第87話 サテライトゴーレム
剛志が襲撃を受け、それを切り抜けた次の日。剛志の姿は再度横浜第三ダンジョンの地下50階層に来ていた。
今回は万葉もおり、護衛体制は万全だ。それに昨日の今日でまた襲ってくることはないだろう。そう考えた剛志は、今日から本格的にダンジョン探索を再開し、今のうちに自身のレベルをどんどん上げて戦力を強化しようと思っているのだ。
「よし、今まではちょっと慎重に動いていたけど、今日からは本気の探索をしよう!宮本さんと臼杵に護衛は任せるからね。俺は俺のやり方で本気のダンジョン探索をするよ」
そう高らかに宣言する剛志。今日も別のダンジョンに対しゴーレムを派遣し壁作成の仕事は行っている。それのせいで一日のうち少なくない時間を消費する剛志は、少しでも早く奥の階層に行き、魔物のレベルを上げて効率化を図りたいと思っているのだ。
そんな剛志に対し、臼杵は昨日の今日でなんでこんなに元気なんだよと若干引き気味ではあったが、剛志についてしっかりと周りを確認している。
そして万葉が昨日自分が不在のせいで剛志を危険な目に合わせたと自責の念があるようで、いつもより気が張っている様子で辺りを警戒している。
総じて護衛二人は昨日のこともありいつもより気を張っているようだが、なぜが命を狙われた剛志本人からは心配な気配を感じない。まあ、レベル上げを頑張ろうと思っているということは危機感はあるのだろうが。
そうして、剛志たちの地下50階層の探索が始まった。
「って、結局お前さんは動かないのかい!」
本気の探索をするよと言い、自身のゴーレム異空庫からゴーレムたちを取り出した剛志が意気込んでいたので、どんどん奥に進んでいくのかと思っていた臼杵は、探索開始直後に剛志本人は足を止めたことで突っ込みを入れた。
その突っこみを受けた剛志は、キョトンとした顔で臼杵の方を見てこう答えた。
「え。なんか変?俺はいつもの自分のやり方をしているだけなんだけど…」
気の抜けた剛志の返答に、臼杵はあきれたように、
「いや、別に変じゃねえが。気を引き締めた俺が肩透かしを食らっただけだ。まあ、お前さんの戦闘スタイルはこうだったな。本来本体は安全な場所で隠れるのがお前さんのスタイルだよな。」
そんな一人乗り突っこみ見たいなことをした事で少し恥ずかしくなった臼杵は、そのまま少し顔を赤らめて黙ってしまった。
そんな二人のやり取りをあきれた感じで見ている万葉、三人は結局いつも通りに戻っていたのだった。
剛志は探索をゴーレムたちに任せ、その姿は配信で確認するいつものスタイルを取りながら、自身は今自分に必要な戦力は何だろうと考えていた。
昨日の戦闘で自分自身の防御力が弱いことは理解したのだが、こればっかりは一朝一夕にはいかない。何かアイデアがあればゴーレムカスタマイズで何とかなるかもしれないが、本来自分で戦うのは最終手段だ。むしろ自分で戦っている時点で後手に回っているということなので、そうならないような対策を練る方がよい気がする。
今は実現できなくても、こうやったらいいんじゃないかというのを上げてみよう。
そう考えた剛志は、今欲しいものを箇条書きにして、まとめてみることにした。
・自分の周りをつねに警戒して、緊急時は守ってくれるゴーレム
・相手に自分の位置がばれたときに、ばれずに移動する方法。
・攻撃をもらってもびくともしない盾。
・速度が低いゴーレムが多い、素早い敵に対応できるゴーレムも欲しい。
そんな感じでいくつか案を出していた剛志。その中で今時点でできそうなものが無いかを考えてみると、自分の周りを警戒するゴーレムを作ってみるのはできるかもしれないと思った。
いつもウッド系列のゴーレムに警戒をしてもらっているが、警戒特化のゴーレムで一瞬だけ防御壁的なのを出せれば緊急回避なんかにはなるのではという案だ。
そう考えた剛志はさっそくゴーレムカスタマイズを起動し、新しいゴーレムの設計図作りを始めた。
なかなか思うような能力を持ったゴーレムを作ることができず、試行錯誤を繰り返し今の器用値で作成可能な中で及第点のゴーレムを考えた。それがこれだ。
【ゴーレム名】:サテライトゴーレム
【説明】:アルミのボディを持ち内臓のカメラで周囲を警戒するゴーレム。主人の危機を感知すると、警戒音を出す。
【ステータス】
名前:
種類:サテライトゴーレム
スキル:気配察知・暗視・視力強化・透過・無音行動・意識共有
レベル: 0
HP:10/10
MP:1000/1000
攻撃力:1
防御力:1
器用:100
速さ:100
魔法攻撃力:0
魔法防御力:0
【必要器用値:1000】
【消費MP:1500】
【消費材料:ボーキサイト×10、ドローン】
色々試してみたのだが、防御能力を持たすと、性能が足りなくなってしまうため、警戒専門としてスキル特化のゴーレムの設計図を作成した。
実際に、攻撃を受ける際は身代わりゴーレムによってダメージを肩代わりすることができるので、危機察知に全ぶりしたゴーレムだ。
このゴーレムは剛志の周りを透明になった状態で衛星のように動き回り、何か危険を察知すると、その内容を剛志の脳内に直接知らせるというものだ。また意識共有のスキルを使っての通知なので、逆にそのゴーレムが見ているものを共有することも出来るので、剛志の第三の目としても活用可能だ。
すでにあるマジックアイゴーレムとのすみわけは、マジックアイゴーレムは消えることも気配察知で自動検出することも出来ないが、その代わり移動スピードが速く、また耐久力もある。戦場に送るのであればマジックアイゴーレムの方が使い勝手が良い。警戒用と、戦闘用で使い分けができている。
ただ、素材は今剛志の手元にないものなので、今日の帰りにでも購入して帰ろうと思う剛志だった。
また、この時いろいろと構想を練っているうちに、ある一つのゴーレムのアイデアが浮かんだ。
それはイメージで言うと人工知能型ゴーレムだ。要するに剛志以外の頭脳となるゴーレムがいると、戦場への指示も負担が減るし、そのうち戦場に剛志が行く必要がなくなるかもしれない。そんなゴーレムが作れないかと思ったのだ。
なんとなくイメージでは、成長コアを組み合わせたら、作成不可能ではないのではないかと思っている。今もなお剛志のゴーレムたちはダンジョンを探索しており、その光景を配信で確認している剛志は、多重思考スキルによって可能になった複数思考のうちの一つを使い、このゴーレムの設計図を考える。
イメージするのは、戦闘経験などの積み重ねで情報を蓄積していき、その知識の積み重ねで成長していくゴーレムだ。
しかし、作ろうと思っているのはスキルの力を使った人工知能だ。そんなものができるのか、正直剛志にはわからない。そもそも人工知能と聞いて、なんとなくすごいんだろうなとか、賢いんだろうなしか思いつかない一般人だ。イメージしてみてもうまいこと作れなかった。
でも先ほどのほしいものリストの箇条書きに人工知能型ゴーレムというのが、増えたのは言うまでもない。
専門家の意見を聞いたら何とかならないかな。そんなことを考えながらも、今できないなら後回しだとばかりに気持ちを切り替えた剛志。
取り敢えずは時間とMPがもったいないため、今すでに運用しているゴーレムたちの数を増やすべく、ゴーレム作成を開始するのだった。
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