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第37話 キングオーガはこんなものか


 俺とアニス、ジャックが開けた先は見たことのない鉱物が岩肌に突き刺さり、光り輝いている空間だった。だが、その場所に踏み入った瞬間、ジャックの上半身は吹き飛ばされた。

 俺とアニスは扉の外で、ジャックを吹き飛ばした相手を見て睨みつける。それはキングオーガ。知能が低い王だ。


 「キングオーガ、でかいな」


 思わずつぶやいてしまう俺だったが。仕方ないんだ。それくらいでかい。

 キングオーガは門の内側から俺たちをニタニタと見下ろしている。その身体は洞窟の通路より広い空間だったが、その天井に頭が付きそうになるほどの巨体なのだ。

 なるほど。確かに王って感じだ。にしても目の前で上半身を吹き飛ばされるのを見てしまい驚いた。ジャックの性質上、そう言う事もあると予測していたのかアニスは驚きさえしなかった。どこまで鋼のメンタルなんだ。

 だがまさか本当に不意打ちをしてくるとは。そのためのジャックだったが案の定ってやつだったな。だが、それよりも吹き飛ばされたジャックが異様すぎる。


 「ジャック、少し落ち着け」


 案の定だったのだが、上半身を吹き飛ばされたジャックの足がバタバタと地面に足を打ち付けているのが妙に怖かった。血とか変な汁とか飛びまくってるし……。これ、このまま生きていくとかじゃないよな?


 「アービス、ここは僕と君でやるしかないな、先兵は死んだ」


 「いや、元気に足を鳴らしてるけどな」


 漆黒は亡き者になっておらずとか言いたげな感じだな。足を地面に打ち付けるのが早くなった気がする。だが、アニスの言う通り、ジャックは役に立たなくなった。いや、そこまでは言ってなかったか。だが、戦えるのは俺とアニスだけだ。


 「キングオーガは扉の向こう側、僕が走りこんでキングオーガの頭に一撃食らわして倒そう」


 「おう! ん? お、俺は……?」


 「アービスは見ていろ、ただのオーガじゃないんだ、確かにでくの坊だし、王には向かないお山の大将だが、強いものは強いからな」


 あっさりと戦力外通告されてしまった。キングオーガもあんまりな言われようだが、俺もあんまりな待遇だと思う。事実なんだけどな!


 「ではここで死んだ先兵を悼んで……いや、僕の事を想像して待っていろ!」


 「だからジャック死んでないし! 後、待つならお前の雄姿を見て待ってるよ!」


 俺の言葉を聞いていたのか、いないのかは分からないが、アニスはゴスロリ衣装を揺らしながら、金色の剣を構えるとキングオーガに突撃していった。


 ――――ガアアアアア!!! 


 「うるさいな!」


 キングオーガの丸太を何十本も束ねたかのような剛腕がアニスの元へ降ろされた。アニスは降りてくる場所から横っ飛びに跳ねる。剛腕は地割れを起こさせるほどの威力だった。アニスが食らえばひとたまりも無いが、アニスは横っ飛びをして着地をし、そこから、右手をキングオーガの頭に向けた。


 「光球(ライト・ボール)!!」


 アニスが放ったのは上級光魔法の光球だ。それは目くらまし。キングオーガの顔面にその光球が直撃し、光球は爆発する。その光はキングオーガの目を潰した。人間なら一週間は目が見えなくなるがキングオーガの治癒能力は強力だ。すでに目を半開きにしていた。だが、アニスの動きは治癒能力よりも早かった。


 「ふんっ!!」


 アニスはキングオーガの太い右足を剣で斬り裂いた。足は半分ほど斬りこまれている。攻撃をくらったキングオーガは体勢を崩す。だがすぐに治癒能力で回復すると思ったのだが。


 「炎切(フレイム・オフ)


 アニスの詠唱と共に切り裂いた足の切断面から炎が噴き上がった。

 原理は分からないが、もしかしたら黄金の剣に付着していた炎魔法の残りカスを種火に魔法を掛けて爆発させたのか? あいつ、どんな物かよく知らないとか言っていたが、剣に炎を付与させたり、あんな使い方をしたり、知ってただろ、あいつ。


 ――――アガガガアアアアア!!!


 キングオーガは思わぬ攻撃を食らい背中から地面に倒れていく。巨体は広々とした空洞内に仰向けに置かれた。


 「キングオーガと初めて戦ったけど、呆気なかったなぁ」


 つまらなさそうにアニスはキングオーガの巨体に飛び跳ね、乗り上げると、心臓部に剣を突き立て、貫いた。


 ――――ガアアァアアアアア!!!!


 剣の刺さった部分から緑色の体液をまき散らしていくキングオーガ。そして、何度か痙攣し、いつの間にやら動かなくなっていた。

 やはり強い。勇者の自覚なんてないし、俺ばかりに依存している奴だが、実力はやはり勇者と言っても過言じゃない。俺が勇者になりたいって言ってたのが滑稽に感じた。


 「アービス!」


 そんな俺の思いを知らないアニスはキングオーガの身体から地面に飛び降りると、俺に向かって走り出し、抱き着いてきた。なんか、変な緑色の体液が付いていて気になったが、褒めてやりたい。それに俺はこいつを勇者だと認めてやりたい。


 「偉いぞ、アニス、帰ったらご褒美になんでもしてやるよ」


 「本当かい!? アービス! 大好き!!」


 優しく俺がそう言えば、アニスの顔は笑顔で満ちる。俺はアニスの頭を撫でながら、何をしてやろうかと考えていた。そして、いつになれば、隣で地団駄を踏むジャックの上半身が再生するのかも考えていた。いつまでも下半身だけが付いてくるのは怖すぎる。

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