第99話 服部への依頼
《臼杵side》
服部と会う日。
いつもより早く起きた臼杵は、スマホを取り出し電話をかける。
しばらくすると服部との電話がつながり、眠たそうな声が聞こえてきた。
『はぁ~。どうしたんだい?やけに早いじゃないか?』
「朝早くから悪いな。今日合う場所がまだ決まっていなかったと思って。で、どこで待ち合わせがいい?」
そんな風にフランクに話しかけると、服部は少し不服そうに返事をする。
『全く。メールで連絡すればいいだろ。場所はいつものカフェで、時間は11時で同だ?』
「OK。てか、メールだと返信が来ないからこうやって電話を入れているんだろ。もしメールで送ってほしいんならちゃんと返信するようにしろよな!」
『うっ、痛いところを突くね。めんどくさいから今後も電話で頼む。』
そんなやり取りを交わし、待ち合わせ場所を決めた臼杵は、そのあといつも通りの剛志のルーティン(各ダンジョンへのカーペンターの配送)を手伝ったのち、剛志とは別行動をする。
あらかじめ万葉も含めて休むことは共有済みなので、特に怪しまれることなくその場を離れることに成功した臼杵は、目的のカフェまで移動を開始する。
今回向かうカフェは、服部がよく使っている場所で、その実オーナーが服部自身だ。
実際の運営はほとんどかかわっていない服部だが、その奥に一室だけ今回の様な密談を行うための部屋が用意してあり、こういった建物が複数個あると聞いている。
そのうち、臼杵と会うのは大体このカフェなので、今回も同じだろうとは想像は着いたのだが、一応の確認の電話が先ほどの電話だったのだ。
そうして約束の時間に臼杵が顔を出すと、奥に通されすでに服部はそこにいた。
「おお!久しぶり!さっきはこっちも寝起きで悪かったな。」
そう挨拶をする服部の見た目は、特に特徴のない一般的な男性に見える。この特徴のないという特徴が彼の職業の役に立つのだろう。
そんな服部に挨拶を交わして、向かいの席に座った臼杵に対し服部が本題を確認する。
「で、今回はただ会いたかったわけじゃなく、依頼だよな。どんな依頼なんだい?」
「そうだな。今回の依頼をざっくり言うとある人物の背後関係や状況調査が依頼だ。その人物というと今は俺の同僚でもある宮本万葉。日本トップランクの探索者だ。」
そういい、テーブルに置かれていた水を口に含む臼杵。そんな臼杵をじっくりと見て、特に怪しいところはないと判断したのかはわからないが、一回うなずいた服部。
「なるほどな。今回臼杵から話を受けた際に、あんたの周りは調べさせてもらったが、かなり危ない状況だな。A.B.Y.S.Sが活発に活動を開始して、全国一斉スタンピードを起こしたのはつい一ヶ月前の話だが、その復興作業の要となっているゴーレム使いの岩井剛志の護衛だろ。先日も襲われたらしいじゃないか。その同僚の護衛仲間を調べてほしいってか。どういうことか詳しく教えてくれよ。」
そういって、臼杵の方を鋭い目つきでじっと確認するように見つめる服部。その眼光に若干怖気づく気持ちが芽生えるが、そこは臼杵も一流の探索者だ。覚悟を決め真っ向からそのまなざしを見つめ返しながら返事をする。
「おいおい、ずいぶんと詳しいじゃないか。どこでそんな情報を集めたんだい?」
そう臼杵が効くと、服部はキョトンとしたような顔になった。
「え?あんた知らないのかい?最近は毎日ニュースで最新情報が全国ネットで流れているぜ。確かに大きな話題にはなっていないかもしれないが、ゴーレム軍団が毎日複数個のダンジョンに対し壁を建築しているというのと、そこに一流の探索者が護衛についているってのは既知情報だ。まあ、名前とかは俺の情報網で調べたが、これだけ派手に動いているし、特に隠してもないんだろう?ちょっと調べたらすぐにわかったぜ」
とすらすらと話してくれた。
考えてみると、ダンジョンに壁がないという状況は、一般の人にとってはかなりの関心ごとであるし、ニュースで取り扱ってもおかしくないだろう。
そんな中、元々あまりニュースを見ない臼杵と、最近ではダンジョン探索のことしか頭にない剛志は、このことを知らないままのほほんと生活していたようだ。
まあ、ダンジョンの中からほとんど出ない生活を行っているので、こういうこともあるのかもしれない。
少しニュースを調べれば出てくる内容なので、さすがに個人を特定するような情報は公開はされていないが、今は何でもすぐ出回ってしまう世の中だ。まだ噂程度ではあるが、その辺の情報もある程度知られてしまっていた。
命が狙われている現状、これっていいのか?と疑問に思った臼杵だったが、そもそもA.B.Y.S.Sには知られているのだし今更かと思い、一先ず置いておくことにした。
「わるい、あんまりニュースを見ないもんで知らなかったわ。あとで剛志にも伝えとく。まあ、知っているなら話は早い。その宮本万葉を調べてほしいんだ」
「まあ、依頼料を頂ければ調べはするが、なんでまた?」
そう不思議がる服部に臼杵は前回の出来事を説明する。
「いや、こないだ不思議な出来事があったんだ。彼女の妹が病気なんだけど、その妹の回復を目的になりふり構っていないって言っていた彼女が、妹の病気に対して解決法を思いついていないっていう少し奇妙な場面があったんだ。おそらく精神攻撃系のスキルを受けてるんじゃないかと思うんだが...」
そういって、前回の出来事を事細かに説明しだす臼杵。そのあと今現在考えている可能性として、共犯者がいるかもしれないということ、医者が怪しいということなども話した臼杵は、しゃべりすぎてカラカラになったのどを潤す。
そうしてしばらく話を頭の中で整理した服部が、口を開いた。
「なるほどな。なんとなくだが状況はつかめた。まずは俺の方法で調べてみるぜ。でもあくまでも事実を追い求める関係上、彼女自身も疑う対象だ。お前さんの話を聞くと、あくまでも宮本万葉は被害者だという前提だったからな。」
「ああ、そうだな。それは頼む。たぶん俺らだけだとそこは思考に入ってこないと思うからな。」
そうして、服部に依頼をし終えた臼杵は、その場を立ち去るのだった。
果たして、宮本万葉は何かの精神攻撃を受けているのか、それとも彼女自身が意図して行った行動なのか。その真意がわかるかどうか、まだ何もわからない状況だが少しずつ解決に向け進みだしたようだ。
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