第三試験①
試験官が説明する。
「第三試験は――」
スクリーンに映像が映る。
崩壊した市街地。
煙。
倒壊建物。
避難できていない民間人。
そして。
異形の影。
「実際のエイリ星人災害を想定した総合任務を行ってもらう」
会場が静まり返る。
「諸君は四人一組のチームを組み」
「指定区域に侵入」
「生存者を救助し」
「脱出地点まで搬送する」
指が立つ。
「重要なのは撃破ではない」
「任務達成だ」
少し間。
「なお」
試験官の声が低くなる。
「途中で脅威が出現する」
ざわめき。
受験者の一人が聞く。
「本物ですか?」
試験官は答える。
「限りなく実物に近い」
つまり。
戦闘の可能性がある。
その直後。
試験官が告げる。
「これより受験者は四人一組のチームを編成しろ」
ざわざわと人が動き始める。
エデンは少し周囲を見渡した。
(チーム……)
正直、誰と組めばいいか分からない。
その時。
「……エデンさん」
落ち着いた声が後ろから聞こえた。
振り向くと、そこにいたのは第一試験で一緒だった青年。ドロイだった。
「もしよろしければ、俺と組みませんか?」
丁寧な敬語。
エデンは少し驚く。
「あ、うん。もちろん」
「よろしく」
握手を交わす。
ドロイの手は少し冷たかった。
だがエデンは特に気にしなかった。
その時。
「ねえ! あと二人足りないなら一緒にどう?」
元気な声が割り込んできた。
振り向くと、短髪の少女が手を振っていた。
その後ろには背の高い無口そうな少年。
「私たちもまだ決まってなくてさ!」
少女は笑う。
「人数ちょうどいいし、どう?」
エデンはドロイを見る。
ドロイは静かに頷いた。
「問題ありません。」
エデンも笑う。
「うん、よろしく!」
少女が手を差し出す。
「私はリナ!」
無口な少年が軽く会釈。
「……カイト」
こうして四人のチームが完成した。
その時。
試験官の声が響く。
「チーム編成完了まで残り五分」
空気が少し張り詰める。
エデンは三人を見た。
ドロイ以外は初対面。
実力も分からない。
でも。
(この人たちとやるんだ)
胸の奥で、静かに決意が生まれる。
ドロイが淡々と言った。
「第三試験は連携が重要になります」
「事前に役割を決めておきましょう」
その言葉に、エデンは頷いた。
「うん、そうだね」
四人は会場の端に移動し、簡単な円を作った。
最初に口を開いたのはドロイだった。
「第三試験は恐らく、実戦を想定した状況下での行動評価です」
落ち着いた声。
理路整然としている。
「つまり、個人能力よりも連携が重要になります」
リナが腕を組む。
「じゃあ役割決めよっか」
エデンは頷いた。
「そうだね」
ドロイが続ける。
「まず前衛ですが——」
一瞬、エデンを見る。
「第一試験の動きを拝見した限り、エデンさんが最適かと」
エデンは少し驚く。
「俺?」
「はい」
ドロイは淡々と言う。
「身体能力、反応速度、そして判断力。平均以上です」
「最前線で状況を切り開ける方だと判断しました」
エデンは少し照れた。
「……分かった。やってみる」
リナがニヤッと笑う。
「じゃあ私は生存者の搬送担当かな!」
「走るの得意だし!」
カイトが静かに言う。
「……護衛は俺がやる」
「俺は後方で指揮をとります」
ドロイは言う。
低い声。
「エデンさん」
「緊張していますか?」
エデンは正直に答える。
「ちょっとね」
ドロイは小さく頷く。
「正常です」
「緊張は判断力を鈍らせますが、同時に集中力も高めます」
「制御できれば武器になります」
淡々とした言葉。
だが不思議と落ち着いた。
リナが笑う。
「大丈夫大丈夫!なんとかなるって!」
カイトも短く言う。
「……死ぬわけじゃない」
エデンは笑った。
「ああ」
その時。
試験官の声が響く。
「第三試験参加者はゲート前へ移動しろ」
巨大な扉がゆっくりと開き始める。
ゴゴゴゴ……
奥には。
崩壊した都市を模したフィールドが広がっていた。
瓦礫。
煙。
壊れた道路。
まるで本物の戦場。
エデンは一歩前に出る。
心臓が高鳴る。
だが。
恐怖よりも強い感情があった。
(助ける)
(守る)
それが。
エデンの本質だった。
ドロイが静かに言う。
「行きましょう」
四人は並んで歩き出した。
そして。
試験が始まる。
だが頼もしさがある。
ドロイが頷く。
「では私は後方支援と状況分析を担当します」
全員が自然に納得していた。
エデンは少し感心する。
(ドロイさん……すごく冷静だな)
ドロイは続ける。
「重要なのは無理をしないことです」
「試験とはいえ、怪我をすれば失格になります」
「危険を感じたら必ず声をかけてください」
エデンは強く頷いた。
「分かった」
その時。
会場にアナウンスが響く。
「第三試験開始まで残り十分」
空気が一気に張り詰めた。
周囲の受験者たちも緊張し始める。
誰もが真剣な顔になっていた。
エデンは拳を握る。
(ここまで来たんだ)
(絶対に合格する)




