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エデン  作者: ko-da
1章 入隊試験編

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8/19

特訓

朝の空気はまだ冷たく、吐いた息が白くにじんだ。


エデンは家の前の舗装路に立ち、軽く肩を回す。

まだ太陽も昇りきっていない時間。町は静まり返っていた。


「……よし」


小さく呟くと、走り出す。


最初の数分は順調だった。

だが五分を過ぎたあたりから、肺が焼けるように熱くなる。足も重い。


(こんなんで……)


歯を食いしばる。


(受かるわけないだろ)


速度は落ちても、止まらない。

汗が額から顎へと流れ落ちる。


——ECOの試験内容。


体力測定、持久走、筋力試験、反応訓練、模擬戦闘。


どれも今の自分には遠い壁に思えた。


それでも。


(やるって決めたんだ)


家に戻る頃には足が震えていた。

玄関の前で膝に手をつき、荒く息を吐く。


「はぁ……はぁ……」


だが休む時間はない。


腕立て伏せ。

腹筋。

スクワット。


回数を数える声が途中で途切れる。


「……二十七……二十八……っ」


腕が崩れ、地面に倒れ込む。


「くそ……」


悔しさが込み上げる。


そのとき背後から声がした。


「フォームが崩れてる」


振り向くと、父が立っていた。


いつの間にか起きていたらしい。腕を組み、真剣な顔で見ている。


「肘を外に開きすぎだ。肩を痛めるぞ」


父は地面に手をつき、見本を見せる。


無駄のない動きだった。


「体は真っ直ぐ。腹に力を入れろ」


エデンは頷き、もう一度構える。


震える腕。


「……一」


父が数え始める。


「二。三。止めるな」


きつい。

でも、不思議とさっきより動ける。


「十。いいぞ」


父の声は厳しいが、どこか誇らしげだった。


最後の一回を終えた瞬間、エデンはそのまま倒れ込む。


「……無理……死ぬ……」


父が小さく笑う。


「まだ始まったばかりだ」


空を見上げる。


朝日が昇り始めていた。


胸は苦しく、体は痛い。

でも心の奥には——確かな感覚があった。


(少しだけ……近づいてる)


入隊試験まで、あと一か月。


エデンの特訓の日々が、ここから本格的に始まった。




特訓二日目。


昨日の疲労はまったく抜けていなかった。


足は重く、肺は焼けるように熱い。

それでもエデンは走り続ける。


(止まるな……止まったら終わりだ)


住宅街を抜け、坂道へ入る。

父に教えられたトレーニングコース。


勾配がきつく、体力をごまかせない場所だった。


「……はぁ……っ、はぁ……っ」


呼吸が乱れる。


その時——


前方から走ってくる人影が見えた。


最初は気にも留めなかった。

だが距離が縮まるにつれ、違和感に気づく。


速い。


金髪。

無駄のないフォーム。

姿勢もブレない。


そしてすれ違う瞬間——


胸元に小さな紋章が見えた。


ECOのエンブレム。


(……え)


一瞬だけ視線が合う。


年齢は——


(俺と同じくらい……?)


ほんの一瞬。


それだけで十分だった。


相手はそのまま速度を落とすこともなく通り過ぎていく。


風だけが残った。


エデンは振り返らなかった。


ただ心の中で思う。


(同じくらいの年齢で……もう隊員なんだ)


胸の奥が少し熱くなる。


悔しさか、焦りか、憧れか。


自分でも分からない。


でも一つだけははっきりしていた。


(俺も……あそこに行く)


足に力を込める。


疲労は消えない。

苦しさも変わらない。


それでも——


さっきより前に進める気がした。


朝日が坂の上から差し込む。


エデンはその光に向かって走り続けた。

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