プロローグ
少々グロテスクな描写があります。苦手な方はお気を付けください。
私はあかねと学校の屋上にいた。
自分が通っている高校の屋上に。
この学校をいろんな意味からおとしいれるために。
「あかねまでここを選ぶ事なかったのに。」
「私もこの学校嫌いだし、佐知と一緒がいいもん。佐知は私いたら嫌?」
「嫌じゃないけど、てか一緒がいいし。でもここ確実性ないよ。」
「いいの」
あかねは微笑んだ。優しい微笑み。
「今日は寒いねぇ」
「まぁ冬の夜だしね。あかねマフラーしてないし。どうしてマフラーしてないの?」
「いやぁ、昨日お父さんに破られてしまいまして」
笑いながら言った。笑うとこじゃないよそれ。
「そろそろ?」
「いや、せっかく、屋上来たんだし、景色とか、見とこうよ、ね?」
私はあわててしどろもどろに言った。
「真っ暗なのに?」
「う、うん…」
「ねぇ佐知。無理することないよ?」
「無理してないよ。これはわたしがやるべきことなの。」
そう言ってから私は屋上をぐるぐる歩き回り始めた。
学校の旗とか日本国旗とか上がる棒に寄りかかってみたり、まぁるいロータリーにある冬色のつつじを見たり、向こう側の校舎を見たり、した。
その間真っ暗な空を見上げてた。
「あーあ、やっぱり」
「ん?どしたの?」
「ほら見て」
そういって小さくて可愛い手のひらを見せてきた。
何粒かの水滴が付いてた。
「雨?」
「んーん、雪」
悲しい苦笑を浮かべてあかねは言った。あかねは雪が大嫌いなのだ。
「大丈夫?」
「今の私たちに大丈夫も何もないと思うけど」
「まぁ確かに」
「あぁー、今日は降らないでほしかったな」
「しょうがないよ。最近毎日降ってるし」
それがあかねをこの場所にこさせた、のかもしれない。
しろくてふわふわの白い結晶はどんどん降る量が増えてきた。これは積もるなぁ。とかのんきに考えてみた。馬鹿らしくなったから、どんどん降ったらいいって考えてみた。
「神様は残酷だなぁ」
「うん。時間と不幸しか生命に平等に与えてくれないし」
「不幸も?」
「わたしは幼稚園からいじめ、あかねは父親の虐待、きっとお母さんもあばあちゃんもいっぱいの不幸のなか生きてる。」
「たしかに、そうだね…」
あかねがちょっと悲しい怒ったような顔を一瞬見せた。急いで私は言う。
「でもね、それに耐えられる心は平等に与えられないの。」
「うん…」
私たちは黙った。黙って大粒のずっしりしたふわふわの白い結晶の降る空を見上げた。
しばらくの重いけどつらくない沈黙が流れた。
「この雪でこれ置いたらふやけるかな。」
「あーまぁいんじゃん?」
「いいのかな」
「いいんだよ」
私たちがこれを置く理由なんてみんな分かってるよ。
「そろそろ、行きますか」
「うん。」
わたしたちは白いそれを置いて歩き出した。