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第一話


  「ねえ、知ってる?山の上にある時計台の奇跡」


  「時計台の奇跡?何それ?」


  「都市伝説なんだけどね。山の上にある時計台の鐘を12月24日の0時00分に鳴らすとね……」




 ◇◇◇◇◇





「おお、雪か…道理で寒い訳だ」



部屋の窓を開け外を見る。こんなに寒い日は同僚達と一緒に飲みに行ってもよかったんだけど毎年この時期はそんな気にならない。



 ピンポーン



 チャイムが鳴る。こんな時間に誰だろう?



「は~い。どちら様?」


「お、お久しぶりです」



 ドアを開けると女性が立っていた。



「えっと……どちらさま?」



 どっかで見たことあるけど思い出せない。

だけど、なんだろうどこか懐かしい感じがする。



「ほ、本当にわからないんですか?」



そう言うとニット帽を脱いで、長い髪を片手でまとめる。



「ま、まさか……めぐり…か?」


「はい。お久しぶりです涼太さん」





 ◇◇◇◇◇





「いやービックリしたよ。まさか、あの、めぐりがこんなに綺麗になってるなんてな」


「そんな全然変わりませんよ。それに、涼太さんだって昔と全然変わってないじゃないですか」


「まあ、体調管理だけはしっかりしてるからね……それで、どうしたのわざわざ俺の所まで来て」



 カップを持って彼女と向かい合って座り訪ねる。

 まあ、何をしに来たのかは解っている。

それでも、俺は自分からはこのことについての事は口にしない。そう、心に決めている。



「涼太さん。私達が会わなくなって何年経ちましたか?」


「ん?えっと……確かもうすぐ、10年だよね」


「はいそうです。そして、お姉ちゃんが死んでからも、もうすぐ10年です」


「そう……だね」



 めぐりの姉名前は『凪』。俺の幼馴染みで恋人だった人だ。

 10年前のクリスマスイブ俺との待ち合わせ場所に向かう途中彼女は交通事故に遭いこの世を去った。



「だから、涼太さんにはお姉ちゃんのお墓に来てほしいんです。お願いしますっ!!」



 めぐりはテーブルに頭をつけるギリギリの所まで頭を下げながら懇願した。

凪が死んでから俺は、彼女の葬儀はもちろん墓参りにも10年間一回も行ったことが無い。



「行きたいのはやまやまなんだけど……その日は、どうしても外せない仕事が入ってるんだ」



 嘘をついた。仕事なんて無い。もともとその日は有休を取ってある。



「お姉ちゃんの命日なのに……?」


「すまん。そろそろ行ってやらなきゃいけないと思っていたんだけど……どうしても、俺が必要って言われてな」



 口から出るデマカセ。俺は、後何回嘘を吐けば良いのだろうか…。

 そんな自分がとてつもなく情けなくて愚かに思えてくる。



「だから……本当にごめん」




 ◇◇◇◇◇




「はぁ~……情けないぁ、俺は」



 めぐりが帰った後窓を少し開けてタバコを吸いながら呟く。

帰り際に見せた彼女の悲しそうな顔が頭から離れないからなのか余計にそんな気持ちにさせられる。



「あーもうっ、寝よ寝よ」



 吸いかけのタバコの火を消して布団に潜り込んだ。


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