決意
逃げ出した僕は、どうしようもなかったので家に帰った。今日はもう何もする気がなかったのでお風呂に入って、すぐに寝た。
翌日、ゴールデンウィークなので学校が休みだ。しかし、特にやることは昨日と変わらない。
僕は歩道橋の上に立っていた。下は高速道路と一般道の合流地点なので車通りが多かった。なかなか決心がつかず、夕方になってしまった。僕は意を決して飛び降りた。
しかし、誰かに両足を掴まれて僕の体は逆さ吊りの状態になって歩道橋に激突した。
「うわっ。」
「君はせっかく助けてもらった命を粗末にするのかい。」
と言われ歩道橋に引き上げられた。見ると昨日僕を助けた人だった。背は190cmぐらいありそうで左目に眼帯をつけていた。
僕はまた逃げ出した。しかし、その人に捕まってしまった。無理矢理手を振りほどいてそのまま走り去った。
途中こっそり歩道橋の上を見るとその人は肩を抑えながら反対側に行った。僕は急いで家に帰った。帰りつく頃には日は沈んでいた。しかし、僕のパパは警察官で、ママは看護師なので、いつも夜遅くにならないと帰ってこない。まだ帰ってきていなくてホッとした。その日もすぐに寝た。
次の日、人目につく所は危険なので電車に乗って山に行った。登山道から外れれば誰もいないので助けられる心配もないし、死んだ後見つかる可能性も低いので良いと思った。ちょうど良さそうな崖を探していたら、足を滑らせて下に落ちて気を失ってしまった。
気がつくと玄関の前に倒れていた。どれぐらい時間が経ったのかわからないが、日が傾いているので3時間ぐらいは気を失っていたのだろう。擦り傷だけですんで良かったと言うべきか、よくわからないが、誰が僕をここに運んだのだろうか。心当たりはあるが、確かめようがなかった。その日は疲れたり、怪我していたりですぐに寝てしまった。
次の日、5月になった。だからどうということは無い。僕は運動神経が悪く全く泳げないので川なら見つからずすぐに死ねると思った。電車で広い川のところまで行って、躊躇したり、時間をかけたりすると危険なのですぐに川に入った。僕の身長は130cmだ。もちろんクラスの中でも断トツで低い。今日は午後から雨が降ると天気予報で言っていたがもう降ってきてすぐにどしゃ降りになった。僕はすぐに溺れて流されてしまった。意識が朦朧としてきたが覚えているのはバシャンという大きな音と水しぶきが顔にかかったことだけだ。
気がつくと、どこかの部屋にいて、布団で寝ていた。
「やっと気がついたか。」
という声がして、そっちを見るとまたあの人だった。僕は逃げようとしたが熱が出ているようで頭がかなり痛かった。
「逃げたいなら、逃げろ。」
「えっ。」
突然の言葉に驚きを隠せなかった。けれど僕は頑張って身体を起こし、そそくさと玄関を出た。どうやらマンションのようだ。目の前に階段があったので、上に上った。しばらくすると屋上に出た20階ぐらいはありそうだった。そうすると熱のせいで体がふらついて真っ逆さまに落ちてしまった。
「僕、死ぬんだ。」
そう思った。なんか少し、悲しくなって涙が溢れた。
僕は本当に死んだはずだった。
しかし地面スレスレで止まった。そしてどんどん上に上がっていった。足に縄がかけられていた。
「逃げていいとは言ったが、死んでいいなんて言ってねえよ。」
という声がした。僕は引き上げられた。そしてまた寝かせられた。僕は半泣き状態で意を決して尋ねた。
「なんで...僕なんかを助けるの。僕なんか背も低いし、勉強も運動もできないし、僕なんか生きる価値もない人間なのに...」
僕の声を遮るようにその人が話し始めた。
「はじめに言っておく。その僕『なんか』っていう言い方やめろ。次に価値もない人間なんていない。お前は人の持ってないものを持ってる。」
「・・・」
僕はもう言葉が出なかった。その人は
「俺は、お前みたいな奴を1人知ってる。けどお前は、そいつより強かった。」
と言った。僕には意味がよくわからなかった。最後にその人は言った。
「まだ死にたいって思ってる。」
僕は首を横に振った。




