第96話 最後は永遠の握手で終わりです~!
その日、ペロパリを見つける事が出来ずに一度、帰り、明日に備える事にした。アモンさんの出る朗読会に来る可能性がある。俺は師匠から貰った刀を見つめ、鞘に納めた刀を納刀袋に入れるとベッドに立てかけ、眠りに落ちた。アニスも珍しく準備があるというので俺の家には来ず、自分の家に帰った。
「アニスと寝てばっかりだから寂しい気もするな……あー、早く寝よう」
独り言を漏らした事も恥ずかしいが、内容も恥ずかしい内容だったため、俺は無理矢理目を瞑りベッドの上で眠りに落ちた。
アニスも寂しがっているのだろうか。
――――
次の日の朝、ベッドが狭くなった気がして、寝返りを打つと良い匂いのするアニスの後頭部に俺の鼻が埋まった。
「アニス!」
俺は慌てて起きると、アニスは上半身を上げ、俺に向かって寝ぼけたような笑みを向けた。
「おはよう、アービス」
「おはようじゃなくて、昨日自分の家に帰ったよな?」
「ああ、でも寂しいから忍び込んだ」
この家の警備というか、セルディアはちゃんと戸締りをしているのか? 俺は家で家事をしているであろうセルディアに疑問を覚える。
だが、寂しいんだろうなと思っていたのは事実だ。
「寂しいんだろうなとは思っていたがまさかベッドに潜り込んでるとか心臓に悪いぞ」
「アービスはついに僕の心を読めるようになったんだね、そうだよ、寂しかったんだ」
嬉しそうにアニスはベッドの上に座ったまま俺の方へ寄ると俺の腹部に抱き着いてきた。まったくしょうがないやつだ。俺は抱き着いてきたアニスの頭を撫でながらアニスをベッドの上から降ろし、立たせた。
「お前、外出用の格好で来たのか?」
「朝に着替えるのは面倒だし、ここに持ってくるのは荷物が多くなってしまうからな」
「荷物? いてっ!?」
俺はアニスの言う荷物を探そうと一歩後ろに足を後退させると何かに足がぶつかった。見ればそれは金色の鞘に入った勇者の剣だった。
「久々に見たわこれ」
「ああ、僕の家にある物置に放り込んだままだったからな、今回は使おうと思って持ってきた」
「着なくなった服をたまには着てみるか感覚で持ってきたのか……」
「そんなもんだろ、大体、僕には必要ないんだし」
「それはそうだけどよ」
「さぁ、行くんだろ? 図書館に」
まだ朝は早いが、ペロパリが何かを細工するかもしれない。早めに行って警戒しておこうと思っていた俺の考えを汲んでくれたようだ。
「朝ダメな癖に大丈夫か? 眠くないか?」
「大丈夫さ、僕はアービスの顔を見るだけで寝起きすっきりだよ」
とアニスは言っていたが図書館へ向かう途中、寝落ちたのでおんぶをして向かうはめになった。こんな事、前にもあったな。学校へ向かう途中だったかな。
――――
敷地が広い王国一の図書館に着いた俺はまず、中に入り、準備中であろうアモンさんと会う事にした。アモンさんは事務室に居ると図書館の受付の人に聞き、俺とアニスは勇者の仲間に会いに来たという特別に事務室に入れてもらった。
「わぁ~! アニスちゃん! アービスくん! 昨日ぶり~!」
と言っているアモンさんの格好はさながら怪しい黒魔術を操りそうな雰囲気を漂わせていた。付け鼻だろうか、えらい角度にとんがった鼻、黒いボロボロのローブ。髪の色も茶色ではなく白になっていた。カツラだろうか。最初、誰か分からなかったが喋り方ですぐわかった。
「何をしているんですか?」
「これ~? これはね~! 優しい魔女さんだよ~!」
「そんな鷲みたいな鼻の魔女が良い人の可能性低いですよ」
「え~? でも、途中でマーチっていうヒロインのお嬢さんに、けっけっけけ! マーチよ、この魔法があれば、お前のそのご汚いドレスもこんなに綺麗になるんだよ! あの汚い家無し浮浪者もほら、この魔法で一流魔術企業の幹部入りだよ ってセリフありますし」
なんか混ざってない? 大丈夫か? 笑い方死ぬほど怪しいけど、やってることめっちゃ善良だな魔女。 そして、なんでちゃっかり家無し浮浪者が魔法の力で成り上がりしてるんだ。子どもが魔法の力さえあればという闇落ちルートに行っちゃうだろうが。
「素晴らしい演技ですね!」
というもろもろのツッコミどころを頭の奥にしまった俺は演技方面を褒める事でうやむやにした。演技はすごかったのは本音だ。さすが仕事中も演技練習をしていた疑惑のあるアモンさんだ。
「いや~! 照れますね~!」
「いえいえ、本当に上手かったです!」
「アービスくんは褒め上手ですね~! シャロちゃんに見せたらなんで家無し浮浪者が突然成り上がってんだよとかいう変な事しか言わないんですよ~?」
シャーロットさんは我慢できなかったようだ。だが、あのセリフだけでは何の話かまったく分からないがきっと夢と希望を魔法で叶えてくれるという話なのだろう。
「ちなみにそのお話って有名なんですか? 俺、聞いたことないセリフでしたよ」
「これ、私のオリジナルですから~!」
「あ、ふーん」
つい、意識を飛ばしすぎてなんか素っ気ない返事なってしまった。だが、まさかアモンさんのオリジナルの話とは夢にも思わなかった。
「ちなみにその話、最後はどうなるんですか?」
「マーチと王子様が永遠の握手をして終わります」
「永遠のキスではなく?」
「永遠のキスは子どもには早すぎますよ~!」
そうだろうか。そんなだからナチのような純粋で無知な可愛い子が生まれてしまうんだぞ。大歓迎だ。
「楽しみにしときますね」
「はい~!」
俺はノリだけでこの朗読会を楽しみながらペロパリから警護しようと考えていた。




