第22話 彼らはバカなのか?
「いや~、匂いはクソだったけどこの味は最高だな~」
そう言ってあの激臭を王都にまき散らし、食べれるようになった巨大魚の切り身を食べながら満足しているシャーロットさん。
「ふむ、獲りにいった甲斐があったな! 勇者様の料理も美味しいですね!」
シャーロットさんの隣の席に腰かけ、高笑いをしつつ、魚臭くなったからやると言われ、アニスから貰った野菜炒めを食べるエア・バーニングさん。
「私も役に立つんですよ~」
ふふんと鼻を鳴らしながらフォークを揺らすアモンさん。
確かに何も考えて無さそうな彼女がこんな場面で活躍するとは思わなかったが、今回は悪手だったかもしれない。
「ほら、アービス、手が止まっているぞ、僕はまだ魚の切り身を少ししか食べていないぞ、なんなら口移しでもい、良いんだぞ?」
アニスはもはや、王都に異臭が放たれたことを忘れたかのように俺の片膝に座り、おねだりをした。俺はアニスのメンタルが欲しい。
「あ、あのさ、アニス、王都大丈夫かな?」
俺は他の三人に聞こえないようにアニスの耳元に顔を寄せ、小声でそう聞くとアニスはんんっと少しいやらしい声を出す。おい、こら、そんな声出すな。
「な、なんだい? そういうのはみんなが帰ってから……」
「なんで帰った後も内緒話みたいにしなきゃいけないんだよ」
「むう、で、なんだい?」
俺の態度に少々不満気ではあったが、話を聞く態勢を作るアニス。俺は小声でもう一度聞いた。
「王都にあんな異臭バラまいて大丈夫なのかって話」
「大丈夫だろ、僕らだってバレるわけがない、僕たちは勇者パーティーだぞ?」
なぜかドヤ顔でそう言う姿は完全に黒幕だし、そんな勇者パーティーだからバレない理論を語っている時点ですでに勇者の発言ではない。
「そんな完全犯罪だったよな? みたいなノリで聞いてないから」
「もうやってしまったものは仕方ない、それに彼らは自分たちがそれをやったことにさえ、気づいていない、僕らの心の内に留めて置けば良いのさ」
「まぁ、それもそうなんだけどさ……」
「さて、そろそろ二品目を持ってこようじゃないか、エア・バーニング! 二品目を用意しよう!」
「そうですね、そろそろ、用意しましょう」
俺が悩んでいるとアニスはエア・バーニングさんにそう言い、俺の片膝から飛び降りると、なぜか寂しそうな顔をしながらも厨房に行こうとした瞬間、アニスたちが出ていく扉が大きく開いた。
俺は身体を捻り、後ろを確認した。
「た、大変です! 勇者様!」
そこに居たのは、立派な洋装の若い男だった。勇者様と言っていることから多分、この家の目の前の王城からの使いだろう。
「お前は誰だ?」
失礼だな、アニス。おもいっきり、偉そうな人じゃないか。身なりを見ればわかるだろうに。だが、俺はこんな無礼な態度を咎めようとはやはり思わない。どうせ逆切れされるだけだ。
「私は王から遣わされた者で、王城では情報管理を任されているロウ・ジーランドと申します!」
「そうか、ジーランド、それで? どうかしたか?」
知っているくせにわざわざ聞くのか。どうせ、あの事だろう……。
「いえ、実は王都で異臭騒ぎが起きてまして……」
「なに!? それはどんな異臭だい!?」
エア・バーニングさんの疑問はもっともだ。どんな異臭かが問題だ。魚の匂いじゃなければ良いのだ。
「それがまるで魚の匂いを何十倍にもしたような匂いで」
ふーん、なるほどね、そろそろ家に帰って寝ないとな。この話はこれで終わりだろう。きっと異臭が来たけどもう無くなって事後報告なの――――。
「それが原因で、料理の仕込みをしていた王城の調理場が爆発しました」
「異臭と爆発に何の関係が……」
「わが城で調理を担当している最上級の魔法調理人のゴウ・マゼラン料理長が肉の仕込みをするため、魔法器に魔力を込めていると、急にその異臭が襲って注ぐ魔力を多く注いでしまい、爆発しました」
た、大変だなぁ……いや、他人ごとではないのだが。ちなみにマゼランシェフは防魔性能が高いお方で怪我も軽症で済み、王城の魔術士がすでに炎上した調理場を消火し、事なきを得たという。
そして、我ら、勇者パーティーはそのことを聞いて、憎しみを隠せずにいた。自分たちがしたことだけど、それを知っていて理解しているのは俺とアニスだけだ。
「許せん! あのマゼラン料理長を襲うなんて誰の仕業なんだ!」
俺たちです、エア・バーニングさん。
「ちくしょう、俺たちの目と鼻の先でそんな事をするとはな! 舐めたやつもいたもんだ!」
俺たちなんですよ、シャロちゃん。
「きっと魔王の襲撃ですよ~! まさかもう再臨してるなんて~」
いや、俺たちだから! アモンさん! そんな地味な嫌がらせをする魔王なんて嫌だ!
「大丈夫だ、ジーランド、そんな不届き者は僕らに任せろ! とりあえず後の被害はないんだな?」
「はい、悪臭は早急に風魔法で国外に流したので、安全です、そのお言葉だけで我々、王国は安心できます、ありがとうございます、勇者様」
ジーランドという若者はそう言うと、お辞儀をして出ていった。そして、それを追うように俺とアニスを除いて全員が扉から出ていこうとした。
「あのどこに?」
「その不届き者を探しに行こうではないか!」
「まだ近くに居るはずだろ? なめやがって、見つけたらこの槍でぶっ殺してやる」
「私も外で怪しい魔力の動きが無いか調べますね~」
「あ、はい」
居るわけもない悪臭の犯人を見つけに行くのか……。俺とアニス以外の三人はそう勇んで家から出ていった。
「彼らはバカなのか?」
そう言ったアニスの一言に返す元気は現在の俺にはなく、項垂れるように席に戻ると、アニスは料理を持ってくるよとウキウキしながら厨房に行ってしまった。あー、なんだろ、このパーティー。大丈夫かな? そう思わざるおえない俺だった。




