第96話 お見舞い
地下60階層で魔石回収のための準備を進める剛志。その進捗は順調と言ってよいだろう。
あれから少しずつ戦力を増強していっており、今では500体のヘキサボードが存在している。魔石回収はほとんどがヘキサボードに取られてしまってはいるが、ゴーレムの数が増えていくにつれて、一日の回収量もどんどん増えているのでそのうち必要量がそろうだろう。
それにあれからの変化点として、一つ大きなものがある。それがマジックガードゴーレムの改良だ。どんな改良かというとスキルを一つ増やしたのだ。
そのスキルは挑発のスキルで、いわゆるヘイト管理用のスキルだ。このスキルによってマジックガードゴーレムはその場から動かないでヘイトを集め攻撃を食らってくれる。
そうすると一か所に魔物が集まるため集団魔法での除去効率が大幅に上がったのだ。
挑発のスキルと引き換えに多少ステータスが落ちたが、それでも現状問題ないため、よい調整だといっていいだろう。
【ゴーレム名】:マジックガードゴーレム
【説明】:大きな巨体でとにかく攻撃を耐えるのが得意なゴーレム。移動速度が遅く、攻撃力もさほどないが、耐えしのぐことにおいては超一流。
【ステータス】
名前:
種類:マジックガードゴーレム
スキル:鉄壁・マジックキャンセル・挑発
レベル: 0
HP:1000/1000
MP:100/100
攻撃力:100
防御力:4000
器用:100
速さ:100
魔法攻撃力:0
魔法防御力:4500
【必要器用値:6000】
【消費MP:5000】
【消費材料:ブラックアイアン×45】
それから現在も順調に探索を進めている剛志だが、今日はダンジョン探索にはいっていない。
理由は万葉のお見舞いに付き合っているからだ。
とは言っても現在も地下60階層ではゴーレムたちが魔石を回収してくれており、ある程度自走できる体制が整ってきたからというのもあるが。
何はともあれここのところ常にダンジョンに潜っていた剛志は、久しぶりにダンジョン以外の空気を吸うことにしたのだ。
前回万葉がいないときに襲われた反省を生かし、今回は剛志と臼杵もついていくことで襲撃に備えるという目的で一緒にお見舞いに行くことにしたのだが、ここで一つ問題があった。
ダンジョン外のスキルが使えないところで襲われたときにどうするのかという部分だ。
ダンジョンの外に出た場合、ステータスなどが100分の1に下がる。そしてそれはスキルの効果も同じだ。そうなったときに剛志の虎の子の身代わりゴーレムが作動するのかというのが分からなかったのだ。
それに護衛戦力としても若干心細くなってしまう。
一流探索者の万葉などは、ダンジョンの外に出ても一般の人間の約10~20倍の身体能力を誇るのだが、それでも変な話マシンガンで攻撃されたりといった現代兵器には手も足も出ない。
これらの理由で今ダンジョンの外に出るのは危険なのではというのが、剛志を含め皆の意見だった。
しかし、お見舞いは行ってあげたいと思う剛志が町田所長に相談すると、いくつかの調整を行ってくれた。
まず一つが、ダンジョン外でのボディーガードの存在だ。これは一流のSPをつけてくれるようで、移動から何からすべて守ってくれるとことだった。これで多少なりとも危険度が下がったと思われる。
そして、もう一つが剛志のスキルの発動原理へのアドバイスだ。
先ほどダンジョンの外に出るとステータスなどは100分の1になるということを説明したが、スキルも完全に使えなくなるわけではないのだ。
例えば、ダンジョンの中でゴーレム異空庫を使用してゴーレムを出したまま、そのゴーレムをダンジョンの外に連れ出した場合、ゴーレムのステータスは100分の1に小さくなるが、ゴーレム自体は動けることができるのだ。
このように、ダンジョン外でのスキル使用は今のところ観測されていないが、ダンジョンの中で使ったスキルをそのままダンジョンの外で使用することは可能だというのだ。
そこで一つの仮説のもとダンジョン内で身代わりのゴーレムを出した状態で、ダンジョン外で攻撃を受けたところ、身代わりの発動を確認することができたのだ。
ダンジョン外でゴーレム異空庫内のゴーレムを身代わりにすることはできなかったが、出したまま持ち歩けば問題ないということが分かった剛志は、さっそく手の平サイズのゴーレムを作成し、それに対し身代わりを覚えさせポケットにいれて持ち運ぶということを行うことにした。
これによって十分な安全が確保できたと判断した剛志は、周りをSPと護衛の臼杵、万葉に囲まれた状態で、万葉の妹のお見舞いについに行くことができたのだった。
お見舞いに行く道中、黒塗り車3台で向かう剛志一行。その仰々しい見た目に、周囲の人たちから不審に感じた視線を浴びていた。
「いや~実際に見てみるとSPってすごいね。なんだかもの知れない圧力を感じるよね。この人たちはいつも要人を警護しているプロフェッショナルって話を町田所長から聞いているし、安心感があるね。」
そう話す剛志。それにこたえるように万葉が話し出す。
「ええ、そうね。ただこの感じで病院に行って、百花驚かないかしら。それにほかの患者さんの迷惑にもなりそう…」
そう言って心配そうにソワソワしている。それに対し確かにと思った剛志が申し訳なさそうに言う。
「ごめん宮本さん。やっぱり俺も一緒にってなるとこうなっちゃうよね。かえって迷惑だったよね」
「いや、そういうわけじゃないわよ。それに剛志が来てくれなかったら、今の状況だと護衛を離れられないし。こうしてお見舞いに来れているだけで助かってるわよ。」
そういって、剛志の方を見てはにかむ万葉。感謝しているのは本当なのだろうが、どこか作り笑いが隠せていない万葉の笑みを見て、剛志は申し訳ないことをしたなと思うのだった。
そんな二人のやり取りとみていた臼杵が、気まずい空気を察知し間に入ってくれた。
「まあお互いにそんな深く考えるなって。剛志のことは何かあったら守るし、そのうえで万葉ちゃんの妹には俺もお見舞いしたい。これって悪いことじゃないだろう?それに本来一番悪いのはA.B.Y.S.S.の連中だ。あいつらさえこんなバカなことしなければ、今も平和な世の中だったんだしさ」
臼杵の発言はその通りとしか言いようがない。
今までいろいろと剛志や万葉に落ち度があることにはあったが、それでも彼らが気にすることはない。彼らは彼らなりに一生懸命頑張っているのだ。
理不尽な暴力に巻き込まれた側が、そのことで負い目を感じる必要はない。自分のせいで周りに迷惑をかけてしまっている。そう感じるのは人としては正しい感情なのだろうが、本質は理解しておかなければならない。
わるいのは悪いことを実際にやっている連中なのだから。
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