第79話 炎vs雪 その2 (臼杵サイド)
臼杵の作ったかまくらから爆炎とともにはい出てきた男。その体は今もとてつもない熱量を放出し続けており、辺りの気温も上昇している。
「全くすさまじい練度だね優男。バーサーカーがないと勝ち目なんて全くなかったじゃないか」
そういい感心する男、しかし臼杵はそれに対し挑発的に返答する。
「へぇ、その口ぶりだと今は勝ち目があるように聞こえるな。そんな借り物の力でいい気になられても困るな。結局勝つのは俺なんだから」
「言うじゃねえか。その減らず口がいつまで持つか見ものだぜ」
そういい再度臼杵めがけて突っ込んでくる男。バカの一つ覚えのような突進だが、結局これが一番面倒だ。
それに対し臼杵も同じような複数展開の壁と、迎撃用のつららの射出。この二つで対応していく。
男の火力やスピードがとんでもなく強化されいる現在、少しでも攻撃が臼杵本人に直撃すればひとたまりもない。そのうえ単純スピードは臼杵よりも圧倒的に相手方の方が早い。
そんな状況で戦えているのは臼杵の魔法作成速度が並外れて早いからと言わざる負えない。それも的確で無駄のない魔法運用。これだけで彼が見た目だけの見せかけの男ではないことが分かる。
そんな高レベルな戦いが続いている中、先に焦れたのは相手の方だった。
「ああ、しゃらくせぇ。てめえ時間稼ぎしてやがるな。ふざけやがって。そんな余裕なくしてやるぜ!」
そう叫び、力をためるようなポーズをする男。
大きな声を上げながら体の内側で力をため、これから放出しようとしているのだろうと予想がついた臼杵は、この間も変わらず男に向かって雪を放出し続ける。
からだじゅうが熱くなっているため、雪は男につくとすぐさま蒸発しているのだが、それでもかまわず雪を当て続けている臼杵。雪で男を冷まして少しでも熱量を下げようとしているのだろうか。
しかし、そんなのは焼け石に水。ほとんど意味をなさず、男のための時間が終了した。
「これを食らったらさすがのお前もひとたまりもねぇぜ。ここら一帯丸ごと蒸発させてやるよ。食らえ!【プロミネンスバーン】」
そう叫ぶと、男を中心に先ほどまでとは比にならない膨大な熱量が周囲に展開された。
その熱量はすさまじく、近くにあった瓦礫が一瞬にして蒸発しなくなってしまうほどだ。
そんな熱の柱が、徐々に広がって辺りを蒸発させながら臼杵に迫ってくる。しかし、当の臼杵は全く焦る様子がない。そして一言こうつぶやいた。
「一分だ」
次の瞬間、臼杵の前方1mほどのところまで迫ってきていた炎の柱が、急速に萎んでいき、完全に消えてしまう。
その中心で力尽きたように、足元から崩れていくテロリストの男。その男に近づきながら先ほどの余波で汗だくになっている臼杵が、胸元を仰ぎながら状況のつかめていない男に説明をする。
「いや、さすがに暑いね。かっこつけて動かなかったけど、動き出したくなるくらいの暑さだったよ。あ、なんでこうなったんだろうって顔だね。答えは単純、時間切れさ」
そう話す臼杵、時間切れと言われても意味が分からなかった男が、それでも理解できていないようなので続けて説明をする臼杵。
「ああ、それでも意味不明って感じか。君のパワーアップってバーサーカーのスキルのお陰でしょ。あれって時間制限のあるスキルじゃん。今の君はその時間制限切れってこと」
「なんだと!確かにあの力は時間制限ありきの物だが、まだ制限の10分はさすがに経ってないだろう!?」
そういう男、それに対して臼杵は楽しそうに話し出す。
「ああ、そうそう。これがしたかったんだよ。種明かしをすると、君の制限時間は10分ではなくなっていたってわけ。僕のスキル雪魔法でね。雪魔法とはそもそもどういったスキルかというとね、雪で戦うのはそうなんだけど、基本構造デバフ特化のスキルなんだよね。そのスキルの効果で今回はバフ制限時間速度加速のデバフをかけてたってわけ。君が次から次に俺の雪を蒸発させるから、こっちもつけ続けるのに苦労したよ。ま、そのおかげもあってそもそも10分あった時間が、10分の一の1分になっていたってわけ。」
自慢げに説明し終えた臼杵は、バーサーカーのデメリットによって一定時間ステータスが下がっている男を雪による拘束で動けなくしたところで、剛志の方を確認する。
「あ、よかった。何とかなりそうだね。今回は前回来たっていう、暗殺者的なやつはまだ出てきていないようだし、そっちも警戒しないとな。」
そうつぶやきながら、剛志の方に向かって援護しに向かう臼杵。
剛志はすでにすべての敵を制圧しており、今まさに最後の一人を拘束しているところだった。
剛志も臼杵の戦闘が終わったことを確認し、安心したのか臼杵に手を振っている。
その剛志に手を振り返そうと腕を上げたその時、剛志の後ろに人影が現れた
一度剛志の命を狙い失敗したあの男だ。その男が剛志の背後に立ち、そのまま前回同様短剣を剛志目掛けて振り下ろしたのだ。
それに対し、剛志も反応しようとするのだが、間に合わない。
剛志の防御を突破し、そのままの勢いで剛志の体を短剣で袈裟懸けに切り裂いた男は、そのまま剛志の体を臼杵めがけて蹴飛ばした。
「あーあ、また俺が出ないといけないのかよ。俺は裏方だってのに。炎胴の野郎、このまま始末しちまうか。そこの優男さん、今回の目的は達成したので、また今度!」
そう友達とあいさつを交わすよな気軽さで臼杵に手を振る謎の男。しかし臼杵はそれどころではない。自身のもとに吹っ飛んできた剛志をキャッチし、剛志の安否を確認している。
「おい!剛志!大丈夫か⁉」
「いや、彼は助からないね。手ごたえはしっかりあったし、僕の短刀には致死性の毒も塗っているから、そのままお陀仏だよ。まあ、今のうちに処理できてラッキーだったな」
そう自慢げに話す謎の男。しかしそんな男の予想を裏切るように、臼杵に抱えられた剛志は元気に返事をする。
「いてて、あいつ蹴りもすごいのかよ。臼杵、ありがとう。俺は大丈夫だよ。」
「おいおい、本当か?毒もあるって言ってたぞ」
「そうみたいだね、でもその攻撃は例のスキルで耐えたから、毒もそれで何とかなったみたい。」
そういって元気そうな剛志。それを見て不可解そうな謎の男。
「はぁ?どういうことだ。確かに手ごたえはあったぞ。畜生、これじゃまた失敗か?さすがに二度目は俺も処分されかねない。全く…もうひと仕事かよ」
そう愚痴り、状況が分からないまま剛志の命を再度取ろうとする謎の男、第二ステージが始まったのだ。
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