魔物行進曲
誤字、脱字があればご指摘下さい
今俺とサクヤは他の冒険者と共にマスターの話を
聞いている。
魔物の数は総数一万三千。
ここにいる冒険者は約五百名、それに加えて
騎士団の五百名の総勢千名だ。
いくら防衛戦といっても戦力差がありすぎる。
王都に救援を要請しているらしいがおそらく
間に合わないだろう。
それにしても一体どうなってんだろうね 。
この前のメタリックな豚にはじまり今度は
魔物の襲撃なんて。
マスターに聞いたが他の国に異常はないようだし
裏でなにか糸引いてる奴でもいるのか?
だとすれば情報集めるのは大変だな。
情報集めを引き受けたのは早計だったか?
ていうかマスター話長いよ。
「この町、いやこの国の存亡は我々に
かかっている!かなり不利な状況だが
我々の背中には大切な者たちの命と生活が
控えているのだ!なんとしても守り抜くぞ!!」
「「「「「「「「「おう!!!!!!!!」」」」」」」」」
やっと話終わったか…
じゃあ、ちょっくら偵察にでもいってみるかね~
「アカツキ君、ちょっと来てくれ」
マスターに呼ばれた俺はサクヤと共にギルマス室の
椅子に座っている。
「そちらのお嬢さんは?」
「サクヤといって、俺のパートナーみたいなもんです」
「そうか。さて、君を呼び出した件だが…」
「偵察及び敵戦力を削って欲しい、ですか?」
「……わかっていたか。では受けてくれるか?」
「………これは依頼ですか?」
重要なのはそこだ。
元から行くつもりだったが、仮にこれが依頼ならば報酬が出る。
貰える物は貰うさ。
俺は善意の塊みたいな物語の勇者じゃないし。
「ああ、そのつもりだ。報酬は君のSランク昇格で
どうだろう?」
ふむ、Sランク昇格か。
出来ればサクヤのランクを上げたいところだが…
「俺のかわりにサクヤをAランクに上げてもらえませんか?勿論能力は保証しますよ」
「…………では今回の依頼次第というのは
どうだろうか?」
よし、いけるかな?
「達成条件は?」
「敵を1割討伐でどうだろう?」
かなりきつい、というかほぼ無理な条件だな。
…………俺達以外には
「ではその条件で」
「………いいのか?」
「かまいませんよ。では失礼します」
今回の依頼、俺達以外にはほぼ不可能だろう。
まあ俺達なら、むしろサクヤだけでも余裕だろうが。
多分一人で殲滅できるだろう、絶対しないけど。
だって目立ったら確実に面倒なことになる。
「さてサクヤ、行こうか」
「そうじゃな」
そうして俺とサクヤは魔物の軍勢へと駆け出した。
グオォォォォォォァァァァァ
ギュアアアアアアアア
……これはすごいな。
結構高ランクの魔物も混ざってる。
スカイバードやナイトメア、ワイバーンなどは
Aランクである。
「こりゃ他の冒険者には荷が重いな。
サクヤ、高ランクの奴から狩るぞ」
「了解じゃ」
数が多いから刀じゃ面倒だな。
ここは銃にするか。
………この世界にはないけど。
「【創造】“魔銃 双嵐”」
創造したのは二丁拳銃。
魔力の銃弾だから弾切れもないし
籠める魔力で属性と威力が変わるという、
とても便利な武器だ。
「さあショータイムだ」
ズガガガガガガガガガガァァァァァァン!!!!
ッダダダダダダダダダァァァァァァン!!!!!!
俺の両手から色鮮やかな銃弾が魔物達の命を
容赦なく撃ち抜いてゆく。
俺を中心に半径十メートルほどの環状に死体が転がっている。
数にして大体五百体くらいか。
そろそろ攻撃するのに邪魔になってきたので、
全部アイテムボックスにぶち込む。
内容量に制限がないからすごく助かる。
時魔法で劣化も防止できるしね。
ブワァァァァァァァァァァ!!
おっと危ない、髪が燃えるところだったぜ。
ワイバーンめ、禿げたらどうしてくれる!!
叩き落としてやる。
「《超重力の枷》」
ズォォォォォォ
「ガアアアアアア!!」
ダァァン!!
重力魔法によって地面に叩きつけられた
ワイバーンの頭を一撃で撃ち抜く。
この魔法は対象の重力を自由に出来るため
色々と応用がきく。
ちらりとサクヤの方を見ると
俺が創って渡した大きな鈎爪付きの手甲“月光”
で、千切っては投げ、切り裂いては投げて、
魔物達を蹂躙していた。
うん、かなりグロい。
サクヤも頑張っていることだし
俺ももう一頑張りするかね。
まだAランクの魔物も残ってるし。
俺は今ナイトメアと戦っている。
このナイトメアってやり難いんだよね。
なんと物理攻撃がすり抜けて効かないんだよ。
なのに相手の攻撃はダメージくらうし。
しかも一番厄介なのはこいつがかなり高位の精神魔法を使う事。
精神力が強い奴は耐えられるが騎士どもは
まず無理だろう、貴族のボンボンだし。
絶対錯乱して同士討ちするだろうな。
あばばばばば、とか言いながら。
クククッ
見てみたい気もするが冒険者に被害が出たら困るので片付けておかなくては。
さて俺の方はかなり狩ったのでギルドカードで
討伐数を確認するとすでに1311体だった。
ギルドカードでは何故か狩った魔物の数を確認
することができる。便利なもんだ。
一体どうなってんだろう、不思議~。
(サクヤ今何体狩った?)
(今1351体目を狩ったところじゃ)
俺より多く狩ってるだと!?
(そ、そっか、じゃあそろそろ戻ろう)
(うむ、了解じゃ)
俺達は素材をアイテムボックスに入れて
魔物達からはなれると、ギルドのそばへと
転移した。
ギルドについた訳だが冒険者達の姿はなかった。
恐らく戦うために既に門の方に向かったのだろう。
俺達も達成報告して戦場に戻らないといけない。
高ランクのやつらは全て殺したがそれでもまだ
数が多い。
見たところ冒険者達の最高レベルは60だった。
なかなか高いが魔物達にもそのくらいのレベルは
いたからな。
さすがに無理があるだろう、というか間違いなく
全滅する。
俺達は急いでギルマス室に向かった。
「マスター、報告に来ましたよ」
「なに!? もう終わっただと!?」
「ええ、では確認をお願いしますよ」
クックッ、驚いてる驚いてる。
かなり異常な速さで戻って来たからな。
だが一番驚くところはそこじゃないよ。
「なっ!?一人で1割ずつだと!?しかも全て
A、B、Cランクの高位の魔物ばかりではないか!? 」
そう、真に異常なのはそこだ。
冒険者はG、Fランクをソロで狩れて初心者。
E、Dランクをソロで狩れて一人前。
C、Bランクをソロで狩れて熟練者と呼ばれる。
Aランクをソロで狩れる者などほんの一握りだ。
それを俺達は二千体以上狩ってる。
しかも無傷で。
こんなものは最早化物でしかないだろう。
「このことは他言無用でお願いしますよ。
面倒事は御免ですからね」
「わかっている。そもそもこんな報告をした所で
信じる者などいないだろう」
「ははっ、確かにそうですね。まあ、敵対する
つもりも今のところ無いですし、ご安心を」
「……敵対する可能性もあると?」
「俺の平和な生活を脅かせば」
少し殺気で威圧しとこう。
「っっ!!!!!?
…………わかった。胆に命じておく」
ほほぉ、今の殺気は下位の龍種くらいは
あったんだが、さすがマスターだ
ちなみに龍種と竜種は別だ。
竜種の下位<中位<上位<<越え難い壁
<<龍種の下位<中位<上位となる
ワイバーンは上位竜だ
龍種になると下位でも単独で国を潰せる。
まあ、龍種はとても賢く言葉も理解するから
そんなことは滅多に起こらないけどね。
そろそろ魔物達が見えてくるだろうから
応援に行くかな。
あ、セシルさん発見。
冒険者達と陣形を確認してる。
正直騎士団と一緒に戦いたくない。
この国の騎士団は貴族が多い。
皆がセシルさんのような考え方ならいいんだが、
残念ながら少数派だ。
いい国もいずれは腐るものなのかねぇ
この国も先代の王の時までは素晴らしい国だった
らしいのだが、今代の王がとんでもない馬鹿で、
昔からの重臣を廃し、周りにろくでなし貴族
ばかりを置いているらしい。
しかもかなりの女好きで、気に入ったら
恋人がいる女性でも無理矢理犯したりするらしい。
そのせいで国民の不満も溜まり、かつての平和な
王国の面影は無くなっている。
しかもセシルさんにも手を出そうとしたらしいが
色々と手を尽くして逃げたらしい。
…………糞王めセシルさんに手を出すとは許せん。
おっと陣形確認が終わったようだ。
「どうも、セシルさん。騎士団の方はどうです?
かなり浮き足立っているようですけど」
「む、ヤギュウ殿ですか。
……そうですね、この騎士達は貴族の子息ばかり
ですから。足手まといなのでいない方がいいと
思うのですけど、王都からの命令で仕方なく。
冒険者の方々には申し訳ないです。」
この人本当に貴族っぽくないなぁ。
そこがいいところなんだろうけど。
「はは、じゃあこの戦いが終わったら騎士止めて
俺達と一緒に冒険でもしますか?」
「ふふっ、それもいいかもしれませんね。
その時はよろしくお願いしますね」
おおっ?意外に好感触だな。
じゃあ、頑張って勝ちますか。
俺は門の前で魔物の軍勢を他の冒険者と一緒に
待ち構えているんだが……
隣でサクヤが絶賛ふてくされ中だ。
どうやらセシルさんを勧誘したのが
お気に召さなかったらしい。
「サクヤ~、機嫌直せよ~」
「………ふんっ」
「……仕方ない、これが終わったら一つだけ
言うことを聞いてやろう。これでどうだ?」
「約束じゃからな?」
「ああ、でも無理なことはいうなよ」
「わかっておる」
サクヤの機嫌も直ったことだし、あとは
町を守るだけだな
「来ました!魔物です!!」
若い騎士が顔を真っ青にしながら叫んだ。
その声を皮切りに(俺達以外にとって)過酷な
防衛戦が始まった。
俺とサクヤはピンチになって死にそうな冒険者の
救援だ。
派手に動くと目立つからな。
ちなみに騎士団の奴らは助けてやらん。
人を見下す馬鹿ばかりだから。
勿論セシルさんは助けるつもりだが見た感じ
全く必要ない。
というか滅茶苦茶強い。
恐らく最強クラスだ。
俺とあまり変わらないくらいに見えるのに。
本当の天才って奴か?
ん?なんか騎士団の奴らが半数くらい後退
し始めたぞ。
セシルさんを見ると困惑している。
あ!逃げ始めやがった!!
「セシルさん、あいつら捕まえていいですか?」
「お願いします。本当にすいません」
全く糞騎士どもが、セシルさん悲しませやがって
許さん!!
「《風縛》」
逃げた騎士の周りの空気を操作して捕縛する。
「な、なんだ!?」
「くそっ、動けない!!」
ククク、焦ってる焦ってる。
更に地獄を見て貰おうか。
「《転移》」
奴らを魔物達のど真ん中に転移させると同時に
拘束していた魔法を解除する。せめてもの情けだ。
頑張れば生き残れるかもしれない。
ま、冒険者を盾に逃げ出したんだ。
当然の報いだね。
それから数時間、魔物の軍勢と戦い続けた。
そして遂に終わりの時を迎える。
セシルさんが叫んでいる。
「広域魔法を撃つ!皆離れてくれ!!」
ダアアアアアアアアアアン!!
戦場に一際大きな音が鳴り響き
残り数十体にまで減っていた魔物達を一掃した。
「「「「「「「「うおおおお!!!!」」」」」」」」
冒険者も騎士も関係なく勝利の喜びを涙を流し
分かちあっている。
これで少しでも貴族の意識が変わると嬉しいのだが。
防衛戦の翌日、冒険者ギルドでは祝勝会が
行われていた。
俺は隅の方でサクヤと飲んでいた。
「主様、約束は覚えておろうの?」
ちっ、覚えてたか。
「ああ。で、何にするんだ?」
「うむ、明日我と“でぇと”をするんじゃ」
デートって……
えらくかわいいお願いだな。
「喜んでお受けしましょう、お姫様♪」
「っ~!からかうでない!!」
本当かわいいな、こいつ。
それから一週間ほどは依頼も受けず
サクヤとデートしたりイチャイチャして過ごした。
余談だがデートの日の夜
俺は遂に大人の階段を登った。
サクヤも初めてだったらしく、ちょっとだけ
痛かったようだ。
でもさすがはフェンリル、すぐに動けるように
なっていた。
しかし次の日の朝までぶっ続けとは、
俺もサクヤもどんな体力してんだろうね。
サクヤがダウンしたのでそこでやめたが、
俺はまだまだ余裕だった、というか
やろうと思えば回復魔法でいくらでもできる。
フハハハハ、すごいだろ。
そんな平和な日々を過ごしていたが、
呆気なく終わりを迎えた。
セシルさんが王都によばれたんだよね。
……俺達も一緒に。
あの防衛戦から一週間後に王都からの応援が
ノコノコ来やがった。
ここから王都までは4日ほどの距離しかない。
これは明らかにおかしい。
途中で魔物の群れに襲われたと言っているらしいのだが、多分嘘だろう。
だって汚れ一つないんだもんね。
そして応援にきた騎士団の隊長がセシルさんに
命令書を渡しながら舐め回すようにセシルさんと
サクヤを見ていたので魔法で幻覚を見せて
服を全部燃やしてあげた。
当然魔法をかけているから気付かずに立ち去った。
裸の王様ならぬ、裸の隊長様の完成だ。
フハハハハ!
しかし何故サクヤのことを知っているのかと
思っていたら、どうやら一部の騎士から糞王に
伝わったらしい。
セシルさんがサクヤに何度も謝っていた。
サクヤはあまり気にしていないようだったけど。
理由を聞いたら
「主様が守ってくれるんじゃろ?」
と、はにかみながら言われた。
もう、でれでれだな。
可愛いすぎる。
…………さて、糞王はどうしてくれようか?
感想お待ちしています
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