特訓終了
「……はぁ……はぁ……」
全身から汗が噴き出し、脚は震えている。
だが、倒れ込むことはしなかった。
一か月前なら、間違いなく地面に転がっていた距離だ。
(……少しは、強くなれたか……?)
拳を握る。
まだまだ戦えるレベルとは言えない。
それでも——。
「行くしかないんだよな」
小さく呟いた。
背後から足音が聞こえる。
「終わったか」
振り返ると、大山大地が立っていた。
腕を組み、落ち着いた表情でこちらを見ている。
「……大山さん」
「見てた」
短い返事。
だがその目は、しっかりとエデンを観察していた。
「逃げなかったな」
「……え?」
「途中でやめるやつは多い。痛いし、きついし、怖くなるからな」
少しだけ間を置き、大山は続けた。
「でもお前は残った」
エデンは何も言えなかった。
ただ、胸の奥が熱くなる。
「明日の朝、試験会場まで送る。準備しろ」
「……はい!」
力強く返事をする。
家に帰るまでの道中。
頭の中の声。
「この一か月間ずっと見ていた。よく頑張ったな。」
優しい声色でそう言う
「そっちこそ、見守ってくれてありがとう」
「........確かお前って名前がないんだよな」
声に確認する
「あったかもしれないが、覚えていない」
(記憶喪失なのか.....)
声に対して提案をする
「あだ名で読んでもいいか?」
「構わない」
「じゃあ、お前は今からケイだ」
名前の理由を考えているのか、沈黙が続いた。
「契約の.....ケイか......」
「そ。」
また沈黙。
名前が気に食わなかったのか、また静かになった
「気に入らなかった?」
気まずそうに言う。
「いや....悪くない」
声には少し嬉しさが混じっていた。
「じゃあ、これからよろしく、ケイ」
家に戻ると、父と母が玄関に立っていた。
「明日、試験に行くの?」
母の声は優しいが、どこか不安が混じっている。
「うん」
エデンは靴紐を解きながら答えた。
父は少し黙ったあと、ゆっくり口を開く。
「……無理はするな」
それだけだった。
だが、その言葉には重みがあった。
エデンは立ち上がり、二人を見る。
「俺、絶対受かるから」
「……ああ」
父は短く頷いた。
胸の奥で、心臓が大きく鳴る。
恐怖もある。
不安もある。
でもそれ以上に——。
(戦いたい)
その想いだけは、はっきりしていた。
試験日の朝、起きたエデンは準備を始める。
外には送迎に来てくれた大山隊員が待っている
靴紐を結び、扉を開ける。
「....いくぞ未来の新人隊員」
特訓は終わった、試験が始まる。




