回復魔法は偉大です
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ギルドに挨拶に行った翌日の昼、
俺達は次の町へと向かうためイスランの町を出た。
宿を出る時女将さんが俺に弁当を手渡してくれた。
「頑張るんだよ」って少しだけ哀れんだ目を
しながら…
やはり出発が遅れた理由に気づいてたらしい。
というより、サクヤ達の声が大きすぎて聞こえていたそうだ。
そういえば他の客の顔色が悪かった気が
しないでもない。
……いや本当すみません。
ま、俺も回復魔法無しじゃ多分そうなるだろうが。
というか魔法かけたのに少しきついんだが。
これから何日間か旅なので盛り上がってしまいました。
主に女二人が。
腹が減ったので弁当を開けて見ると……
中身は精の付くものばかりでした。
なんとも女将さんの心遣いが胸にしみる弁当だった。
突然だが、俺達は歩いて旅をしている。
俺は最初次の町まで転移で跳ぶつもりだったのだが、我がお姫さま二人が時間はたっぷりあるから
転移無しで世界を巡りたい、なんて元現代人の俺に
とってはこの上無く面倒くさい事を言い出したのだ。
当然俺は断固反対した。
現代日本で育った俺には便利な転移を使わずに
わざわざ徒歩や馬車で世界を巡るなんて正気の沙汰
じゃない。
だが俺の鉄より硬く城壁よりも強固な意思は
二人の涙目上目使いの前にはあだの紙切れ同然だった。
あっさり陥落した俺はこうしてのんびり歩いている
わけである。
俺達の次の目的地は商業都市ヒンドーだ。
勿論そこを選んだのには理由がある。
それは……………単純に近いからだ 。
三人で話し合った結果、どうせ世界を巡るんだから
近い所から順番に行こうということになった。
俺がマナさんとの約束はどうするのか尋ねると、
呆れながら転移で跳べと言われた。
理解のある恋人達で良かった。
…………帰って来たら寝かせないと言われたが。
一応俺の名誉のために言っておくが、
この世界は一夫多妻だからな。
決して浮気なんかじゃないから。
俺は人より少しだけ愛に溢れてるだけだから!!
冗談はさておき、一番近いと言っても徒歩だと
三日程かかる。普通の人族の歩く早さで。
俺達は速すぎて基準にならん。
町に付くまでは俺がテントでも作って野宿だ。
あ~早く町に行きたいよ。
次の町には商業都市らしく港がある。
最近忙しかったからのんびり釣りでもしたいもんだ。
もう厄介事はいやだよ~
俺は平和に暮らしたいんだよ~
「主様?どうしたんじゃ?」
おっと、ぼんやりしていたようだ。
「何でもないよ。それより、そろそろ小鬼の森に
入るよ。一応警戒しておくんだぞ、この前なんか
ゴブリンの亜種なんかが出やがったからな」
まさかの三度目の小鬼の森!!
ホントどんだけぇ~!!って言いたい気分です…
運命の赤い糸ってやつですか?………嬉しくねぇ。
もはや呪いじゃん。
山賊に襲われたり、銀色の豚に襲われたり、
ここって襲われた記憶しか無いんだもん。
二度あることは三度あるって言うからなぁ。
駄目だと思いつつも考えてしまうのも仕方ないよ。
念のため索敵を全力で展開する。
面倒事は御免だ!
っっ!
森から後少しで出られるというところで
索敵に数十人の反応があった。
嗚呼っ、俺の面倒事だヨ、逃げようセンサーが
ビンビン反応してる!!これはヤバイ。
「な、なあ二人とも、「主様よ」………はい」
「この先の大きな反応から逃げようなどとは
よもや考えておらぬよな?」
「アカツキ様、この森にこれだけ大きな反応は
明らかに不自然ですよ」
くっ、何故二人に俺の考えがばれたんだ!?
「我じゃからの」
「私ですから」
「心を読むな!!」
くそ、俺のプライバシーはどこだ!!
「クフッ、顔に出ているんじゃよ」
サクヤが楽しそうに笑っている。
「「さて、いこうかの?(いきましょう?)」
嗚呼、何で二人ともそんなに面倒事が好きなんだ。
二人に引きずられながら反応の方に向かうと
そこは大きな洞窟になっていた。
これもう、絶対アウトなやつだよね。
強面のおじさん達がいっぱいいるパターンだよ。
「……あの~、やっぱり入るの止めませんか?」
「「駄目じゃ(です)」
即答しやがった!!
せっかく無事に森から出られそうだったのに…
何で自分から面倒事に首突っ込むんだよ!
「ハァ…、じゃあせめて慎重に…
「《火球》」 ってオォォォイ!?」
バァァァン!!
セシルがいきなり魔法ぶち込んだ。
「なんだ!?」
イヤァァ!!やっぱり強面のおじさん達のお家
だったんじゃねぇか!!
洞窟からぞろぞろ出てきちゃったじゃん!!
この前はゴブリンの集団だったのに今度は
怖いおじさんの集団だよ、この森もう嫌だ!!
「なんだてめえらは!! ここがどこだか分かって
攻撃してんのか!!ああん!?」
ちくしょー!知らねえよ、誰だよお前ら!!
「そんな事は知らんが、見たところゴミムシの
集まりじゃろう?」
サクヤァァァ!?火に油を注ぐなぁぁ!!
「サクヤ、そんな事を言っては失礼ですよ」
おお、流石セシルだ常識がある「ゴミムシに」
って訳じゃなかったぁぁ!!なお悪いわ!!
なにこの子達、超いい笑顔で毒吐きまくりだよ。
怖い!!
「て、てめえらぁ!!お前達ぶっ殺せ!!」
一番強そうな奴が叫ぶ。
「待って下せえお頭。女どもは生かして後で
楽しみましょうぜ?へへへ」
……あん?今なんて言った、こいつら。
「…確かにかなりの上玉だな。喜べ女ども。
お前らは殺さずに楽しい事してやるよ。
まあ、そこの野郎には死んでもらうがな。やれ!!」
「「「「「「「「「「へい!」」」」」」」」」
……こいつらコロス。処刑だ。
バチッバチバチッ
「っっ!?不味いです、サクヤ!!」
「分かっておる!!《絶空》!!」
「消えろ。《雷霆》」
バリバリッガッガァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!
一瞬の後、空が白く染まり爆音が轟いた。
「………何で邪魔した」
俺の最上級殲滅魔法《雷霆》を防いだのは
サクヤの最上級結界魔法《絶空》だった。
「主様、熱くなりすぎじゃ。あんなものをここで
放ったら森が吹き飛ぶじゃろ?」
「……かなり威力は抑えたんだがな」
俺達の周りは森が半径百メートルほど“消滅”
している。
「我の結界があってもこれだけ破壊したのに
まだ抑えておったのか」
サクヤが周りを見ながら苦笑していた。
「まあな。悪い、少し熱くなりすぎた。だって、
あいつらがふざけたこというからさ~。
っていうかあいつらどうなった?」
やッべ、もしかして吹き飛んだ?
だとしたら装備と討伐証明が~。
「全員心臓止まって死んでますよ。よほど
恐ろしかったんですね」
「セシルか。悪かったな、驚かせて」
「いえ、私達の為に怒ってくれたのでしょう?
そういう優しい所大好きですよ」
「ありがとな」
まったくいい女だ。
「わ、我もじゃぞ主様!!」
「わかってるって、サクヤもありがとう」
……可愛いなぁ。
「さあ、こいつらの装備とお宝とギルドカードを
いただいて森からでようぜ」
三人で装備を集めて洞窟の中に向かうと、そこは
宝の山ならぬ金貨の山があった。
とりあえずアイテムボックスにぶち込むと
全部で魔金貨12枚、白金貨83枚、金貨140枚だった。
日本円で約二億千七百万だ。
軽く宝くじ当てたみたいなもんだな。
森を出た後、少し脇道に逸れた所にテントを
創造した。
勿論二つね。
二人には散々文句を言われたがこれだけは譲れない。
流石に今日は疲れたからな、精神的に
というわけで、俺はさっさと身体を魔法で浄化
して、結界を張ってからテントで眠りについた。
翌朝テントから出ると、辺りの地面が抉れて
ぼろぼろになっていた。
………やっぱり進入しようとしたんだな。
結界張って正解だったな。
二人もテントから出てきたので挨拶したら
揃って無視されたけど…
そんなこんなで残りの道のりは二人の機嫌を直す
為に夜寝れなくなった事以外は平和だった。
ヒンドーの町に近づくと海が見えてきた。
海って初めて見たんだが大きいな~。
日本では近くに海が無かったから行ったこと
無かったんだよね~。
恥ずかしい事に泳げなかったし。
いや~体育の水泳の時間は辛かった!!
みんなが泳いでるなか、俺だけビート板なんだよ。
しかも女子がわざわざ応援してくれるんだよ!!
まあ今となってはいい思い出だが。
しかし流石商業都市だな。
門の前にすごい数の馬車が止まっている。
あ~待ち時間長そうだなぁ。
サクヤがキレそうだなぁ、と思いながら
恐る恐る隣を見ると……やっぱりイライラしてた。
「頼むから問題起こすなよ?」
「主様の態度次第じゃな」
いや、何でだよ。
この行列に俺まったく関係無いよ。
サクヤに理不尽なことを言われながらも
何とかサクヤが問題を起こす前に町に入ることが
できた。
凄くいい笑顔で
「後五分遅かったら爆発させてやったんじゃが」
と言っていたが。
……本当にやめてくれ。
とりあえず騎士団に山賊討伐の報酬をもらいに
行った後、ギルドでおすすめの宿を聞いてから
宿に向かった。
……今夜はゆっくり寝たいなぁ。
―――――アカツキがキレていた頃
「ふう、アカツキ君達がいなくなってしまうと
静か過ぎて少し寂しいものだ」
バリバリッガッガァァァァァァン!!!!!!
「なっ!?何事だ?……これは小鬼の森のほうか。
ということは先程の音はアカツキ君達か。
山賊にでも襲われたか?
それにしてもここから小鬼の森までは
かなり離れているんだが。
一体どんな魔法を撃ったんだ?」
コンコン
「入れ」
「失礼しますっ。マスター、先程小鬼の森の方角
から大規模な魔法の展開が確認されました!
小鬼の森ってアカツキさん達が向かった方角
ですよね!?大丈夫なんでしょうか!?」
「落ち着きなさい、マナ君。彼らならきっと
大丈夫だ。私は彼ほど強い者を見たことが
ない。きっと傷ひとつ負って無いさ」
「取り乱してすみませんでした。きっと大丈夫
ですよね。では私はこれで失礼します」
「ふふ、アカツキ君も罪な男だ。
さて、小鬼の森が消滅してなければいいんだが」
呑気にお茶を飲みながら、アカツキ達よりも
小鬼の森の自然が無事かどうかを心配していた
ギルドマスターがいたとかいなかったとか。
感想お待ちしています
加筆修正しました