第46話 お前の物だよ!
突然、俺は四つん這いになって犬のマネを強制されてしまい、挙句の果てにはリードを付きの首輪もハメられてしまい、社会的死を迎えようとしていた俺。それを見てアニスが満足そうにリードを握っている場面に最悪なことに勇者パーティーで一番の荒くれ者のシャーロットさんがやってきてしまった。
開幕、大爆笑だった。
「なんかのパーティーの見世物かぁ!? マジで笑うぜ! ふははっ!」
「豪快に笑っている所すまないが、用が無いなら僕とアービスの前から消えろ、脳筋女」
「用があるから来てんだろうが! 相変わらず口の悪い勇者だぜ」
笑っていたシャーロットさんは冷や水のような言葉を掛けられ、嫌味を言いながらしかめっ面をし出した。表情が豊かな人だな。
「この前見つけたキングオーガの洞窟を査定する隣国の商人が来るから、国内に居る間は護衛に就けってよ」
「なんで隣国?」
「なんでもキングオーガのやつら、隣国領土の連中だったらしくてな、穴開けてわざわざ王国領土まで来たらしいぞ、開けたのが運の尽きだったけどな」
手を軽く上げ、シャーロットさんは得意気にそう言いだすと、アニスは鼻で笑った
「君が倒したわけじゃないのに、よくそんなにも誇らしげに語れるものだ、プライドは無いのか?」
「うるせえ! 俺がその場に居たら俺が瞬殺してやったわ!」
「まぁ、シャロちゃんも脳筋同士の戦いで活躍していたし、気にするなよ」
「シャロちゃん言うなぁ! さっさとその面白芸やめて、王城に行くぞ!」
しびれを切らしたシャーロットさんはそう怒鳴ると、なぜか俺を睨む。俺は被害者なのに……。
「ふう、分かった、続きは後でだ、アービス」
「良し、なら首輪を――――」
「それはダメだ」
またもや即答だ。随分頭の回転が速い勇者様だ!
「なんでだよ!」
「君の所有者が誰であるかはその首輪を見れば分かるだろ?」
「俺は俺の物なんですが……」
「当たり前の事を言ってどうしたんだ?」
「あ、あのだからアニスのものじゃないような……?」
「へー」
声のトーンが低くなった。本当に困ったちゃんなんだから! 幼馴染の俺が取られるのがそんなに嫌なのか!?
「う、嘘、喜んで付けておきますよ」
「ふーん、でも君は僕の物じゃないんだろ?」
視線が冷たい。視線で俺を殺す気だ。俺の精神に体力があればすでに瀕死だぞ。
「おい、さっさとしろよ、ガキども」
急かすな! ここで下手に答えたらどうなると思ってんだ! 他人事だと思いやがって!
「どうする? アービス、僕の物じゃないなら外しても良いよ? 代わりに上と下の世話は任せてくれ、君が誰の物かを分からせてあげ――――」
「この首輪最高! アニスの物で良かった!」
もうやけくそだ! これで、下手にアニスの物じゃないと言い張って、アニスとのわくわく監禁生活が始まってみろ。マジで精神崩壊ルートしか無くなるぞ。
「良かった、僕の物だったね」
「そ、そうだよ」
アニスの顔に本物の笑顔が戻る。良かった。でもその代償で首輪はちょっと対価が大きすぎないか?
するとシャーロットさんがイライラした表情でアニスと俺を睨んでこちらに寄ってきていた。
「おい、ガキどもおせ――――」
「シャロちゃんうるさいんだよ!」
「なんでいつも俺は怒られなきゃいけないんだよ!!」
アニスの機嫌はシャーロットさんにより真っ逆さまに落ちていった。この二人はやっぱり犬猿の仲だ。
「ア、アニス、とりあえず王様の命令だし、行こ? な?」
「分かった、でも本当に後で覚えていなよ、アービス」
その笑顔はプライスレスで済む方法はありませんか? ありませんね、はい。
だが、アニスの機嫌は大分良くなったようで俺の腕にしがみつくと王城の方へ歩き出した。
「さぁ、行くぞシャロちゃん、なにをグズグズしているんだ」
「な、なんで俺のせいみたいになってんだよー!!」
後から文句と怒声を放ちながら付いてくるシャーロットさん、彼女もアニスの被害者と言えば被害者なのかもしれない。心の中で被害者同盟でも作ろう。
――――
王城と言えば象徴! 存在が輝く王城! だが、その王城の前にして輝く私!
私は王城の門前で胸を張っていた。背後には私兵の男女が二人。どちらも私にとっては軍勢一万に匹敵する! 私が選んだのだから当たり前だがな!
そんな私は自国で魔法具の商いをしているチェーン・ブリッジ。ブリッジ商会の一人娘だ。基本的には生活用魔法具を扱っているが、武器や防具も扱っている。
だが、今日は利権問題で来た。私が! 自国の王に頼まれ、わざわざ自国と王国の間にある鉱山洞窟の査定をしにわざわざ! 王国まで来た。なんて優しい私!
まぁ、本当は勇者様一行を見に来たんだけどー。
「さぁ、行くぞ! お前たち!」
「はっ!」
「はい」
私は門番に軽く挨拶をすると王城の中にこの清き足の一歩を踏み入れた! さぁ、戦うぞー! 勝つぞー! まぁ、共同管理が妥当だろうから勝ち負けないけどネ。




