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エデン  作者: ko-da
序幕

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7/15

入隊試験を

夕食の湯気が、静かな食卓の上にゆらゆらと立ちのぼっていた。


エデンは箸を持ったまま、しばらく言葉を探していた。喉の奥に引っかかっているものを、どうやって外に出せばいいのか分からない。


父は新聞を畳み、母は味噌汁の椀を置く。


「……どうしたの?」


母の優しい声に、胸が少しだけ痛んだ。


逃げるなら今だ、と頭のどこかが囁く。

でも、それ以上に――進みたい、という気持ちが強かった。


エデンはゆっくり息を吸う。


「……俺、入隊試験を受けたい」


空気が止まった。


父の眉がわずかに動き、母の目が大きく開く。


「入隊って……あの、ECOの?」


エデンは頷いた。


「うん。正式な候補生の試験。来月あるんだ」


しばらく沈黙が続いた。時計の秒針の音が妙に大きく聞こえる。


父が口を開いた。


「……理由を聞かせてくれるか」


責める口調ではなかった。

ただ、本気かどうかを確かめる声だった。


エデンは視線を落とし、拳を握る。


「このままじゃ嫌なんだ」


言葉が、思ったよりもまっすぐ出てきた。


「守られてるだけなのが。何もできないのが。」


母の表情が揺れる。

あの日の記憶は、家族全員の中に残っている。


「俺、強くなりたい。ちゃんと戦える力がほしい」


父は腕を組み、じっとエデンを見つめた。


「……命の危険がある仕事だぞ」


「分かってる」


即答だった。


「それでも?」


母が静かに言う。


「怖くないの?」


エデンは少し考えてから、首を横に振った。


「怖いよ。でも……」


顔を上げる。


「怖いまま何もしない方が、もっと嫌だ」


再び沈黙。


やがて父が、ふっと息を吐いた。


「……いつから考えてた」


「ずっと。ちゃんと決めたのは最近だけど」


母は目を伏せ、少しだけ震える声で言った。


「無茶はしないって約束できる?」


「うん」


「帰ってくるって約束できる?」


その問いに、エデンは一瞬言葉を失った。


絶対なんて言えない。

でも――。


「……帰ってくる。必ず」


母はゆっくり頷いた。


父はしばらく黙っていたが、やがて低く言う。


「分かった」


エデンの心臓が跳ねる。


「ただし、条件がある」


「条件?」


「本気でやるなら、中途半端は許さん。途中で投げ出すくらいなら最初から行くな」


エデンは強く頷いた。


「うん」


父は小さく笑う。


「……顔つきが変わったな」


母も、少しだけ微笑んだ。


「応援するわ」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥に溜まっていたものが一気にほどけた。


エデンは深く頭を下げる。


「ありがとう」


その夜、彼は初めて――


自分の未来に向かって一歩踏み出したのだった。

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