査定って元は別の大商会がやるはずだったんだけど、つい勇者パーティー見たくてさ、王様に頼んで変わってもらったんだ! でもその腹いせなのか、道中めっちゃ刺客に襲われてさ」
なんたる自業自得だ。興味本位だけで他社からの仕事を奪えばそりゃキレれられるだろ。それでこの世界だ。どんな刺客が来てもおかしくない。中には金でなんでも連中がごまんと居る世界だ。
「だから王国内で僕たちに守ってほしいのか」
「そういうこと! お金ケチっても仕方ないのと勇者パーティー見たいからもう雇っちゃえー! って」
面倒だな、さすがにその商会が王国内まで刺客を送り込んでくる可能性はあるだろう。だが、依頼は依頼だし、王様が金を受け取っているらしいから断れないか。
「そこの私兵だけでも充分な気がするが? 勇者パーティーが見たいだけならもういいだろ」
ロックスをチラっと見てそう聞くアニス。だが、チェーンさんは指を振って、チッチッチッとやり、自信満々に答えた。
「いっぱい居た方が怖くない!」
な、なるほど、一理ある! 確かにその考えは正しいが、よくそれで商人が出来たものだ。こうやって襲撃されるのも初めてじゃなさそうだし。まぁ、こういう人種は面白そうだからが付くからな。
「それに、ね? ロックスも観光したいだろ?」
「はい、もう襲撃は疲れました」
「エルちゃんも楽しみたいよね~?」
「……」
少女は答えない。だが、チェーンさんはだよねー! と言いエルさんを抱きしめた。エルさんはどこを見ているのか。目の焦点が合っていないように感じた。
「んじゃま、よろしく、勇者パーティーさんたち! ちなみに洞窟査定は明後日だから明日と今日は遊ぶぞ~!」
俺たちは商人、チェーンさんを護衛することになった。エア・バーニングさんが居なくて不安だが、まぁ、観光案内程度だろうと俺は軽く見ていた。




