ECO アモリス支部
「行ってきます!」
朝の空気は少し冷たく、まだ慣れない緊張が胸の奥に残っていた。
今日はECOアモリス支部に初登校する日。
「いってらっしゃい」「頑張れよ!」
父と母はエデンを見送った。
自宅から数十分歩き、そこに着く。
エミット・エデンは建物を見上げる。
ECOアモリス支部。
学校でも、軍でもない、不思議な場所。
今までも何度か見たことはあった。
しかし、一度も入ったことは無かった。
ここから、自分の新しい日常が始まるのだ。
(……本当に来ちゃったんだな)
少しだけ手のひらに汗を感じる。
その時――
『緊張しているな』
頭の中に低く荘厳な声が響いた。
ケイ。
黒色ラベジニウムに宿る存在。
「そりゃするよ……初日なんだから」
小さく呟く。
『心拍が上昇している。人間は面白い』
「面白がるなよ……」
少しだけ苦笑した。
でも、不思議と落ち着く。
自分は一人じゃない。
そう思えた。
自動ドアが開く。
中は学校に似ているが、どこか違う。
訓練用の装備。
隊員らしき人達。
医療スタッフ。
研究員。
様々な人が行き交っている。
受付で名前を伝えると、案内された先は教室のような部屋だった。
扉を開ける。
中には二人の人物がいた。
一人は――
背が高く、どこか優しそうな雰囲気の男性。
おそらく大人。
もう一人は――
椅子にだらっと座り、足を組んでいる少年。
金髪混じりの髪。
額にはハチマキ。
不機嫌そうな顔。
こちらを見るなり眉をひそめた。
「……誰だお前」
第一声がそれだった。
エデンは一瞬驚くが、すぐに姿勢を正す。
「えっと……今日から配属になりました、エミット・エデンです」
すると優しそうな男性が慌てて立ち上がった。
「あっ、え、えっと!聞いてます聞いてます!新入隊員の方ですよね!」
ぺこぺこ頭を下げる。
「ぼ、僕は天記憶流っていいます!よろしくお願いします!」
ものすごく丁寧だった。
むしろ丁寧すぎるくらい。
エデンも慌てて頭を下げる。
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
すると横から不機嫌そうな声。
「敬語とかいらねぇよ」
少年が椅子の背にもたれながら言う。
「ジエル・レートだ」
ぶっきらぼう。
だが視線はまっすぐだった。
「お前、新人なんだろ」
「うん」
「じゃあ.......俺より弱いな!」
断言。
憶流が慌てる。
「ジ、ジエルくん!?そんな言い方は……!」
「だって事実だろ?」
悪びれない。
エデンは一瞬ぽかんとして――
そして少し笑った。
「そうかも。でも追いつくよ。」
その返答にジエルが一瞬だけ驚いた顔をした。
「……は?」
「強くならないと、守れないから」
エデンは真っ直ぐ言った。
その目に迷いはなかった。
数秒の沈黙。
ジエルはふっと鼻で笑う。
「……面白れぇ」
椅子から立ち上がる。
「気に入った」
憶流がほっとした顔になる。
「よ、よかったぁ……」
その時。
ケイの声が頭に響いた。
『興味深い個体だな』
(ジエルのこと?)
『ああ。衝動的だが、核が強い』
エデンは小さく息を吐く。
新しい場所。
新しい仲間。
少し怖い。
でも――
(頑張ろう)
心の中でそう思った。
ここから。
自分の戦いが始まる。




