成立
翌日、熱は下がったが少し頭が痛かった。ママは今日は仕事が休みみたいで家にいた。
「たく、昨日あなたを連れてきた人って誰なの。」
突然聞かれてビクッとしたが、落ち着いて言った。
「桜井っていう人で,1週間前に近くのマンションに住み始めたらしいよ。」
「そう、職業は。」
「わからない。」
「マンションの場所わかるの。」
「うん。」
「桜井さんの家に連れてってくれない。」
「…うん。」
どうするべきか迷ったが、断る理由が思いつかなかったので、行くことにした。
そのマンションの前についたとき、買い物帰りの桜井さんを偶然見つけた。そこでママが駆け寄って声をかけた。
「桜井さん。」
桜井さんは振り返って、
「あ、はい、おはようございます。」
と言い、ママは、
「折り入って相談があるのですが、よろしいでしょうか。」
と言った。何の相談かはわからないが、桜井さんに、
「立ち話もあれですからうちで話しませんか。」
と言われ、桜井さんの家に行くことになった。
僕たちは、リビングに案内された。桜井さんが買ったものを冷蔵庫に入れたり、お茶を用意してくれたりして、ようやく落ち着いて席についた。そこでママがいきなり、
「桜井さんは何をされているのですか。」
と尋ねた。桜井さんは、少し返答に困った感じで、
「今は…特に何もしてないですね。職場から長期休暇というか…いつまで休みになるかわからないという感じのことを言われたので…。」
それを聞いてママは、
「だったら、うちの息子の…拓哉の家庭教師になってくれませんか。」
桜井さんも少し驚いていたが、それ以上に僕が驚いた。桜井さんは少し考えて、
「わかりました。引き受けましょう。」
と言った。
こうして桜井さんと僕は、家庭教師と生徒という関係になった。




